常識として「日本人の腸は欧米人より長く、それは穀物・野菜食中心の生活を送ってきたから、あるいはそれに適応してきたから」という話常識と思っている人って多いようです。その理論から「日本人は米や野菜を食べるべきで、肉食中心の生活は危ない」という話が出てきます。しかし、
日本人の腸が欧米人と比較して長いという医学的な裏付けはありません
本記事の内容
肉食は危ない!日本人の腸は草食系に合わせて長くなっている??
少なくとも私が調べた限り、医学論文として日本人の腸が欧米人より長い、というものはありません。反対に日本人と欧米人の腸の長さを比較して大差が無いと、という医学論文はありますけど。「A peroperative comparison of Western and Oriental colonic anatomy and mesenteric attachments」(International Journal of Colorectal Disease October 1995, Volume 10, Issue 4, pp 216-221)。
この論文に従うと、「日本人は肉食に適してい無い、だから肉食は悪」という話は成り立たなくなります。肉食が悪い、危ないという主張・論調の健康雑誌や健康本も危機感を煽って意外性を狙ったものが多い状況にあります。中には肉食が人間の凶暴性を誘発して、
肉食がなくなれば戦争もなくなるという、ジャングル大帝レオが目指したユートピア(生態系がかなり崩れるはずですが)を目指そう❗
的な本もあります。例として「肉食はあぶない?」(監修 真弓定夫 発行 美健ガイド社)なんて本が楽しすぎる❗食育等に力をいれて薬を使用しないで病気を治す、という真弓先生の考え方に100パーセント反対では無く、たまには良いこと言っているので、シリーズ全巻購入して愛読させていただいています(たまに良いこと、といっても多分5パーセント以内)。でも、明らかな間違い多しだし、突っ込みどころ満載なんでご紹介します。
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なんで「肉食は死亡リスクを高める」という結果になるのか、論文は全部読んでから情報を流そうね❗
「腐」という文字は内臓の中で肉が腐敗することからできた漢字???
漢字の成り立ちは様々な説があるのですが、ある程度は体系化されています。この「腐」という文字は真弓先生監修の本によれば「府は内臓、その中に入っている肉で成り立ってる⋯内臓に肉が入ると腐るから」と解説されています。
でも、普通のの「府」は「倉」を意味していて「倉庫に肉を入れっぱなしにすると腐るよ」という形声文字です。肉食は腸内を腐らせる、肉食は内臓を腐らせる、という恐ろしい主張の信憑性がかなり薄れてきちゃいますよね、これじゃ。次に「西欧人は肉食だから腸が短い、長年穀物を食べてきた日本人は腸が長い」と最もらしい説が書かれています。しかし、前述のように日本人の腸が欧米人より長い、というデータって一次ソースというか、医学的解剖学的に証明されているんでしょうか?
肉食だとがんでの死亡率が高まる??
肉食だとがんになりやすい、という話を多くの人が耳にしたことがあると思います。この肉食とある種のがんの関連性については肯定する論文と否定する論文の両者があり、最近は「肉食もそれほど悪さはしないんじゃない」という論文が目立ってきています。それを裏付けるように今まで肉食はコレステロール値を高める原因として、考えらていましたが、本年発表された厚生労働省が出す「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、コレステロールの摂取量の上限を撤廃しています。
食品に含まれるコレステロール量と血中コレステロール値の関連性は現時点で摂取量の上限を決める科学的根拠が無い
ということなんです。とんかつ大好きな肉食系オヤジは随喜の涙を流すであろう、この情報しっていましたか?オッサン友達の諸君❗前述の本はトンデモ系の香りが漂うのですが、その理由として2012年に出版されているのに、脂身と死亡率の関係を表すのに1977年までのデータをグラフにしています。
もちろんトンデモ系、ニセ医療系特有の古いデータ使用であり、さらにそのグラフもインチキ医学が使用するグラフの縦軸が0から始まっていません。以前は感染症や脳卒中が死因の多くを占めていましたが、抗菌剤の開発、塩分を控えた食生活などにより、これらの病気で死ぬ人の率は減ってきて当たり前なんです。日本人全体が長寿になって、高齢者だとリスクが高まる「がんでの死亡」が増えて当然なんですからね。
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肉はあぶない派VS炭水化物ダイエット
肉はあぶない、悪者派の考えは「日本人古来の生活を」とも取れますので、急激に右傾化しているとされる今の日本ではもっとウケてもいいような気もします。逆に「白米は避けよう」「肉食はどんなに摂っても大丈夫」という炭水化物ダイエット派は国粋主義的な人から攻撃されて良さそうなものですが、そのような話は寡聞にして知りません。
肉食否定派の本来ならば啓蒙本になるはずの予定が、あまりにもヒステリックな内容のため、主義を主張することに大いに失敗していると考えます。だって、こんな表紙なんですから。
「肉食はあぶない?」(監修 真弓貞夫 発行 美健ガイド社)の表紙です。マクドナルド低迷の原因かもよ、だとしたら彼らの目的は成功したわけで。
漫画なんですが、表紙が怖すぎるし価格も630円ですから、子供が自発的に欲しがって買うはずないですよね。