無症状病原体保有者からの感染問題、以前からあったけど解決策は無いかも⋯

更新日:

新型コロナの問題点は、治療薬がワクチンがまだ完成していない状況下において、ウイルスに感染しても症状の出る人と出ない人がいる上に、無症状の人が感染を拡大させている可能性があるという点です。

治療薬やワクチの開発が進めば事態は打開できそうですが現時点では決定的な解決策はないのではないでしょうか。

無症状病原体保有者が病原体を拡散していることが問題?

新型コロナのたちが悪いところは、無症状であっても第三者に感染させている可能性が現時点では無い、とは言い切れないこと。

ゴホゴホ咳をしている人はそれなりに気をつけるでしょうし、その周囲の人も映されないように注意をするはずです。無症状でありながら新型コロナ感染している、そのような状態を無症状病原体保有者と医学的には呼びます。

無症状病原体保有者、実は私が専門としている泌尿器科領域では以前から問題視されていました。例えば性行為によって感染するクラミジア感染症。

クラミジアは通常の顕微鏡検査でその存在を確認するにはサイズが小さすぎ、感染を確定診断するためにPCR検査が必要となるのです。

このクラミジア、実は無症状でありながら感染している無症状病原体保有者が多いことで泌尿器科医や産婦人科医を悩ませています。

妊婦さんの3-5%がクラミジアの無症状病原体保有者です。

クラミジアは性病です。性行為によって人から人に感染していく病気です。いま、新型コロナに関して、「接待を伴う飲食」とか「夜の街」などにおける集団感染が問題視されています。私が知る限りでは通常の接待を伴う飲食であろうと、漠然とした夜の街であってもクラミジアの感染は成立しません。

新型コロナの広がりによって、一般の方も見たり聞いたりする機会が増えた、どちらかというと地味な柄医療関係者としては常にそこから発信される情報に気をつけている専門機関として、国立感染症研究所があります。その国立感染症研究所の「性器クラミジア感染症とは」では驚くべきデータを目にすることができます。

 

妊婦検診において正常妊婦の3〜5%にクラミジア保有者がみられることから、自覚症状のな い感染者はかなりあるものと推測されている。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/423-chlamydia-std-intro.html

クラミジアと単純に比較することは問題があるかとは思いますが、新型コロナの感染率は抗体検査のデータを元にすれば、0.1%程度。

厚生労働省は6月16日、3都府県で計7950人を対象に実施した新型コロナ(ヘンテコなウイルス)抗体検査の結果を発表した。抗体陽性率は東京都で0.10%、大阪府で0.17%、宮城県で0.03%だった。

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202006/566064.html

と日経メディカルは報じています。

クラミジアの病原体保有者の方が、新型コロナに感染したであろうと思われる人の割合より多いのです。

クラミジアも新型コロナと同じように抗体検査をすることが可能です。しかし、抗体検査は過去にクラミジアに感染したことを示す検査であり、現在クラミジアに感染しているかを判定するにふさわしく無い検査であると医師は認識しているはずです。

性器クラミジア感染症は日本で最も多い性感染症(STD)

若い女性の13.4%がクラミジアに感染している

クラミジアの無症状病原体保有者の3-5%に驚いた人も多いでしょうけど、実は若い女性の13.4%がクラミジアに感染していた、との驚くべき調査結果もあります。

画像

日本化学療法学会「高校生のクラミジア感染症の蔓延状況と予防対策」http://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/05502/055020135.pdf

論文中では無症候性クラミジアとの言葉が使われていますが、無症状病原体保有者と同じことを意味しています。

クラミジアに感染した若い女性も、どこで感染したのか記憶にない場合もあるでしょうし、不特性多数と性行為をしていれば、いつ感染したのかもあやふやになります。

いま巷で囁かれている「感染経路不明」と同じです。

クラミジア感染症の場合、他の病気で抗菌薬を服用していると感染したことに気が付かないで、自分で治療したことも気が付かないで感染症が治ってしまうこともあります。

無症状のまま、病原体を保有し続けてしまうと⋯。

性感染症の一つであるクラミジアと新型コロナの無症状病原体保有者を同じように語るのはどうなの?という疑問が無いわけじゃないです。

しかし、クラミジアに感染していて症状が出ないといって放置していると大問題が発生します。

クラミジア感染を放置しておくと、女性の場合は子宮頸管炎・卵管炎・卵巣炎・骨盤腹膜炎になることもあります。さらにクラミジア感染によって肝周囲炎まで引き起こされる可能性があるのです。

画像

さらにクラミジア感染は不妊症の原因にもなりえます。

症状がでないクラミジアの無症状病原体保有者、当然、性行為によって第三者に感染を拡大させてしまいます。

だからといって国民全員にクラミジアのPCR検査を行なうことが良いことである、との認識を持っている人は稀なのではないでしょうか?

無症状病原体保有者問題、もう一度ゆっくり考えましょう!

新型コロナは死者もでる感染症だから、バンバン検査を行なう、これは果たして正しい考え方なのでしょうか?

以前からクラミジアは無症状病原体がいて、感染すると重篤な病気になる可能性もありますし、次世代というか少子化の原因にもなりかねないものであったとしても、感染者を追いかけ、つまり感染経路を特定することは行っていません。

【夜の街クラスター】感染経路不明は別の病気で以前からあったような気が⋯。

【夜の街クラスター】感染経路不明は別の病気で以前からあったような気が⋯。

クラミジアの検査を夜の街中心であろうと、飲食を伴う接待方面を中心に検査をしたらどうなるでしょうか?若い女性の13.8%より高い感染率が結果となるかもしれませんし、あるいは妊婦さんの感染率と同じくらいの3-5%かもしれませんし、それより低い場合も高い場合もありえます。

クラミジアは新型コロナ関連で言われているところ以上の濃厚接触によって感染しますし、夜の街が中心となって感染することも少なく無いです。

新型コロナの無症状病原体保有者が感染を拡大させているのか否かを明確にした論文はありません。クラミジアの場合は無症状病原体保有者から、もちろん感染します。なのになぜか、新型コロナに関しては無症状の人から感染することが前提として、感染対応策を伝えるコメンテーターが目立ってしかたのない今日このごろです。

無症状病原体保有者は感染させようとして感染させているわけでは無いことに十分な注意を払ってコメントして頂きたいです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・形成外科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
木・日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック