なんで「肉食は死亡リスクを高める」という結果になるのか、論文は全部読んでから情報を流そうね❗

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菜食主義者と肉食主義者、どちらが健康的で寿命を伸ばすことができるか、どちらの方が死亡リスク(死亡率という表現もあります)が高いか、という問題は一般の方の雑談でも、医師間でも俎上にあがる話題ではないでしょうか?

お肉を食べ過ぎると死亡率があがる? という情報がでまわっていますけど⋯

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Meat consumption and mortality – results from the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition
 

肉食というより、本当は加工肉が死亡リスクあるいは死亡率を高めている可能性を示唆した結果なのに⋯。

肉食派が現在、ピンチ状態になっている決定的な医学的裏付けはヨーロッパで448568人(約45万人)を対象として菜食主義者と肉食主義者の死亡リスクを検討した論文「Meat consumption and mortality – results from the European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition」 (BMC Medicine 2013, 11:63 doi:10.1186/1741-7015-11-63) 」が元ネタです(もちろん他にもありますが、45万人という多人数を対象にしたのはこれだけ)。これを元に肉を食べると死亡率があがる❗的な記事がネット上に溢れかえっているのです。少しでも原文を読んだと思われる情報は赤いお肉を食べ過ぎると死亡率があがる❗と若干変化しています。

この「赤いお肉」というところがミソでして、原文は「red meat 」となっているので確かに「赤肉」と訳して問題ないように思えます。論文を読み進めるとこの赤肉って赤身の多い肉料理を指しているわけではなく、ソーセージやベーコンなどの加工肉(Processed meat)も含まれているのです。

肉食は死亡リスクを高める、という解釈はこの論文に限定した場合、間違いとは言えないとしても正確ではないですし、ネット上の「赤いお肉は死亡リスクを高める」という記事を独自に解釈して「赤身肉は死亡リスクを高める」はかなり方向がズレてしまっています。

肉食は死亡リスクを高める、という論文の正しい解釈

医学の死亡率などを調査した統計データは疫学と呼ばれる分野の学問であり、様々なバイアスがかかりやすいために、研究者がある一定の結果を期待して、データを処理してしまうことがあります。今回のヨーロッパで行われた研究は米国では菜食主義者の方が死亡リスクが低いという結果の研究が多いけど、それが本当なのか、ということを確認するために前向きの研究(追跡調査するもの)であって研究方法としては、より正確な結果が導かれると評価されています。

調査方法は

・ヨーロッパの10カ国から1922年から2000年の間に448568人が参加して、2009年までの結果を分析

・調査期間中に26344人が死亡

・赤肉を多く食べていた人は死亡リスクが1.14倍高まっていた

とここまでは肉食派にとってはイタイ結果になっています。さらに読み進めると加工肉(Processed meat )の消費量は心血管系、がんの死亡リスクと関連しているという結果があり、加工肉に限定して解析すると死亡リスクは1.44倍とかなり上昇することが理解できます。
原文

the association was stronger for processed meat (HR = 1.44, 95% CI 1.24 to 1.66, 160+ versus 10 to 19.9 g/day) .

つまり、脂身の少ない「赤身の肉」が死亡リスクを高めているわけではなく、「赤く見える加工肉」が死亡リスクを高めていた、との結論及び考察になっています。

お肉好きのオッサンに朗報❗日本人は肉食でも死亡リスクは影響受けないよ❗

野菜嫌いの私のとって、「肉食は死亡リスクが高くなる」という話は放置しておくわけにはいかない重要な案件であり、しつこく調査をつづけました。

食生活の死亡リスクへの影響は人種的な影響も含むので、日本人を対象にした研究がないか探したところ、見つけました❗お肉好きのオッさんを喜ばせるような論文が。「Meat consumption in relation to mortality from cardiovascular disease among Japanese men and women」(European Journal of Clinical Nutrition 66, 687-693 (June 2012) | doi:10.1038)。この論文は日本人の男女における心血管系の死亡リスクと肉の消費量の関係を調べたものです。

ヨーロッパの論文に比べると対象人数が5万人程度なので量としては弱い論文になりますが、数が多けりゃ質が高いことになるワケでもないので、肉好きなオッさん(もちろん女性も大歓迎❗)に受けを狙ってこの論文を取り上げます。結果から申し上げると1日100グラム程度の肉食であれば、死亡リスクに影響は無いとのことです。

俺は毎日もっと肉を食っている、と主張する方もいらっしゃるでしょうけど、昔日本で肉の消費量を聞き取り調査した時に、消費量を日本人の全てに当てはめて計算したら、日本のお肉市場の全流通量よりはるかに多かった、ということがありました。「肉食=高級食材を食べている」と考えられていた貧しい時代のデータだったので、皆さん見栄を張ったためにこんな結果がでてしまったのですね。多分、オッサンは肉料理として肉野菜炒めなどの他の食材で水増しされた食事を家計を握る奥様に提供されていますので、ヨーロッパの基準となった160グラムには達していない可能性が大です。

なぜ、赤肉は死亡リスクを高めるのか?

赤肉という表現は間違いで「赤い色をした加工肉」が正しい表現となります。加工肉は脂身の少ない赤い肉(フィレとかです)と比較して、加工工程で余分な動物性脂肪を多く含むようになり、さらにその加工という作業自体が発ガン性物質の増加につながっているのではないかと、ヨーロッパの約45万人を対象にした研究者たちは述べています。

肉食は死亡リスクを上昇させていなかった、という結果に喜んでいるオッサン(もちろん女性も大歓迎)ですが、非常に個人的なことになりますけど、私は肉(ステーキ・焼肉)も好物なのですけど、一番好きなものは「ベーコン」なのです。今後、ベーコンを食べるたびに「死に近づいている」と考えながら、生活していかなければなりません。

ベーコンは加工肉の中でも死亡リスクは高めない、という論文の登場を心待ちにしています。

見つけました❗ベーコンを食べると寿命が延びる、という論文⋯「朗報❗ベーコンを食べると寿命が延びる⁉という説のウソ・ホント」をご参照くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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