ED治療薬の女性への効果・効能は「媚薬」のように思えるけど⋯フリバンセリン開発秘話。

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ED治療薬は男性のためのものではなく女性でも血行が改善して素晴らしい効果がある⋯といった「媚薬」のように思われている節がありますが、医学的根拠はありません。

今回は、ついにFDAが認可したと一部が大騒ぎしている女性用ED治療薬についてのお話です。

待ってました!女性用ED治療薬がついにFDAが認可、っていっても一体誰が使うの?

一般名は「フリバンセリン」、商品名は「ADDYI(アディ)」

ED改善薬は媚薬でもありませんし、性欲を高めることを目的として使用される薬では無い、という大前提をご確認ください。

誰もが知っている超有名ED治療薬の発売当時、女性が服用したって話も多く耳にしましたが、なにを目的にしてどんな治療効果・改善効果を期待したのか不思議でした。男性だけが性機能を回復することができてズルい、という意見もあり女性用ED治療薬の開発の話を初めて聞いたのは、7〜8年くらい前に欧州泌尿器科学会で話題になったころでした。


これが今回FDAに認可された「女性用ED治療薬」です(http://www.npr.org/サイトより)。

女性の場合、性欲を感じなくなったら「性的欲求低下障害」(Hypoactive Sexual Desire Disorder 略してHSDD)と診断されますが、この症状?自体を本人が苦にしている場合と全く気にしていない場合もあるため、米国で閉経後の女性を対象にしたアンケートを実施したところ

性的欲求が低下していることを苦にしている女性は少ない

という製薬会社のモチベーションを下げる結果になりました。しかし、HSDDを気にする女性のための薬の開発の研究は続けられ「flibanserin」が一番いけそうな薬と当時は考えられていました。

今回「女性用バイアグラ」という呼称の薬はまさにこの「フリバンセリン(flibanserin)」そのものです。バイアグラは血圧の薬をして開発されましたが、副作用として勃起不全を解消することがわかり(降圧効果はイマイチだった)、人類史上初のED改善薬として華々しい登場をしました。

一方でフリバンセリンはもともと「坑うつ剤」として開発されたものですから、なんとはなしに「媚薬」の香りが漂いますし、悪用する不埒な輩のことも心配になります。

しかし、女性用バイアグラ、っていうセンセーショナルな呼び方やめませんか?フリバンセリンは性欲を高める薬であり、バイアグラ(もちろの男性専用)は勃起不全を解消する薬なんで、性欲自体を高めることを目的とするものではないのですから。

フリバンセリン⋯女性用ED治療薬の効果と副作用

そもそも抗うつ剤として開発されたフリバンセリンは中枢神経に作用するセロトニン1Aアゴニストというものですが、うつに対する効果はイマイチでしたが、副作用の一つとして「性欲亢進」が認められたために、男性用ED治療薬同様に副作用をメインの効果・効能として開発研究が進めらた結果、目出度くFDAに承認されたのが、本年2015年6月の話です。

今回認可されたフリバンセリンの適応は閉経前の性的欲求低下障害となっています。フリバンセリンの開発当初の話を知っている私としては、閉経後の女性はあまり性的欲求の低下を苦にしていないこと知った製薬会社が対象を閉経前に絞ったような気がしないわけでもありません。

あえてフリバンセリンの対象者を閉経前の女性としたのは巨大製薬メーカーの陰謀じゃん、って考え方もできますので、陰謀論信者に塩を送るに等しい情報になってきてしまいます。

続けます、フリバンセリンの開発裏話

抗うつ剤市場は巨大であり、大製薬メーカーがしのぎを削ってきました。女性用「フリバンセリン」も当初は「ベーリンガーインゲルハイム」(もちろん大製薬メーカー)が開発して、HSDDへの適用を2009年に行ったのですが、リスクとベネフィットの点で承認が見送られました、それも2度も❗ベーリンガーインゲハイムはフリバンセリンを販売することを諦めてSprout Pharmaceuticalsという会社に権利を売り渡しました。今回のFDAの審査過程では「男性向けだけ認可してズルいじゃん」的な意見が出てジェンダーバイアスが掛かっているのではという批判を受けないために、わざわざ「FADの審査基準は適正でジェンダーバイアスなんてありません」という表明まで行ってから承認の審査に入っています。FDAの審査は

フリバンセリン承認に賛成は18票、反対は6票

という結果になり、世界初の女性向け性欲低下改善薬が発売されることになったのです。

フリバンセリンの承認と認可の違いについて

薬の承認と認可という用語には大きな違いがあります。承認は薬の効果を認めたよ、というだけであり、それを販売したり服用してなんかあっても行政は関知しません、という意味合いです。一方、認可は薬を販売・使用することを行政が認めました⋯承認より認可の方が効力が強いものになっています(法律の専門家のツッコミは禁止)。本年2015年8月にFDAはフリバンセリンに認可を与えましたので、医師も患者さんも安心して処方・服用ができることになったのです。

ちなみにフリバンセリンの商品名「Addyi」、日本で承認・認可させるのはかなり先の話になるでしょうし、もちろん保険診療の対象外になるでしょうね。注意としては推奨はできませんけど、どうしても個人輸入する場合は、パチモンに気をつけて下さい、男性の勃起不全改善薬もかなりの数のパチモンが出回っていますから。

今回は医師専用サイト(URLは明記しませんでした)、Sprout Pharmaceuticals社サイト、FDAのサイトを参考とさせていただきました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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