福島原発事故の食品への影響を騒ぐ人がいるけど、放射性物質の影響は最大でも基準の9分の1なんだけど

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当店の食材は放射能の影響を受けてません❗というのを売りにしたベクレルフリーレストランがまだ増殖中のようです。

もちろん、食べ物ですから万が一放射性物質が混入していたら、内部被曝になりますので誰でも放射能に汚染されていない(本当は放射性物質か放射線で汚染というべきかな?)食材を選ぶ必要はあります。

ベクレルフリーを売りにしたレストランへの違和感

今現在問題となっている放射線は自然に被曝するものではなく、あの福島第一原子力発電所関連です。原発事故の影響を受けていない食材を選別して使用している「ベクレルフリーレストラン」って意味あるんでしょうか?なぜなら放射性物質をたっぷり含んだ食材が市場に出回っているのですか、現在2015年時点で(関連エントリー 「無添加の食べ物って体に良いのよね〜❗」って本当か??ベクレルフリーの謎⁉

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もちろん誰でも放射性物質に汚染されていない食材を食べたいと思いますけど、あえて放射性物質に汚染されていないことを強く表示して、それを売りにするレストランってどうなんでしょうね?

今現在は通常のルートでは放射性物質に極端に汚染された食材はほとんど見受けられない状況であるのに、ベクレルフリーを売りにしたレストラン等の商法はビジネスの差別化ではなく、単に差別じゃないの、と考えてしまいます(関連エントリー ベクレルフリーってビジネス上の差別化じゃなくて、非科学的な差別に繋がる危険があるんじゃないかな?)。

政府や見えない巨大陰謀組織によって、原発事故が起こっても被害が公開されない、福島ではがんになってしまう人が多発している、被曝の影響で鼻血を出す人が増加している事実が隠されている、などのいい加減な情報を極端な反原発派、あるいはあっち側にイっちゃった人(医師にもいます)やネット情報を自分で調べ確認しない人は信じて、また情報を無責任に拡散しています(関連エントリー 福島で子供に「甲状腺がん」が発見された、という記事は冷静に考える必要があります)。

気になる食材の放射性物質による汚染は現在どのくらいの線量が測定されていて、その線量で果たして健康を害することがありえるのか、について冷静にお伝えします。

私に原発推進派の御用医師という名誉を与えてくれている、あっちにいっちゃった派の方の反論も匿名以外はおつきあいいたします。

現時点の放射性セシウム134の検出量は基準値の9分の1です❗

「原子力災害後の食品摂取による放射線曝露への対策と現状」というシンポジウムが第73回日本公衆衛生学会総会で行われました。公衆衛生学会が国や東京電力、あるいは巨大陰謀組織に操られている、って話は無しにしてください。閉鎖された学会ではありませんし、非会員でも会費さえ払えば学会に顔をだすことができます。

ここで発表された論題やシンポジウムでの発言は医学系の情報誌にも掲載されますし、ネット上でも確認することが可能です。この事実を知った人の全てを陰謀組織が買収や脅すことで事実を公にしない、なんてことは不可能ですよね〜、「99%の人が知らない秘密」的な本の信者の方も。笑 ちなみに世界中の人口は60億人程度ですから、真実を1%の人が知ったとしても6000万人、日本の人口の半分は知っている計算になりますので、それって「秘密」っていえるんでしょうか?

この会で国立保健医療科学院生活環境研究部特命上席主任研究員から

1日の食事に含まれる原発事故由来の放射性セシウム134は検出はされているけど、一般食品の基準値の9分の1だった

との報告がありました。「国立保健医療科学院生活環境研究部特命上席主任研究員」という肩書き、いかにも政府に抱え込まれた御用学者的な名称ですから、ひょっとして嘘の報告をしている可能性もあります。

もし、この主任研究員が政府や原発推進を強行しようと考えている巨大陰謀組織の回し者ならば、一般食品の基準値を上回った食品を是非教えてくださいね、あっちにいっちゃった派の方。その場合は他の放射線物質はやめておきましょうね、放射性セシウム134限定でお願いします。この放射性セシウム134という放射性物質は原発事故の場合に特徴的に増加する物質ですから、原発事故の被曝の状況、放射性物質の飛散の状況を表すことのできる指標になります。

誤記訂正 放射性セシウム、と記すべきところをセシウム134と記して混乱を招いたことをお詫びします。この調査ではセシウム137、セシウム134を合わせて放射性セシウムとしています。

調査方法に問題、インチキがあって事実を隠している、と思われる方へ

調査方法に問題がある、とケチをつける方をあっちにいちゃった自称専門家の中に多く見受けらえます。そのようなケチをつける方はどのような調査方法であれば、正しい調査方法であるかをご提示いただいてから意見をくださいませ。

この調査は2013年3月と2013年の9月から11月にかけて2回行われました。どんなものを食べたかという自己申告制ではなく、実際に食べたものを同じものを用意して放射性物質の量を測定しました。対象とした人数がかなり少ないために、ベクレルフリー一派に指摘される可能性がありますが、これはサンプリング調査と考えてください。統計学上の異常値を見つける、あるいは統計学上における関連性、相関関係を見つけるための調査研究ではありませんので。

原発の被害地域と認識されている県だけではなく、北は北海道、もちろん東京、そして南は高知にまでおよぶ広い範囲でセシウム、プルトニウムの含有量を調べています。

自然界に存在する放射性物質としてはカリウム40、ポロニウム210が測定されています。ようするに東北3県を含んだ10都道府県で通常の生活を送っていたら、どれだけの放射性物質を食物として体内に取り入れてしまうことになるか?を調査したものになります。もちろん福島原発の影響は調査した都道府県全部で認められました。

しかし、その測定値はもっとも高濃度であったところ(あえて市の名前は伏せます⋯バカな風説を撒き散らす、心ない人がいるのが現状ですから)の幼児が食べている原発事故特有の放射性物質セシウム134でさえ、1キログラムあたりのベクレルは一般食品で規制されている量の9分の1にしかならなかったのです(実測値は最高で11.3Bq/kg)。

この場合、健康面に影響を及ぼす放射性物質を食べてしまう危険はない、と通常判断します。

そもそのベクレルの許容範囲が間違っている、との考えをする方へ

国が公表しているベクレルの基準値自体が間違っている、という意見もありますが、そのような主張をする方は何ベクレルなら安全か、という基準値をご提示ください。ノンベクレル、ベクレルフリー、つまりベクレル0っていうのは無しにしてくださいね、現時点でベクレルは1くらいまでしか測定できませんので。

まず、ベクレルに対する正しい知識を持ちましょう。ベクレルは一秒間に崩壊する原子核の数を表していて、ベクレルが1ということは一秒間に原子核がひとつ崩壊するということです。崩壊する数が多ければ多いほど放射性物質として周囲に影響を与えます。でも、ベクレルだけでは体に対する影響は予想できません。

ベクレルはあくまで放射性物質の強さであって、例えば体内に放射性物質が入り込んだ場合の被曝の程度を知るためには放射線量の総量が問題になるのです。実際に食べてしまった放射線物質が全て体内に取り込まれるわけではありませんし、食べてしまった放射性物質がどのくらいの時間体内に留まるのか、放射線物質が体内でどれだけの量の放射線を発生しているのか、その放射された放射線がどのくらい体内へ吸収されるか、などを計算にいれないといけません。

セシウムの場合は筋肉に90%蓄積されることが知られています。あとセシウムの場合はベクレルから人体に影響を与えるシーベルトへ係数を使用することで、簡単に放射線量(実際に体に影響を与える量)を計算できます。

セシウムのベクレル×0.013=マイクロシーベルト

という式が成り立ちます。
追記 これはセシウム137の場合でした。セシウム134の場合はベクレル×0.019です。
100ベクレル(一般の食品の放射性物質の一キロあたりの基準値)×0.11(基準値の9分の1ですから)×0.013=0.143マイクロシーベルト
の放射線を被曝した計算になります。

追記 セシウム134の場合は100×0.11×0.019=0.209マイクロシーベルト

食べ物として取り入れても健康面に以上を来さない量はセシウムの場合、年間1ミリシーベルトが上限値になっていますので、今回のこのデータを検出した食品を365日食べ続けた場合
0.143マイクロシーベルト×365=52.195マイクロシーベルト=0.052ミリシーベルト
となって、基準の19分の1にしかなりません⋯つまり安全なんです(本来はもう少し複雑な計算式で預託実効線量というのを導くのですが、しそれでも73マイクロシーベルト⋯0.073ミリシーベルトにしかなりません)。

追記 これもセシウム134で計算すると76.29マイクロシーベルトで0.076ミリシーベルトになります。それでも基準値の13分の1であり健康を害するレベルには達しません。

ベクレルフリーレストランの方は単に放射性物質の強さだけを測定して、一喜一憂しているようにしか受け止められませんが、ベクレルとシーベルトの違いもわかっていない人が多いのではないか、と勝手に予想させていただきます。まずはベクレルフリー、ノンベクレルと繰り返す前に、放射線の影響を測定するシーベルトを計算してくださいませ❗

物理の専門家の方へ 医学知識で説明すると、このような内容になりますが、原子物理学の専門家として、内容に間違いがあったらぜひコッソリとお教えくださいませ、ペコリ。

追記 
1:なにを言いたいのか不明、というご意見をいただきました。まず、普通に手にいれることができる食材を使用しても健康を害するレベルの放射性物質に汚染される内部被曝の危険は現時点の基準では無い、ということです。ですからあえて「ベクレルフリー」とか「ノンベクレル」を主張する必要性は無いと言いたいのです。食材のベクレルを意識することは自由ですし、自主的にベクレルを測定して食材を提供するレストランの存在を否定するわけではありません。ベクレルフリーを主張する場合、すべての食材を測定したのか、サンプリングで測定したのかも不明ですし、そんなことしないでも健康は損なわないので、なぜあえてベクレルフリーを強調する必要性があるのか、ということを不思議に思っています。
2:放射性物質は距離に反比例して弱まる、ベクレルがなんでシーベルトになるんだ、というご意見をいただきました。内部被曝ですから、距離は関係ありません。またベクレルをシーベルトに換算する方法は放射性物質を経口摂取した時の内部被曝を知るために、使用される一般的な計算式です。
3:がんの治療で放射線を使うんだから、放射線は有害である、というご意見をいただきました。もちろん放射線は人体に有害ですが、自然な環境でも放射線に被曝しています。また、医療現場で使用される単位のグレイはシーベルトに換算できます。「グレイ×放射線加重係数×組織加重係数=シーベルト」という式で導かれます。100ミリシーベルト以下であれば人体に影響は無い、と考えられています。しかし、低線量放射線による長期的なデータの蓄積は十分ではありませんので、現時点でも今後も多くの研究機関がデータの収集を継続しています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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