厚生労働省「唾液を使った検査は無症状の人でも検査可能」は大きな誤解と混乱を招く❗

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唾液を使った検査は無症状の人でも検査可能になったというニュースは確実に多くの人が勘違いする報道内容です。

PCR検査をしろとやたらと煽るテレビ番組が多いわけですが、そこで検査して欲しいとコメントする芸能人・コメンテーターの方々は「安心したい」という気持ちがあるからでしょう。

厚生労働省のいう無症状の人でも唾液を使った検査というのは、海外から日本にやってきた(主に帰国者)や新型コロナに感染した人との濃厚接触者の中の「無症状の人」が対象であって、単純に安心したいから検査受けてみたい無症状の人は対象外です。詳しく解説します。

無症状の人も唾液PCR検査はOK、これは大きな誤解を招く可能性が大

厚生労働省が唾液を使った新型コロナのPCR検査を無症状の人にも適用することを認めた、との報道がありました。

「唾液を使ったPCR検査は無症状の人でも検査可能」は大きな誤解

https://digital.asahi.com/articles/ASN7K3SY5N7KULBJ001.html

朝日新聞デジタル 唾液を使った検査、無症状の人も可能に 厚労省

PCR検査の感度・特異度・偽陽性・偽陰性問題以外の観点から見て、この報道は大きな誤解を招くものだ思います。唾液PCRが無症状の人であっても受けることができるとの報道は朝日新聞以外のメディアも同じ様に、大きな誤解を生んでしまうこと必至の内容です。

そもそも唾液PCRだけではなく、従来から採用されている鼻腔・咽頭拭い液を使ったPCR検査も既に無症状であっても検査は行われています。

毎日毎日、ニュース速報で流される「本日の感染者数」、これは鼻腔・咽頭拭い液を使ったPCR検査を使ったものなんですからね。

無症状者を検査する意義、PCRの場合は十分にあります。

わたしはPCRをやたらめったらやるべきではない、PCR検査緊縮派と周囲からは判断されています。なぜ、無闇矢鱈にPCR検査を行うことを抑制する必要があるかについては、ブログ記事やSNSで発信してきました。

そんなPCR検査緊縮派、あるいは検査抑制派ととらえれている私が急にPCRの意義、それも無症状の人に対する意義があると言い出したのは、思想信条を転向させたからではありません。クラスター潰しが日本の新型コロナ感染症対策の基本中の基本。

PCRは鼻腔・咽頭拭い液であろうと、唾液であろうと新型コロナの自体を見つける検査なのですから、確実にウイルスに感染していることを他の検査方法より高い確度で確定することが可能になっています。だからこそ、症状が出ていなくてもPCR検査の対象になって、「今日の感染者数」に加算されることになっているのです。

朝日新聞デジタルは「無症状の人も可能に」との見出しで唾液を使ったPCRのことを報道しています。さらにこれは厚生労働省が無症状の人に対して、唾液によるPCR検査を認めたよ、と誤解を招くミスリードだと強く感じます。

厚生労働省が想定している「無症状の人」は海外から日本にやってきた(主に帰国者)や新型コロナに感染した人との濃厚接触者の中の「無症状の人」を意味しているからです。症状も出ていないし、濃厚接触者でもないけど、安心したいからPCRを受けたい無症状の人であっても唾液のPCRなら受けることが出ると勘違いを招く報道内容です。

唾液によるPCR検査、誤解を招く内容の記事がほとんど。

唾液を使った検査が正確な診断を下すことができるかについて、朝日新聞だけではなく多くの報道が既存の鼻腔・咽頭に綿棒を差し入れて行うPCR検査と遜色が無いことを取り上げています。

症状が出ていない人を対象に唾液を使った検査を行い確認したところ、鼻の奥を拭うこれまでの方法と変わらない結果が得られたということです。

唾液使ったPCR検査 無症状の人も対象に 厚労省 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200717/k10012520241000.html?utm_int=all_side_ranking-social_003

とNHK。

東京都内で症状がない感染者数十人を対象に、鼻の奥の粘液と唾液の両方を使って検査の精度を検証。結果がほぼ一致した

唾液を使った検査、無症状者も可能に 加藤厚労相が表明 https://mainichi.jp/articles/20200717/k00/00m/010/128000c

と毎日新聞。

どの記事も従来のPCR検査と唾液を使った検査の結果が一致しているため、唾液PCRであっても感染を判定できる、故に無症状であっても検査を受けられる、と読み取れてしまう内容になっています。

私が確認した範囲では見出しで唾液PCR検査が正式に採用されたことが理解できるのは産経新聞だけでした。

無症状者も唾液でPCR検査認める 厚労省、空港検疫や濃厚接触者

https://www.sankei.com/life/news/200717/lif2007170035-n1.html

見出しを読むだけで、産経新聞の記事は空港検疫や濃厚接触者の場合は無症状であっても唾液によるPCR検査を行うことを厚生労働省が認めたことが理解できます。

費用を公費で負担するのは、海外からの入国者や濃厚接触者など感染の可能性がある人に限られる。

無症状であっても気軽に唾液PCRなら受けられると早とちりする人が出る可能性を排除する記事になっています。

唾液PCR検査はどこの医療機関でも受けられるわけではない理由

どの記事も従来のPCR検査と比較して唾液PCR検査は採取する側、つまり医師や看護師や検査技師がウイルスに曝露されるリスクが低いことを長所としています。となると、どこの医療機関でも受けられるように考えてしまう人も出てくるでしょう。

これはまだ公開して良い内容なのか不明ですが、医師会に所属する医療機関であれば次のような伝達があったことを知っているはずです(真剣に調べればネットでも見つけることは可能)。

  • 唾液を使った検査は帰国者・接触者外来を同等の機能を持った医療機関
  • 医療機関の敷地内や隣接するところにプレハブや大型のテント等を設置し、実施可能な医療機関
  • 国立感染症研究所 国立国際医療研究センター 国際感染症センターの6月2日付けの指針に対応できる医療機関

などの条件(その他にも多数の取り決めがあります)をクリアした医療機関だけが、唾液を使った検査が可能とされています。要するに既存の帰国者・接触者外来やPCRセンター以外で唾液PCRを取り扱うことを厚生労働省は認めていません。

唾液を使った検査を厚生労働省が認めたことをメディアが報じ、それを知ったワイドショーのコメンテーターの面々が「唾液を使った検査なら無症状でも検査を受けることが可能ですっ❗」って感じで話し出すと、「心配なんでPCR検査お願いします」的な患者さんをお断りすると、「唾液の検査なら無症状でも受けられるってニュースでやってたじゃなの❗(怒)」って感じのトラブルが多発するんじゃないのかな?

この件をメディアが報じたのが金曜日の午後以降であったのが唯一の救いです。土日は岡田晴恵教授や玉川徹氏が朝っぱらから不確かな情報を強く拡散するモーニングショーは休みだもんね、良かった、良かった。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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