主婦向けサイトに蚊を撃退するために、消毒用アルコールを噴霧すると良い、と書かれた記事がありました。
消毒用アルコールは消防法上は危険物第4類であり、引火性液体とされています。そもそも消毒用アルコールは空間に噴霧して使用することは想定されていません。くれぐれもご注意ください。
本記事の内容
アルコールスプレーで撃退、これってかなりリスキーなのでは?
2020年7月、相変わらず医療機関であっても消毒用アルコールが不足しています。そんなこんなの夏に気になる人がかなり気になるのは「蚊」。
蚊を退治するために、アルコールスプレーを使用しているゴージャスな主婦がいるようです。
この記事で気になったことがあります。
- なんで殺虫剤の代わりに、現在不足しているアルコールスプレーで蚊やコバエを撃退しているのか?
- アルコールスプレーを吸入したら、危険なんじゃないのか?
- アルコールってそもそも引火性液体じゃなかったっけ?
以上の3点です。
こどもが喘息であるので、殺虫剤は使用できないからアルコールスプレーで蚊を撃退?
前掲「ESSE online」の記事中に
わが家は子どもが喘息もちなので、蚊取り線香が使えません。人によるかもしれませんが医者からNGが出ています。
と書かれていますので、整理収納アドバイザーであるこの方の家庭では蚊取り線香は使用できない、そのためにアルコールスプレーで蚊やコバエ退治をしているようです。
蚊取り線香の成分はピレスロイド系が中心となっています。ピレスロイドによってアレルギーが起きたと考えられる症例報告はいくつかあります。「家庭用ピレスロイド殺虫剤が原因と考えられた意識消失発作と蕁麻疹様紅斑合併の男性例」(西日本皮膚科/76 巻 (2014) 4 号)や「花卉栽培者の農薬曝露調査」(日本農村医学会雑誌/64 巻 (2015) 4 号)などです。
一方でMSDマニュアル家庭版の「殺虫剤中毒」の項目では
ピレトリン系はアレルギー反応を引き起こすことがあります。ピレスロイド系はめったに問題を引き起こしません。
https://msdmnls.co/3iqIxOB
と書かれています。蚊取り線香の煙に含まれる殺虫成分以外で喘息が起きてしまうのですね。
品不足のアルコールスプレーで蚊を退治しないで、アースノーマットやベープマットを使えば良いような気もしないではありません。例えばアースノーマットに関してメーカーのサイトはこのように説明しています。
蚊の体重は2~3mgほどしかありませんが、「アースノーマット」シリーズは、小さな害虫を駆除するために極めて微量な殺虫成分しか使用していません。人は害虫と比べると数千万倍も体重があるため、体重差の面からも安全性が高いといえます。
https://www.earth.jp/nomat/safety/
私の妻子は喘息持ちなのですが、合理的に考えてアースノーマットを使用しています(※個人の意見です)。
ひと夏を30日用アースノーマットで過ごそうという、強引な家人に変わってこっそりと90日用に入れ替える、私はなんて優しい夫なんだろう(笑)
アルコールスプレーを吸引したら危険なんじゃないの?
以前から、空間除菌グッズというものがあり、「先生、クレベリンって効果ありますよね?」との質問をしばしば受けたことを経験しています。
そんな素朴な疑問に対して、私は
「消毒用アルコールが除菌効果があっても、噴霧はしないよね?部屋中にアルコールは撒いて使わないよね」を定型文的に使用しています。
整理収納アドバイザーの方の記事で蚊を見かけた場合、
見かけると大騒ぎしていた子どもたちが、自分でやっつけてくれるようになりました。シュッシュとあちこちに振りまいても大丈夫。揮発するので、すぐに乾きます。
https://esse-online.jp/housework/238206
と書かれていて、かなり気になりました。
この方が使用しているアルコールスプレーは「パストリーゼ」という商品名でアルコール分77%です。
子どもさん達が何歳なのかは不明ですが、霧状になったアルコールを万が一吸入したらリスキーなんじゃないの、と余計なお世話というか心配をしてしまいました。
消毒用アルコール(エタノールと同じ)の子どもの経口致死量は体重1キロあたり3.6ml程度。子どもの体重が10キロだと36mlであり、パストリーゼの濃度を考えると47ml近く引用しない限りは死には至らない計算になります。
まあ、小学校くらいのお子さんであれば、致死量のパストリーゼを飲んでしまう危険性は無いと考えて良いと思います。
しかし、噴霧した場合、霧状になったアルコールは飲むよりは呼吸器系の粘膜からの吸収性が高まってしまうような気もするのです。
消毒用アルコールをヒトが吸入した場合の危険レベルはどのくらいなのでしょうか?残念ながら人体実験の結果を見つけることはできませんでした(そりゃそうだよね、そんな実験は倫理上許されないからね)。
マウスの場合は39g/m3/4時間がLC50(半数致死濃度のようです)。
健栄製薬の消毒剤は医療機関で使用されていますので、このデータの信頼度は高いと考えられます。
1立方メートルあたりに、エタノールが39g含まれる空間で4時間過ごすとマウスの半数が急性毒性によって死亡する、ということを意味しています。
パストリーゼ1本を部屋中に噴霧しても、よっぽど小さな部屋に長時間滞在しない限り急性毒性は心配無し、と考えて良さそうです。
みなさん、気軽にアルコール消毒を使っているけど、引火には要注意
アルコールが燃えやすい物質であることは常識ですよね。消毒用アルコールであっても、消防法上は危険物と考えられています。
整理収納アドバイザーの方が蚊を撃退するために使っているパストリーゼは77%のアルコール濃度ですから、当然危険物であり引火する可能性があります。
こんな記事を見つけました。
2020/03/21 中国の会社事務所でエタノールで消毒後に火災中国・江蘇省蘇州市の会社事務所でエタノール濃度75%の消毒液を使用した定期消毒作業後に火災が起きた。
https://sanpo.aist-riss.jp/riscadnews/riscadupdate/2020/04/p5985/
エタノール(アルコールのこと)を事務所内に噴霧したところ延長コードがショートして火災が発生したとのことです。
消毒用アルコールは消防法上の危険物第4類であり、引火性液体です。
気化したアルコールが空気と混じり合うと可燃性気体となり、ちょっとした火によって引火しますし、下手すりゃ爆発します。
そもそも、消毒用アルコールは空間に噴霧して使用することは想定されていません。
蚊を撃退するために、消毒用アルコールを使用することは控えた方が賢明だと思います。
アルコールと蚊についての関連ブログ。
お時間がある方はどうーぞ。