「給食で死ぬ❗」という話と「給食がないと痩せる❗」という話、どちらも事実ならかなり怖い。

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ひょんな切っ掛けで「給食で死ぬ❗」というタイトルの本を買ってしまいました。

内容はある中学の校長が給食の内容を変えたところ、あら不思議、非行少年は更生するし、学力は向上するし、周囲の大人もみ〜んないい人になった実話をまとめた本です。もちろんコンビニ弁当は悪者ですし、カビないパンも悪者ですし、無農薬野菜やマクロビの優秀さを讃えています。手間暇をかけた給食が世の中を素晴らしい世界に変える話は、もちろんトンデモ系の話という捉え方で読みましたけどね。笑 

給食で死にはしないと思うけど、給食を頼りにしている人もいるという話もありまして

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そもそも「ソフトめん」って何?より これ今でも給食のメニューにあるんでしょうか?

給食ってとかく悪者にされる傾向がある一方で、給食費を払わない親がいたり、給食でアレルゲンを摂取して亡くなった生徒もいますので給食なんて廃止しちゃえばいい❗という考え方もありかな、と捉えていました。

ところが夏休みになって給食がなくなったために「夏休み痩せ」になってしまう子供がいるという話も出てきてしまうと戦前の貧困対策で開始された給食の大切さの再考も必要になってきます。

注意:「給食で死ぬ」(著者 大塚貢・西村修・鈴木昭平 コスモ21出版)は、著者の講演のDVDが付録としてついていますので、ある一定方向へ導く極端な、そして稀な症例じゃなかった、事例として捉えて読了しました。この本はもちろん例の波動系の市議会議員さんもお読みになっています⋯例の元市議会議員さんの「給食で死ぬ」ブログ 「揺るがない、動じない、諦めない

例の議員さん関連エントリー 波動医療というトンデモない代替医療というかインチキ医療の拡散力の恐怖❗

一方で給食を頼りに生活をしている子どもがいるという、昔の日本全体が貧乏だった時代のような話もあります。

給食がないと痩せる、という衝撃の事実❗

「東京新聞」のサイトでショッキングな記事を見つけてしまいました。タイトルはズバリ「夏休みに痩せる子ども」で「私説・論説室から」という社説・コラムに掲載されています。その内容は

「子どもが夏休みで、ご飯や消耗品がなく。本当に申し訳ないのですが、お米など援助していただけないでしょうか。子どもが毎日、『おなかすいた』と言うので切ないです」受け取った非営利団体「フードバンクかわさき」の高橋実生(みお)代表はすぐさま、米十キロとレトルトカレー、菓子を段ボール箱に詰め、宅配便で送った。フードバンクかわさきは、個人や企業から寄付された食品やお金を、経済的に苦しい子どものいる家庭などに送っている。メールの送り主は首都圏に住む母親。小学校低学年の子どもが二人いる。母親、父親ともに心の病を患っているが、父親は病は言わず非正規で工場で働く。しかし、夏は勤務が少なく、収入も激減する。夏休みはこうしたSOSのメールが増えると、高橋さんは言う。養護教諭を対象に数年前、実施された貧困に関するアンケートで「夏休み中に痩せる子どもが増加している」との報告があった。休み中は給食がないためだ。

東京新聞 TOKYO Web

せつなく悲しい内容である一方、本当かよ⁉とも感じてしまいました。この記事からのみの情報でまとめると両親が病気→貧困→夏休みは給食がない→子どもが痩せるということになります。つまり子どもの体重は学校の給食に左右されていたのです。ご両親が心の病で、収入も低い家庭に育ったお子さんには申し訳ないのですが、給食って1日3食のうちの1食であり、学校も週休2日でしょうから、1日3食で1週間の食事として考えると21分の5食が体重の維持に大きく作用していたことになります。

となると給食って非常にカロリー供給源として(栄養や食の安全性は別として)子どもにとって重要だったことになります。しかし、低所得者の方が肥満が多い、という話もありまして矛盾しますよね。

所得と肥満の関係

所得と肥満の関係は因果関係とは言えないまでも、相関関係にあることは多くの方がご存じだと思います。米国では低所得層は簡単手軽な食生活を送るために、栄養をジャンクフードで補う傾向があるためと考えらえていますが、実は日本でも同じ傾向が、特に女性にはあるのです。

アメリカ社会だけではない?!_-_日本における肥満と所得の関係を統計から読み取る___Insight_x_Inside
http://insightxinside.com/ 「アメリカ社会だけではない?!日本における肥満と所得の関係を統計から読み取る」より

しかしこのような考え方もできます⋯私のブログですが。笑
肥満の原因は社会格差・経済格差にある、は間違っている❗経済格差と肥満の深い関係

東京新聞の「夏休みは給食がないから痩せる」家庭は貧困であり、ご両親が心の病を患っているためにアメリカ型のお手軽なジャンクフード系食事をとっていた可能性が高いと予想されます。しかし、ひょっとしてジャンクフードも買えないような所得であり、子どものエネルギー源のほとんどを学校の給食に頼っていた可能性も出てきます。日本における貧富の差、二極分化はここまで進んでいたのか❗とかなりショックでした。

最低限の生は保障されているはずの日本なのに

日本の医療制度は世界に誇れるものです(財政面は別)。生活保護という制度もあります。それなのになんで東京新聞のような家庭ができてしまうのでしょうか?生活保護の申請をめんどくさがる、あるいは知らないという人も世の中にはいますが、この家庭は「フードバンク」制度を利用しているし、フードバンクのスタッフも当然福祉制度は知っているはずなのに不思議です。ちなみに川崎市は神奈川県の住民1人あたりの生活保護費番付で一位なんですけどね。

神奈川県の住民1人あたりの生活保護費番付_-_都道府県・市区町村ランキング【日本・地域番付】
日本地域番付」より

給食の内容がどうのこうの言っている人がいる一方で、給食がないと痩せてしまうような人が混在する日本、政治がいけないのか、教育がいけないのか、社会のシステムがいけないのか、終戦記念日にショッキングな記事を読んで、数日間考え込んでしまいました。

でも、長期休暇に対して給食を実施する、という意見(東京新聞の記事内にあります)はどう考えても変ですけど。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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