大阪府知事ともあろうものが、新型コロナ感染症対策に関してトンデモ発言をしたことに対して医師から猛烈な批判が出ています。
ポビドンヨードを主成分とするイソジンでうがいをすると新型コロナ感染症の予防および治療になる、と大方の人が解釈してしまう発言でした。非難轟々の吉村知事をあえて庇ってみることを試みましたが、その結果は⋯。
本記事の内容
吉村大阪府知事の「イソジンうがいで新型コロナ感染症治療」発言
吉村知事のトンデモ発言が大々的にメディアで取り上げられました。
その後、吉村知事は火消しに躍起となり「イソジンを含むポビドンヨードによるうがいは治療にはならない、ポビドンヨードうがいは予防にもならない」と公表しています。
当然の流れとして、吉村知事のポビドンヨードうがい薬発言の直後に、ドラッグストアや薬の販売サイトはイソジンを含むポビドンヨード系のうがい薬が売り切れ状態になりました。
医師からポビドンヨードの副作用などに関する苦言がネットを中心に拡散していることに焦ったのか、大方のメディアは吉村知事の発言を否定的に、つまりポビドンヨードうがい薬は新型コロナ感染症に関して効果がないことを後日報じています(当初から否定していなかったのに)。
私はひょっとして、吉村知事が言い出した、イソジン等のポビドンヨードを含むうがい薬は新型コロナ感染症の感染予防および感染拡大に貢献するのではないかと、まっとうな世論とは反対方向の結果もありうると考え出しました。
こんなブログを書いておいて、あえて庇ってみることを試みました。
イソジンの効果はウソ?うがいをしても風邪の予防にならないよ❗
ポビドンヨードは新型コロナ感染症対策として効果がある可能性を医学論文のエビデンスを提示しながら検証してみます。さあ、結果はどのようになるかお楽しみくださいませ。
ポビドンヨードの新型コロナに対する効果は世界中で検証されている。
新型コロナ感染症禍において、予防・治療・疫学に関する論文が世界中で発表されています。イソジンなどのポビドンヨードの効果も論文になっていますし、ポビドンヨードの感染症に対する予防効果の可能性に関しては、海外でも治験が開始されています。
既に論文になっているものとしてhttps://doi.org/10.1080/20002297.2020.1794363では、抗ウイルス作用のあるうがい薬は、感染症の患者さんを診察する歯科医の感染リスクを低減させ、患者さん自身の病状を改善する可能性を伝えています。
吉村知事、弱気になってポビドンヨードは感染予防にもならないし、治療にもならない、と後日訂正する必要はなかったかも知れませんよ(この論文が正しい限りでは)。
こんな医学論文もあります。PMID: 32643111ではポビドンヨードが感染症の原因であるウイルスに対して、速やかにウイルスを不活化することを伝えています。吉村知事、自信をもって「イソジンは新型コロナに効果ある❗」って言い切ってもいいかもね(ここまではね)
※急を要するあまり、じっくりと検証されていないそそっかしい論文もかなりまじり込んでしまっている点には注意が必要です。特にワイドショーに登場する自称感染症の専門家が「エビデンスがあります」「論文があります」と言っても、頭っから信じ込むのはリスキーです。
※ウイルスを殺菌するとの表現は厳格には2つの点で間違っています。1つ目はウイルスは細菌ではありません。2つ目はウイルスは生き物ではないので「殺」との言葉も適切では無く、正しくは「不活化する」です。
吉村知事が言い出しっぺで急速にイソジンうがいが新型コロナ感染症対策として効果がある説はそもそも、この研究のパイロットスタディの途中経過結果をうっかり公表しちゃったのでは、と好意的に捉えることも可能かもしれません。
注意深く読むと、わざわざ「【これまでの研究成果】」と書かれていますのよね、「これまでの」っていうことは、さらに研究が継続されることが予想されます。
大阪はびきの医療センターが今後、さらに新型コロナに対する研究を継続するためには、いくつかの問題をクリアする必要があります。
- うがい無し、イソジン以外のうがい(たとえば水のみ)、イソジンうがいの3グループに分ける
- 研究対象者のサンプルサイズを増やし、対象者は無作為に分け、可能ならダブルブラインドで検証する。
- 対象者がどれだけの割合で重症化したか、効果を発揮するために必要なうがいの期間と回数を明確にする。
などなど、もっとデータを蓄積しなければ、感染予防効果・感染拡大防止効果・感染した人への治療補助効果が証明されたことにはなりません。
本当にイソジンなどのポビドンヨードが新型コロナ対策や治療に効果があることを示すには、長い道のりが必要なのです。
イソジンなどのポビドンヨードは強力な消毒効果がある反面、人体への悪い影響もあります
吉村知事の爆弾発言を受けて、イソジンなどのポビドンヨードの安易な使用に対して、医師を中心として注意勧告がSNSを中心に発信されています。
ポビドンヨードはヨウ素の消毒効果を利用していますので、大量のポビドンヨードを服用してしまうと、ヨウ素の酸化効果によって、喉や気管や胃などの粘膜に潰瘍を作ってしまいます。
さらに体内に大量のヨウ素が吸収されてしまうと、中毒を引き起こし最悪の場合は死に至る可能性も否定できません(トランプ大統領が消毒液を注射すればいいじゃん、と非常に短絡的な発言をしたことを記憶しているかたも多いでしょうね)。
ヨウ素は体内に入ると甲状腺に集まる性質があるために、過剰なヨウ素によって甲状腺機能低下症の原因にもなりますし、甲状腺が腫れることも考えられます。
医師の多くが吉村知事の発言を受けて、猛烈に批判をしているようですが、ゴクゴクとイソジンを飲んだり、イソジンを注射したり点滴しないかぎりはそれほど副作用は気にしなくてもいいかもしれません。でも、世の中は広く、そして限りなくおバカさんもいます。新型コロナ感染症予防としてBCG注射を行った医師が実際に日本にいましたし、消毒薬を注射するれば良いと発言する大統領もいましたし、メタノールを飲んでしまった人もいます。
吉村知事にお願いしたいこと
新型コロナ感染症対策として漠然とした指示や要請をする政治家が多い中で、具体的な数字を挙げて説明する吉村知事を嫌いじゃなかった私です。例えば、「会食をする時は4人で」との吉村知事の発言に対して、なんで4人なんだ、5人の場合とどんな違いがあるんだよ❗!とのご意見もありました。私は無理やり、「5人以上だったらクラスターになるから、4人なんじゃないの?」などとかなり忖度した発言をツイートしたことさえあります。
しかし、吉村知事は確実に大失敗をしているのです。
医師は新型コロナ感染症感染疑いの患者さんや感染者の診察に際して本来ならば着用しなければならない、N95マスク不足に悩まされています。政府がマスクは安定的に配給されていると判断している今現在でもN95マスクを入手することは一般開業医では困難です。
新型コロナ拡大 → 一般向けマスク不足 → 医療用サージカルマスクを一般の方が購入 → サージカルマスク不足 → コネを使ってN95を入手する一般の人増加 → 医療現場でN95が枯渇
ということが実際に起こりました。
私が危惧していることは、市中のイソジンうがい液が不足することによって、手術等のときに使用する医療用のイソジンがマスクのような状態になることなんです。
普段はメディア、特にテレビ、それもワイドショー系を上手く利用してきた吉村知事はご自身の発言によってイソジンうがい液がドラッグストアから消え去ることを想像しなかったのでしょうか?すでに薬問屋さんはイソジンうがい液を出荷停止にしています。
市中でイソジンが買えなくなった人は医療機関を受診して、イソジンうがい液の処方を希望するかもしれません(数年前からイソジンうがい液は処方薬の対象から外れています)。
メディア慣れした吉村知事は実際の効果が十分に確認されていない、「イソジンうがい」をメディアはセンセーショナルに取り上げることは事前に予想されたはずです。
ちなみに私は先日、共同通信に寄稿して維新の会の松井大阪市長とメディアに対して猛烈に批判しています。
メディアの使い方を十分に理解しているはずの吉村知事、これからの発言には十分な注意を払っていだだきたいものです。