以前から日本で保険診療で使用できる「ニキビ治療薬」は世界基準から数十年遅れていると主張してきました。2008年にやっと「ディフェリンゲル」がニキビの保険診療で処方できるようになりましたが、それでもニキビ治療の世界標準としては10数年遅れです。今回、2015年4月から、やっと過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide 略してBPO)と呼ばれるニキビ治療には欠かせない成分の入った新薬「ベピオゲル」が薬価収載され保険適用になります。
本記事の内容
過酸化ベンゾイル「BPO」入りのニキビの特効薬が今年の4月から使用できる
ようやく世界的に遅れを取っていた日本でも通常のニキビは健康保険で世界標準レベルの治療ができることになりました。
「A North American Study of Adapalene–Benzoyl Peroxide Combination Gel in the Treatment of Acne 」より
このグラフを見る限り「ベピオゲル(BPO) +ディフェイリンゲル(Adapalene)」の組み合わせがニキビ治療では最強のコンビです。
過酸化ベンゾイル入りの「ベピオゲル」の効果とは
ベピオゲルの効果は過酸化ベンゾイルの作用が中心です。
- 抗菌作用
- 角質層剥離作用
上記の2つが効果・効能として「ニキビ治療」を画期的に進化させます(すでに世界ではこの治療法がメイン)。
ベピオゲル中の過酸化ベンゾイルはフリーラジカルがニキビ菌を直接攻撃して殺菌
今までアクティブなにきび(赤ニキビなど)に対して抗菌剤を使用していましたが、どうしても服用期間が長くなり、抗菌作用というよりは静菌作用になってしまいがちでした。強力な酸化作用を持つ過酸化ベンゾイル(BPO)の作用が、今まで日本では消防法によって第5類自己反応性物質、第1種自己反応性物質に指定されて危険物扱いされていた間抜けな状況でした。
ベピオゲルの成分であるBPOが角質細胞の結合を緩め、角質が剥離しやすくなる
という作用もあります。白ニキビと呼ばれる角栓が詰まっている状態を改善することが可能なディフェリンも角質を浮かして剥離させる効果によってニキビを治し、にきび自体をできにくい状態にできます。ディフェリンゲルと比較して、過酸化ベンゾイルが入っているベピオゲルの場合、ディフェリンには効果効能として備わっていなかった「抗菌効果」もありますので、ディフェリン+抗菌剤の塗り薬、あるいはディフェリン+抗菌剤の服用、という治療法より、アクティブなにきびがあり、白ニキビもある場合は「ベピオゲル」の方がアドバンテージがあります。
気になる「ベピオゲル」の副作用
海外で発売されている「プロアクティブ」と日本で発売されている「プロアクティブ」(プロアクティブはamazonでも買えるようです)実は成分に違いがあります。
海外のものはこの過酸化ベンゾイルが含まれているのです。
気になる過酸化ベンゾイルの濃度ですが、ベピオゲルの場合は標準的な2.5パーセントとなっています。主な副作用は
・5パーセント未満に皮膚のかゆみ、かぶれ、しっしん、ピリピリ感、灼熱感
・5パーセント以上に皮膚のカサカサ感(鱗屑や落屑と呼びます)・赤み・乾燥・刺激感
が、あります。間違って口周辺や目の周りにつけてしまうと口角炎・眼瞼炎も副作用として報告されています。ディフェインのように催奇形性のリスクはないですが、妊婦さんへの人体実験はできませんので「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていない」という一般の処方薬と同じような注意も添えられています。
ベピオゲル+ディフェリンで世界基準に追いついた日本の保険治療でのニキビ治療
当院はニキビ治療に対して以前から力を入れてきました。その評判を聞いてかなり遠方からも患者さんが来院しています。今回、過酸化ベンゾイルが保険治療で使用できるようになり、さらにアダパレンも使用できますので、通常のニキビの治療は保険診療で多くがカバーできることになります。
しかし、いくら世界基準の治療ができても、治らないニキビは当然あります。日本ではニキビ治療に対してディフェイリンを使いつつ、レーザーを使用すると混合診療と判断されるために、保険外の治療方法をプラスする場合は一連のニキビ治療自体全部を保険外治療としなければならないルールがあります。当院としては一般の皮膚科でも今回のベピオゲルが保険診療に収載されたことで、簡単なニキビは治療が可能になるはずと考えます。そこで当院は
本年4月からニキビ治療に関しては全て自由診療で行いたいと考えています
複数のレーザーやケミカルピーリングなどを駆使して、保険診療では完治がとうてい無理なもの、保険治療だけではどうしても治療期間が長くなるもの、塗り薬・飲み薬だけでは対応しきれない難治性のニキビの治療に専念したいのです。
ディフェリンゲル登場以前の日本のニキビ治療は硫黄カンフルローションを使用するなど、ある意味では明治時代以来ほとんど進化していませんでした。今回のニキビの特効薬の登場で(けっして世界的には新薬とは言い難いものですけど)、スタンダードな治療法が確立されることにより、にきび治療の多くは保険診療で可能となるはずです。それでもどうしてもニキビが治らない、という方は当院へご相談ください。ニキビ治療に対して、保険診療という枠に捉われずに世界標準より一歩先の治療方法をご提案いたします。
◎追記 2015年5月から過酸化ベンゾイルに抗菌剤がプラスされた、にきび治療薬「デュアック配合ゲル」が保険診療で使うことが可能になりました。関連エントリー『ニキビ治療の新薬「デュアック配合ゲル」、過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンが入っているけど⋯』をご参照ください。
こんな場合もあります⋯
2016年2月3日追記