英断❗ダルビッシュ、「トミー・ジョン手術」という肘の手術を過去に受けたメジャーリーグ選手の治療後の成績は?

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野球選手が肘を故障する場所として肘内側側副靭帯損傷があります。この治療方法として靭帯を再建する手術「側副靱帯再建術」と呼ばれています。内側側副靭帯は英語で「Medial Collateral Ligament」ですので「MCL再建術」とこの手術」と書いている書物もあります。

ダルビッシュ投手が受ける肘内側側副靭帯(MCL)の手術として有名なトミー・ジョン手術の結果は?

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https://www.beyondtheboxscore.com/2012/11/4/3587834/MLB-tommy-john-surgeries-a-more-complete-list

こんなに多くの選手がトミー・ジョン手術を受けています。ダルビッシュ選手のファンは心配でしょうけど、米国ではスタンダードな手術と考えていいですね。

今回、ダルビッシュ選手が肘の治療として選択した「トミー・ジョン手術は」この「MCL再建術」のことなのです。ドジャースのチームドクターであるフランク・ジョーブ医師が考え、トミー・ジョン選手が初めてこの手術を受けたために「トミー・ジョン手術」と一般的には呼ばれています。手術を受けて復帰して大活躍をした選手が多いからこそ、今回、ダルビッシュ選手も治療法として選択したのでしょう。しかし、このトミー・ジョン手術に関して、

トミー・ジョン手術を受けると、手術後のパフォーマンスが落ちる

という説があります。ダルビッシュ選手のファンにとってはショッキングな話ですが、この話はRobert Keller医師が米国スポーツ医学整形外科学会(AOSSM)で2014年に発表しています。
「Young Pro Pitchers May Face Higher Risk of ‘Tommy John’ Surgery」という題名で「Health Day」というサイトに掲載されています。

トミー・ジョン手術を受けた87%が復帰してるけど、その後の結果が残念なことに

今回、肘の状態が悪く治療の必要性を検討したダルビッシュ選手も複数の医療機関を受診して、最終的にトミー・ジョン手術を受けることを決めました。上記の発表をした医師はHenry Ford Hospitalに勤務している整形外科医であり、ダルビッシュ選手の手術を受け持つ医師が所属している病院ではありませんので、ひょっとすると各病院によって治療成績に違いあるために、複数の病院で相談をしたのだと考えます。87パーセントの選手がトミー・ジョン手術を受けた後、復帰していましたので、復帰に関しては心配はなさそうです。

気になるのは手術を受けた後の成績ですが防御率・四球の数・ヒットを打たれた数・勝率も手術前と比較すると明らかに成績が落ちていたとの結果を伝えています。でも、これは考えてみると当たり前のことであり、調子が悪いから手術を受けた⋯これ以上肘に負担をかけたくないから手術を受けたわけであり、手術を受けて全員が全員、格段にパフォーマンスが向上していたら、外科的ドーピングと同じになっちゃいます。

ファンの期待に答えるために、選手生命を賭けて一大決心で手術に臨んでいるはずです⋯手術をしてパフォーマンスを落とさなかった選手も個別にはいるのですから、ダルビッシュ選手の決断に拍手を送りましょう❗

若くしてメジャーに入団していることは手術リスク自体も高くする

さらにこのRobert Keller医師は嫌なことを発表しているのです。

若くしてメジャーリーグに入団していると、手術の必要性を高める

なんてことまで伝えています。

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前述の「Health Day」より

これ一瞬、ダルビッシュ選手のように若い選手ほど、手術を受けると危険、と解釈してしまいました。読み返してみて、これはトミー・ジョン手術が必要とされた選手の約60%が入団して5年以内に手術を受けており、若いうちから無理をして投球を続けていたことが、肘の故障を引き起こすことを示唆しています。つまり、長年に渡って肘を酷使したために、トミー・ジョン手術が必要になったということですね。

田中将大選手が受けたPRP療法は選択肢としてなかったのか?

今回のダルビッシュ選手の報道を見て、田中マー君が美容皮膚科治療でも使われるPRP療法という、自分の血液を使用した切らない治療は選択肢としなかったのかな?と考えました。田中選手の肘の故障も病名としては「右肘内側側副靭帯の部分断裂」と報道されています。トミー・ジョン手術も一時期は考えたようですが、最終的には手術ではなく、注射ですませるPRP療法を選択しています。

田中選手のメジャーリーグ入りは24歳の2014年、ダルビッシュ選手のメジャーリーグ入りは25歳の2012年ですので、だいたい同年齢でのメジャーリーグ入団と考えると、メジャーリーグで活躍すること自体が肘を損傷して、なにがしかの治療を受ける必要性が出てくるのですね。田中選手は切らないPRP療法を選択、ダルビッシュ選手は外科的手術を選択、この違いは性格とかではなく、活躍期間に比例する症状の重さに左右されているのだと判断します。

美容治療と比較しては申し訳ないのですけど、ほうれい線が気になってヒアルロン酸の注入やPRP療法を行っていても、最終的には切るフェイスリフト手術の効果と比較すると、断然切る手術の方が効果が高いですから。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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