プラモ作りから学ぶファクトチェックの難しさ。

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先日から現実逃避的な行為として、「プラモデル製作」に没頭しております。

プラモ製作から学んだ自分のねちっこさに参ってしまっています。私のトンデモ医学・ニセ医学批判の姿勢もその性格が原因なんです。

医学にしろ、プラモにしろ、ファクトを知るにはコストと膨大な時間が必要であることをお伝えします。

プラモデルと医学のファクトチェックは同じ

権威を疑ってみる・・・プラモデルの権威である「タミヤ」の情報は正しいのか?

日本が世界に誇るプラモデルメーカーのタミヤ(TAMIYA)の「ドイツIV号戦車G型 初期生産車」を購入しました。

「タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.378 ドイツ軍 IV号戦車G型 初期生産車 プラモデル 35378」プラモ作りから学ぶファクトチェック

二箱あるのは、極小のパーツを作成途中で紛失しちゃったんで買い直した。これこそ、「大人になってよかった」としみじみと感慨に耽ることができる大人の莫大なる経済力です(笑)。

この箱に書かれている戦車のナンバー「215」は「ターレット番号」と呼ばれるもので、「215」だと第2中隊の第1小隊の5番目の戦車を意味します(と一般的には説明されています、その件のファクトについては後述)。

実際にターレット番号「215」の戦車が実在したのかが気になってしまい調べてみるとネット上では見当たりません。そこで、「WWⅡドイツ装甲部隊のエース車両」(新紀元社)を見てみるとパンター(Panther、ドイツ語で豹のこと。IV号戦車は途中で正式名称が「Pz.Kpfw. 」に改変された)がA型からG型までのイラストが描かれていても「215」は見当たりません。

ちなみにターレット番号も第2戦車連隊所属であっても「421」であったり、するので一般的にネットで拾える情報による砲塔の番号付けも必ずしも厳格では無い可能性があることを知ることができます。

海外のプラモオタクというか戦史研究家Stefano Di Giustoによれば「215」は実在していたようですが、1941年3月から戦闘が行われていた時期とはちょっと違うような気もします (参考文献:Missing-Lynx)。

まあ、戦闘で混乱していたんだからターレット番号も混乱したんだろうね、ということでアフリカ方面軍団の第21装甲師団の5台目の戦車として話を進めます。

イラストに書かれている人々の詳細

タミヤのプラモ設計図によればこのプラモについてくるお人形は「戦車長」「砲手」「装填手」「操縦手」「歩兵」の5人。

フィギアにつける階級章を選択しないといけません(プラモには階級章等のシール(デカールと呼ぶ)」は付属されていないので、まず階級を調べてデカールを別に購入する必要があります。

タミヤ ディテールアップパーツ シリーズ のドイツ兵階級章デカールセット (アフリカ軍団・武装親衛隊) はこのような感じになっています。

戦車兵デカール

外箱のイラストを見る限りでは戦車長は少尉であることが予想されます。

ドイツ戦車兵の肩章

大問題が発生!!

戦車長の帽子の逆三角形のマークは兵科色(所属を表す)で赤は砲兵、白は歩兵、装甲・強行偵察・対戦車猟兵はローズピンクであることが、「第2次世界大戦ドイツ軍軍装ガイド」(並木書房)には書かれています。

タミヤのデカールセットには戦車兵は64番が指定されています。左隣の63番は明らかに白であり右隣は赤、その中間の64番はうっすらピンクがかっていることがよーくわかります。タミヤのイラストはかなり正確なんですね、さすが権威あるプラモメーカーです。

ファクトチェックの流れ

最大横幅5mmのデカールを貼り間違えた私は大慌てで、貼り替えました。老眼はつらい(泣)。

帽子の色がわかんない!!

戦車長が被っている帽子の色はタミヤ指定だとXF-1と呼ばれるフラットブラックです。

でもさあ、アフリカの日差しで黒の帽子だと熱中症になっちゃうじゃないでしょうか?「月刊アーマーモデリング」等によれば北アフリカ戦線向けとして誰でもが同じような軍服が支給されたために、プライドの高い戦車兵は不満に思い今まで使用していた軍装をアレンジした人たちもいたそうです。ちなみに帽子の内側は放熱効果があるとされていた赤い布になっています。

タミヤ以外の文献を求めるつもりで「パッションモデル 1/35 ドイツ国防軍 親衛隊戦車兵 デカールセット プラモデル用デカール P35-011」(パッションモデルズ)を購入して帽子の色とマークを調べてみました。

すると先ほど調査に調査を重ねた帽子の三角形のマークに関して「1942年7月まで山型の兵科色が付き、それ以降廃止された」との衝撃的な記載があああ。

「215」はG型であり、G型が生産されたのは1942年3月から1943年6月。タミヤが外箱のイラストに使用した場面は1942年3月以降で1942年7月までということになります。第21装甲師団(21. Panzer-Division )はmilitary-history.fandom.com等のマニアックなサイトによれば1943年4月7日に編成されているとのこと。私が作っている戦車は1943年4月7日から1942年7月までの4ヶ月間だけ存在していたものになることが判明しました。

ファクトチェックには膨大な資金と時間が必要

ファクトにたどり着くにはプラモ代はAmazonで3,813円×2=7626円、参考図書代は13,484円。さらに方費やした時間は作成する時間よりも長時間でした。

トンデモ医学を批判するためにも常に同様なくらい手間暇をかけております!!

注意とお願い:戦史の専門家、モデラーの方から私の勘違いや誤認識が指摘されると思います。文献等を添えて指摘していただければ、私も参考とした文献資料とつきあわせて詳細なファクトチェックができると思うのです。医学論文も疑問点や間違いの指摘は真っ当な医師や研究者なら喜んで受け入れるはずです。

どのような分野であっても一次ソースや参考文献を明記して、議論することはその分野の発展に役立つと信じてやみません。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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