正しい耳かきの仕方では綿棒を耳の中に入れるのはNGです。綿棒は外耳道に入れることなく、外耳周辺を優しく綺麗にするために使用するのが医学的に正解です。耳垢には役割があります。耳垢によって外耳道と鼓膜は守られています。そして耳垢は自然と外に排出されます。
本記事の内容
意外と知られていない正しい耳掃除の方法と綿棒の使い方
花粉症の時期になると耳の中がかゆい、という症状が出る患者さんがいます。そんな時かゆみ止めの塗り薬を処方して、耳鼻科の専門医にメチャクチャ怒られた経験をもつ私です。それもそのはず、耳の穴(外耳道)って気軽に素人がいじってはならない領域のようで、正しい耳掃除の仕方をご存知の方はゴクゴク少数だと思います。
正しい耳かき方法は綿棒を耳に入れてはいけない!?
実は綿棒で耳かきしてはいけないという予想外の話を見つけましたのでご紹介します。
英語では耳垢、別名耳く◯はEar Wax と呼びます。
綿棒を耳の中に入れてはいけません、と綿棒会社も警告しています
綿棒で耳掃除をするとき、自然に耳の穴に綿棒を突っ込みますよね、ゴシゴシって感じで耳掃除をしますよね、それって本当はいけないんです。耳掃除に使われる綿棒のQ-tipsという海外ではもっともポピュラーなメーカーのサイトよると
「Cleaning Your Ears Safely」⋯To clean your ears, stroke Q-tips ® cotton swabs gently around the outer ear, without entering the ear canal.
綿棒は外耳道に入れることなく、外耳周辺を優しく綺麗にしてねとのこと。
つまり、綿棒って耳の穴に入れてはいけない、ということなんです。えええってほとんどの方が思われたでしょうけど、綿棒って耳の外側を掃除するためのものであり、耳の中を掃除するものじゃなかった、耳かきに使用してはいけない代物だったんです。
なぜ、耳かきをしてはいけないのか?
Douglas Backousという耳鼻科の医師はHuffington Post上で貴重な意見をのべています。タイトルは「This Will Make You Never, Ever Want To Clean Your Ears Again」であり、「この話を聞いたら、あなたは決して耳掃除を二度としなくなるでしょう」ということです。
その理由として
・耳垢(耳◯そ、英語ではEar Wax)は外耳道を守っている
・耳垢自体が汚れから鼓膜を守っている
・耳自体が自然に耳垢を外に排出する
とのことです。要は耳掃除・耳かきなんかしないでも耳垢は自然と外に排出されるし、せっかく耳の穴(外耳道)を守ってくれている耳垢をわざわざ取り除くなんてとんでも無いことだ❗とお怒りの様子です(私が耳がかゆいといった患者さんにかゆみ止めの塗り薬を処方して怒った耳鼻科医の姿が頭にトラウマ的に浮かび上がってきました)。
耳垢は自然と排出されるメカニズムがあるんで、耳かきは不要なだけでなくマイナス
この怒る耳鼻科医によれば (実際に怒りながら話したかは、記事で写真は無いので、空想ではありますけど
綿棒を耳の穴に入れると、逆に耳垢を奥に押し込んでいる
ことになるそうです(日本古来の耳掃除の耳かき棒は書き出す形状なんで、ちょっと違う気もします)。この耳垢を故意に押し込んでしまう綿棒による作業は耳垢で外耳道を詰まらせることもあり(普通はそんなに耳垢を溜め込まないですよね)、下手をすると鼓膜を傷つけ難聴になることもある、と言っています。だから耳掃除は耳の中までならない、という主張になるのです。
American Academy of Otolaryngology— Head and Neck Surgeryという学会によると
過剰な耳垢は通常食べ物を噛むための顎の動きによって補助自動的外耳道から外側に移動し、耳垢は汚れ、ほこり、および外耳道の他の小さい粒子を含んで自然に排泄される、というメカニズムが備わっているそうです。
原文
Any excessive cerumen normally migrates out of the ear canal automatically, assisted by motion of the jaw (e.g., chewing) , and carries with it dirt, dust, and other small particles in the ear canal.
American Academy of Otolaryngology— Head and Neck Surgery「AAO-HNSF Clinical Practice Guideline: Earwax Removal」より
AAO-HNSFというのはAmerican Academy of Otolaryngology— Head and Neck Surgeryの頭文字をとった略号でガイドラインとして書かれていますので、学会の公式声明と捉えて間違いありません。
しかし、食べ物を噛むたびに耳垢が外耳道から自然と排出するところなんて、誰も見たくないですよね❗
じゃあ、正しい耳かき方法はどうすればいいの?
「先生、耳垢をとってください」と気軽に耳鼻科を受診するのが正解なんでしょうけど、「はい、はーい」と気軽に対応してくれる耳鼻科医はまずいないのではないしょうか?ガイドラインによれば外耳道を80パーセント以上占有する耳垢は難聴を引き起こす可能性がある、と書かれています。原文
erumen may cause reversible hearing loss when it blocks 80 percent or more of the ear canal diameter.
耳の聞こえが悪くなったら、耳垢を日本古来の掻き出し式の耳かき棒で掻き出し、耳の外側は優しく綿棒でふき取る、といった方法が考えらえます。しかし、普通耳の聞こえが悪くなるほど、耳垢を溜め込む人っているのかなぁ?
耳鼻科の学会が強くガイドラインで表明しているので、綿棒会社としては綿棒は耳の中には突っ込まないでね、というしかありません。しかし、どう見ても耳の中に綿棒を入れて耳掃除をしやすくしている形状の綿棒もあります、このギザギザはどうみても大量に確実に耳垢を取るための細工としか考えらえないのですが⋯。
左が大人用、右のギザギザ付きがベビー用なんで、これで赤ちゃんの耳掃除をしたら、AAO-HNSFが主張するのが正しいのならば耳のトラブルを起こしまくる可能性があります。Douglas Backous医師が推奨する耳掃除の仕方は
酢を1、消毒用アルコールを1、水を1の割合で混ぜたものを、耳の穴に数滴垂らす
という、まさにおばあちゃんの知恵的方法を洗浄方法として述べています.
原文
A few drops in each ear of a mixture of one part white vinegar, one part rubbing alcohol and one part tap water at body temperature should do the trick.
耳におばあちゃんの知恵的液体を垂らす方法はトラブル起こしまくりのデトックス法のイヤーキャンドルのようで、私には抵抗があります。後輩の大学病院の偉い耳鼻科医を訪れて「耳垢とってくれない」と、「耳垢除去保険点数25点」を嫌がる後輩に強制的に治療してもらう、って方法もありますが、重篤な耳鼻咽喉科領域の病気で長時間お待ちしている患者さんの迷惑になります。私は日本古来の耳かき棒で耳垢を優しく除去して、外耳は綿棒でそれも優しくふき取る方法を採用します。
耳垢を自然に排出するメカニズムを利用して、食事の度に耳から耳垢を排出してこぼれ出していたら、誰も今後一緒に食事をしてくれないのは火を見るよりも明らかですからね。