納得!疑似医学・インチキ医療で病気が治る場合もあるけど、高額な治療費が効果の秘訣??

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インチキ医療治療・医学的効果が無いサプリ・疑似科学的な医療機器がなぜ、これほどまでに多くの人を惑わせつつ、一定の人気を集めているのか?常々「非科学的疑似医療を批判」してきたのですが、やっとなぜそのような非合理的な治療法・健康法が一定の支持が得られるのか納得いく研究がありました。

疑似医療・インチキ療法でも効果がある、プラセボ以上に効果を高める原因がわかったぞ⁉

新薬で値段が高い、と説明すると偽薬でも高い効果が発揮されるということが判明しました。あまりお金のかからない「自然療法」や身の回りにあるものを利用した「健康法」がブームにはなるけど、長続きしない。その一方で高額な疑似医療機器や高額なインチキ薬や高額で怪しげな治療法ほど、圧倒に信者さん的ファンを獲得して、ブームというより一派を作り上げている理由がわかりました❗

薬の値段が高ければ高いほど効果がある、プラセボ効果

1回分1500ドルの薬と1回分100ドルの薬の効果を比較した論文があります。「Placebo effect of medication cost in Parkinson disease: A randomized double-blind study」(Neurology. 2015 Feb 24;84 (8) :794-802. )によればある患者さんには「この薬は1500ドルだよ」と説明して、他の患者さんには「この薬は100ドルだよ」と説明して投薬しました。薬の値段や製薬メーカーの有名度によってプラセボ効果があることは以前から医師なら誰でも経験していることです。このプラセボ効果が果たしてどれだけあるのか、を研究したものです。結果として

高価な薬と説明された人は安い薬と説明した人より、10%症状が改善した

という、言われてみればそうだけど、ということがわかりました。

パーキンソン病の治療薬として「生理食塩水」でも効果があった

パーキンソン病の治療にはドーパミン作動薬を使用します。今回の研究で使用された方法は「片方は手間暇がかかり高コストになっているから1500ドルします。でも、もう片方の薬はコストを抑えることができて100ドルなんです」と説明。さらに「値段は違うけど、効果は同じなので、それを証明するための研究です」と説明して、12人のパーキンソン病の患者さんに協力してもらいました。治療効果はUPDRS(パーキンソン病統一スケール)という世界中で使用されている基準での評価とS&E ADLスケールやPurdue Pegboard Testなどを使用して評価をしました。

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Perception of drug cost influences placebo response in Parkinson’s disease

他覚的に評価可能な方法としてはfMRIという脳の活動状態を画像で診断する方法を採用しています。どちらかといえば主観的な判断が左右するUPDRSでプラセボ効果が現れるのはある程度予想できますが、音に合わせて指を同期させるタッピングテストでも高い薬と説明されて方が効果がありました。客観的な診断として使われた脳の血液の流れをみるfMRIでは、高価な薬と説明されていても脳の活性化は認められませんでした。

この実験で高い薬も安い薬も実は単なる「生理食塩水」だったんです。あっち側に行っちゃった人へ⋯ 「波動」はもちろんのこと「念」も込めていませんし、「ホメオパシー治療のレメディ」も加えていませんよ。笑

この実験から疑似科学・インチキ医療の効果は⋯高けりゃいいんだ

世の中にはどう見ても通常の科学・医学の考え方からするとトンデモ系の治療によって効果がある、と主張する人がいます。さらに明らかに騙されていると考えられる治療方法で病気が治ったと主張する医療関係者・患者さんがいるのも事実です。プラセボ効果によって病気が改善することは医学的な常識ですので、プラセボであっても病気が治ればいいじゃないの、という考え方もできます。

しかし、この場合は科学的・医学的な効果のメカニズムが証明できないために「再現性」に乏しいのです。ある人には効果があるけど、他の人には効果がないということが多くなります。医学においてはある治療法によってこれだけの人が命を救われた、病気が改善した、というデータを中心に適切な治療が行われます。

一方、疑似医学、特に常識外に高額な治療費・治療機器を使用して効果があったという人は、今回の実験と同じように

「高ければ効果があるんだろう」という通常のプラセボ効果以上に経済的な負担がかかったことを自分で自分に説明する、プラセボ増強効果があるのではないか、とも考えらえます。

皆さんは高額なバッグや時計を買った時「これは子供が大人になっても使えるから」とか「いざとなった時売れば幾らかのお金になるから」という購入後の後悔を自分で無理やり合理的に説明しようとした経験ってありませんか?多分、疑似医学で治療効果があったと感じている人はこれと同じ思考回路が通常の人より強いのでしょうね。

疑似医学・インチキ医療を信仰している人に間違いを伝えるために、今回の実験でも違いが出なかったMRIのような数字的・他覚的に評価できるデータで「あなたは騙されているんだよ」といくら説明しても、多分「人間の体は全て検査でわかるわけがない」「そもそも基準となっているデータの根拠は?」「MRIが全てを証明できるわけではない」「本人が治っている、と言っているんだから」という答えが返ってくることが多いに予想されます。だからこそ高額な疑似医学ほど、熱狂的なファンが多いのでしょうね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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