ダイエットや健康法として低炭水化物食と低GI食は別物と考えたほうがよろしいようで⋯。

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炭水化物を制限する糖質制限ダイエットとか低炭水化物ダイエットとかローカーボダイエットとか呼ばれる減量方法について賛否があることは多くの方はご存じでしょう。

確かに糖尿病の治療に糖質・炭水化物を減らした食事は効果を発揮しますし、体重の減少(普通はこれをダイエットと呼びますね)に貢献することは間違いありません。

確かに低炭水化物食はダイエットに効果はある

しかし、このダイエット方法が寿命や健康寿命あるいは死亡リスクを軽減するかについては明確な答えは出ていません。だからこそ医療関係者の間でも賛否論争が継続しているのです。

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https://dailyhealthpost.com/7-ways-to-cause-slow-and-sure-brain-cell-death/2/

低炭水化物ダイエットの指標としてグリセミック指数(GI)を使用している医療関係者も見かけます。グリセミック指数(GI値)が低い食品ほど、食後の血糖値の上昇を抑えられ、そのためにインスリン(これが脂肪を溜め込む働きをします)の出方が緩やかになるのでダイエットに効果があり、さらに糖尿病はもちろんのこと、心血管系の病気になるリスクを抑えるという理論で低GI食によるダイエットは体重減少効果だけでなく、死亡リスクを減少させるという考え方です。そんな考え方、理論に対して低GI食はインスリン感受性にも好影響はなく、心血管系の病気に影響を与える原因であるコレステロール値、血圧との関連が無かった、という論文が登場しました。この論文と今まで既知のことを整理すると以下のようになります。

  • 体重減少に炭水化物を制限することは効果がある
  • 炭水化物の制限は死亡リスクを下げるかはまだ不明
  • 低GI食は糖尿病の患者さんに限って言えば、血糖値を改善する
  • 低GI値は心血管系に対するリスクを下げる可能性は低い
  • 低GI食は体重減少の目安に役立ったとしても、死亡リスクとの関連は薄い

これらについて検討をしていきますね。

低GI食は健康に対する改善効果は無いようです

ここで注意して欲しいのは低炭水化物食、糖質制限ダイエットの体重減少効果と死亡リスク低減についての論文ではなく、あくまでグリセミック指数、低GI値に食品が体重でなく、病気の発症因子に影響を及ぼしているか、いないかの検討です。

今回の低GI値の食品は期待される効果はほとんど無いという論文は「Effects of High vs Low Glycemic Index of Dietary Carbohydrate on Cardiovascular Disease Risk Factors and Insulin Sensitivity」(JAMA. 2014;312 (23) :2531-2541. )というタイトルで掲載されています。この研究調査はランダム化比較試験(RCT:Randomized Controlled Trial)という手法が取られていますので、信頼度はかなり高いものと解釈してください。研究の内容は

  • 肥満傾向あるいは肥満で高血圧の人163人を対象とした
  • 高GI食、低GI食と高炭水化物、低炭水化物の食事を組み合わせた4グループに分けて調査
  • おやつや飲み物も含めて5週間のデータを解析した

というものです。炭水化物は高いけど、GI値は低い食品、あるいは炭水化物は少ないけどGI値は高い食品もあるので、これらの比較をするためにグループを4つに分けたのですね。5週間後にインスリン感受性・コレステロール値(LDL⋯いわゆる悪玉 HDL⋯善玉)、中性脂肪、血圧を測定しました。その結果低GI食は中性脂肪だけを改善したということになってしまいました。中性脂肪は肥満の場合改善することがメタボ対策としても薦められています。しかし、低GI食は肝心のインスリン感受性、コレステロール値、血圧にはなんら貢献をしていなかったのです。

低GI食は肥満の改善には若干影響があるかもしれないけど、心血管系の病気や糖尿病にはなんら効果が無いという今回の研究を行った当事者さえも驚く結果になったという次第です。

糖尿病の患者さんへの影響はまだまだ研究の余地がある

今回の研究対象となった患者さんは全員高血圧であり、56パーセントがBMI30以上の肥満であり、68パーセントが悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロール値が130mg/㎗であり、空腹時血糖値が100mg/㎗だった人は30パーセントでした。

空腹時血糖値が高い、糖尿病あるいは糖尿病予備軍の人に対象を絞って研究を行っていれば、低GI食は糖尿病の改善に効果がある、という結果も出たかもしれません。今回の調査は低GI食を摂っていれば、心血管系の病気のリスクを低くできるのか、できないのか、さらに糖尿病の危険因子であるインスリン感受性に影響を与えるのか、が目的でしたので、体重への影響は不明な点が残念ですね。

糖質制限ダイエットと低GI食は別に論じるのが正解かと⋯。

私は糖質制限食の体重減少効果は別として死亡リスクに対しては、創傷治癒の大家夏井睦先生と違った意見を持っていますし、糖質制限食ブームの火付け役の江部康二先生とも違った考えを持っています。

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実は糖質制限による血糖値管理を主張されている江部先生もGI値に関しては、疑問を持っているようです(ドクター江部の糖尿病徒然日記で「糖脂質制限と低GI食の違い」というタイトルで詳しくご意見を述べられています)。これで低GI値を理論として使用している健康本、ダイエット本の立場は厳しいものになりますね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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