私たちが若かった時、ハードロック全盛で、曲にあわせて頭を激しく振る「ヘッドバンギング」が登場したのもその当時でした。今ではビジュアル系のファンの女性が行うもののようですが、、、ハードロック自体は当時と比較して下火になってきていますが、都市伝説的にヘッドバンギングで脳の血管が切れるなんてものがありました。自分で加減しながら頭を前後左右に激しく揺すぶったくらいで、脳の血管が切れるわけないじゃん的に捉えていました。
都市伝説としてのヘッドバンギング害毒説
最近、幼児虐待の一つとして「揺さぶられっ子症候群」という言葉を新聞等で見かけしたので、果たして成人でもこのような頭を激しく揺すぶる行為(ヘッドバンギング)で、脳に損傷が起こり得るのか、少し調べ見た所症例レポートとして「ヘッドバンギングが原因で硬膜下血腫」を起こした、という論文を見つけました。
オッサンはヘビメタはおとなしく聞きましょう❗
50歳のオッサンが「モーターヘッド」のコンサートで激しくヘッドバンギングしたために、なんと「硬膜下血腫」を起こしちゃった、という症例レポートの論文があります。「Chronic subdural haematoma secondary to headbanging」(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)60923-5/fulltext)。
このおんとし50歳のオッサンは原因不明の頭痛を主訴として、神経外科を受診したところ、頭部外傷の既往や薬物乱用もなかったのですが、その後も頭痛が続くために詳細に話を聞いたところ「4週間前にモーターヘッドのコンサートに行って、ノリにノッて激しくヘッドバンギング」をしていたことが判明しました。オッサンご自身もヘッドバンギングが今回の頭痛の原因だとは思わなかったでしょうね。
精査によってなんと頭部CTで明らかな硬膜下血腫が発見されたのです。
この写真から右の大脳に硬膜下血腫(ある程度の時間が経過している)がわかりますし、中心線のずれ(正中偏位と呼びます)もあります。
このヘビメタロックコンサートではしゃいでヘッドバンギングを行い、硬膜下血腫を起こしたオッサンは頭部に穴を開けて、血の塊を取り除く治療をして、無事に退院しました。その後の後遺症もなく、メデタシメデタシでした。
首をボキボキ、ポキポキやるのもかなりリスキー
首をボキボキポキポキならす癖があると脳卒中のリスクが高まる、って話を以前に書きました。
また、赤ちゃんに独自のマッサージと称して死亡事故までおきています。
◎首ひねる独自マッサージ⁉首ポキ・首ボキ??マッサージ受けた乳児など2人が死亡❗
このように首へのダメージが原因で障害を起こすことは、どなたも理解できますよね。しかし、単に頭を激しく揺さぶっただけの場合は、「揺さぶられっこ症候群」と同じように脳自体の損傷を引き起こしてしまいます。
今回のハードロックファンのオッサンはこの揺さぶられっこ症候群とおなじメカニズムで硬膜下血腫を起こしたのです。英語では「Shaken Baby Syndrome」と呼ばれ幼児虐待の大きなサインになっています。脳が損傷するイメージとして、ボウルの中に豆腐が浮かんでいるとお考えください。そのボウルを左右に揺らすと、浮かんでいる豆腐がボウルの壁に当たります。これを激しく続けると豆腐の角が崩れてきます。このような状態が人間の脳内で起きているのです。
硬膜下血腫は右の頭を打った場合、損傷を受ける場所は逆の左の脳という場合もあります(豆腐が入っているボウルの右側に強いダメージを与えると、豆腐は慣性に従って左側のボウルの壁にぶち当たります)。脳がダメージを受けると、血腫ができなくても浮腫といわれる脳が腫れた状態になり、頭痛や吐き気が初期症状として現れます。
硬膜下血腫は重篤な生死にかかわる場合もありますから、年甲斐もなく激しくヘッドバンギングをやっちまったオッサンは24時間の安静を推奨します。その間に頭痛・吐き気が生じたらすぐに医療機関を受診してください。もっともはしゃぎすぎで翌日はぐったりしていることが多いでしょうから、安静の指示は必要ないかな?笑