経済を優先しないで、国はリーダーシップを発揮してPCRの感度や特異度を高めろ⁉

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連日ニュース・ワイドショーで新型コロナ感染症を取り上げていますが、そこに登場する専門家の方々の発言に違和感を覚えませんか?

医療の問題とお金の問題は切っても切れない関係にあるので経済の問題ともいえなくもないですが、医療の専門家とされる人たちが医学以外の領域へ踏み込んだ発言をしてしまっています。

国が優先すべきは、経済ではない!リーダーシップを発揮してPCRの感度や特異度を高めろといういわゆるPCR推進派の主張をPCR慎重派は理解できないので永遠に分かり合うことはなさそうです。

PCR推進派もPCR慎重派も医療の専門家、医者がテレビで言っていたからではなく、内容に納得いかなかったら専門家のいうことは話半分・信じてはいけません。誰がいっているかではなく、何を言っているか、内容がすべてです。

医師が経済問題を語りだしたらチャンネルを変えよう❗

当たり前だけど医師は医学の専門家です。医療は行政と強いつながりがあるので、行政に医療に関する問題提起をしても問題ないし、保険点数などに対して要望を出すのも批判されることでは無いと思います。

私が強く違和感を覚えるのは、最近テレビに医学の専門家として登場する医師の医学以外の領域へ踏み込んだ発言を聞いた時です。

医師が行政へ「いまだに紙ベースで行っている感染症の届け出をネットを使った仕組みに変えてよ」と提案することは当たり前の発言だと思います。

医師が行政へ「この治療の点数を上げてよ」と伝えるのも、全く問題無いことだと思います。医師だって診療行為に対する報酬で生活をまかなっているのですから。

しかーし、医師が経済問題、特にマクロ経済に口をはさむのは、いかがなものでしょうか?

例として、最近テレビでお見かけすることが増えたこの医師の発言です。

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ツイッターで@kazu10233147がアップした動画をお借りしました。

注意:テレビに出まくっている左の女性の発言ではありませえん。そもそも彼女は医師じゃないですから。

向かって右の医師は例の羽鳥モーニングショーで次のような発言をされています。

PCR検査の感度、特異度を高めることに国がリーダーシップを発揮し、お金を出して開発しないと経済は回っていかない。それを政府はアイマイでアヤフヤにしながら都民、国民の命を危険にさらして経済だけを動かしている。

あの〜、PCR検査の感度や特異度を高めることが、経済を回すことになるのでしょうか???

経済は門外漢である私は素朴な疑問を抱いてしまったのです。

PCR検査は国の経済対策によって結果は変わってくるのか?

新型コロナ感染にともない、かなりの割合の国民が初めてPCRという検査方法を知ったんじゃないかと思います。PCR検査に関しては推進派と慎重派が激しく討論が繰り広げられています(メディアは基本的に推進派を取り上げることが多いのはなんでだ???)。

PCR検査慎重派は感度・特異度・事前確率等の観点から、PCR検査対象の拡大に対して批判的になっているのであって、経済問題を絡めて慎重になっているわけではありません。

感度は実際に感染している人を正しく陽性判定する割合、特異度は感染していない人を正しく陰性判定する割合を意味しています。PCR検査は検査の仕組みとして特異度は高いということはPCR慎重派であっても認めています。PCRの問題点はその感度の低さなのです。

PCR検査の感度は国がリーダーシップを発揮すれば上がるものなんでしょうか?

たぶん、国は多額の予算を掛けてPCR検査の感度を高めることを研究者や検査会社に要請したとしても、結果が出るには長い年月が必要になると思うのは私だけでは無いはずです。

PCRは検査技師さんの慎重な取り扱いが必要、簡単に感度は上がらないよ!

PCR検査はみなさんが考えているような簡単な検査ではありません。

一時期、へんてこな医師がPCR検査なんて簡単だよ、とメディアで発言したことがあります。でも、これは大間違いであり、臨床検査技師さんから強い反発がありました。

PCRはどなたでも簡単にできる検査では無いことは今どきの医学生でさえ知っています。

前掲の医師の発言を国がリーダーシップを発揮して、熟練の臨床検査技師さんを大量に養成しろ、と解釈すれば、ひょっとして感度に影響が出る可能性はあります。

でもさあ〜、臨床検査技師の資格を得るには臨床検査技師養成過程のある学校に3年から4年間は勉強する必要があるんだけどなあ⋯。

現時点で国がリーダーシップを発揮しても結果が出るには最低3年は掛かってしまいます。

そんな悠長なことは言っていられないと思いますぜ、普通は。

検査方法開発を優先すれば、経済は回るのか?

この医師によれば、政府は都民・国民の命を危険にさらして経済活動を優先しているとのことです。

東京都が仲間外れにされた「Go To キャンペーン」に関する予算は1兆6794億円です。

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令和2年度国土交通省関係補正予算の概要https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001339698.pdfより

全自動PCR検査システムを開発した企業が日本にあります。この会社駐日フランス大使から礼状をもらっているくらい、今回の新型コロナ感染症禍における貢献をしているのは間違い無いことです。

注意:ここから↓はあくまで仮の話だから、まじめに受け止めないでね。

大量にPCR検査可能であり、熟練の臨床検査技師も必要としないこの検査機器を国がリーダーシップを発揮して、どんどん発注して日本中の医療機関に配置すれば、たしかに経済は回るかも、と考え次のような計算をしました。

全自動PCR検査システムの価格は1台2000万円程度(http://www.pss.co.jp/ir/press/pdf/20200528.pdfより)。

Go To キャンペーン」の予算は1兆6794億円。

1兆6794億円 ÷ 2000万円 =83970⋯「Go To キャンペーン」の予算で全自動PCR検査システムが8万4000台近くも購入できちゃいます。

PCRの感度・特異度を上げて同時に経済も回せる、という素晴らしいことですね(棒)。

都民や国民の生命を危険にさらさないようにするために、感度と特異度を高めたPCRを普及させるために、もしも8万4000台近くの全自動PCR検査システムを導入しても、経済活動が十分に回りはしないように考えてしまうのは私だけなのかなあ⋯。

ちなみ83970台あると、国民1500人に1台といつでも気軽にどなたでもPCR検査が受けられますね。

この全自動機器は残念ながら日本では承認されていない理由等に関しては触れません。また、この検査機器が感度が従来の検査より高いとは考えられていません。

PCR推進派と慎重派がわかりあえる日は永遠にこないような気がします。

おまけ:この医師の発言は次のように解釈することも可能です。

PCR検査を積極的に行って、陽性者を判別して、陽性者は隔離、陰性者は今まで通りの生活をして経済を回す。

だとしても、そうなると感度・特異度が問題になってしまうのですけど⋯。

新型コロナウイルスPCR検査は感度だけじゃなく、特異度も考えないとダメ

新型コロナウイルスPCR検査は感度だけじゃなく、特異度も考えないとダメ

やっぱり推進派と慎重派はわかりあえないようです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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