バナナはあの食べやすい形状と甘みによって「俺ってバナナ嫌いなんだよね」という人は滅多にいないのではないでしょうか。
以前、バナナダイエットなるものがありましたが(残念ながら過去形か?)、バナナに花粉症を改善する効果がある、という記事を見かけました。さらにはバナナの美白効果に注目をした記事もありました。
バナナは女性にとって夢のスーパーフルーツ?
これが本当ならバナナはダイエット効果、美白効果、さらに花粉症対策に効果的という一石二鳥どころではなく、一石三鳥のすぐれた果物だ、と言えることになります。
しかし、バナナが花粉症対策に効果を発揮するという話は初めて知りましたので、かなり疑った心を持ちながら(これだから女性目線が足りない、女性の気持ちがわからない的なご意見をいただくわけなんですけど)、じっくりと検証を行っていきます。
もちろん、バナナの美白効果・ダイエット効果も同じスタンスで検証していきますね。
バナナ花粉症対策になる説の根拠
見直しました!花粉症防いで美白も叶える⋯「バナナ」がスゴイというタイトルの記事が女性に人気のある「美レンジャー」に掲載されています。このようなタイトルと内容だと女性受けする、女性目線に立った記事であることは十分理解できるんですけど、どうしても疑ってしまう私のようなスタンスは女性からあまり支持されないんでしょうね(涙)。この記事はこのようことが書かれています。バナナには意外なことに、花粉症予防効果があり、さらにシミやしわ対策にも使える万能食材と言われているんです。
今回は、思わずバナナを常備したくなる、バナナの隠れたパワーとその活用術をご紹介しましょう。整腸作用だけを目的に、バナナを食べる時代はもう終わりですよ。
バナナに花粉症予防効果がある❗
ってことは本当に初めて今回のこの記事でしりました。医師免許を持つものとして新しい治療法に興味を持つのは自然のことですし、きっと来週の診察で「先生、バナナって花粉症に効果があるんですよね」(バナナは花粉症の効果があると確信して、再確認する強い意志をもった方の質問はこんな感じの尋ね方をします)。
この記事はこのように書かれています。
バナナを1日約2本食べ続けると、花粉症のくしゃみの症状が緩和されることが実験でわかっています。特に、35歳以下の症状が軽い人の、症状悪化を抑える効果が高いとみられています。
バナナが花粉症の予防になる、ということを裏付ける医学論文を発見しました❗
女性向けの軽い読み物ですから、バナナ2本が花粉症のくしゃみを緩和する実験の詳細はもちろん、元となった文献・論文は表記されていません。こんな裏付けのない話は信用に値しない、なんて偉〜い先生のような態度はとらないで、女性に親切をモットーとする私は元となっていると思われる医学論文を見つけました、少しでも女性の支持を得られるように。笑
「Melon and banana sensitivity coincident with ragweed pollinosis.」(J Allergy. 1970 May;45 (5) :310-9.)という論文がバナナが花粉症対策になる、という話の根拠となっていることが強く予想されます。
この論文のタイトルをバイアスがかからないようにグーグル翻訳にかけますと「メロンとバナナ感度はブタクサ花粉症と一致する。」となります。でも、この論文だとバナナやメロンのアレルギーがある人は、ブタクサによる花粉症も持病として持ち合わせている、という内容でバナナが花粉症対策になる、という話をはかけ離れてしまいます。
今度は素直に日本語で「バナナ 花粉症」とキーワードを入れて(前述の論文を見つけるためには花粉症に対して思い当たるキーワードを英語で入れたのが失敗だったようで)検索すると、なーんだ簡単に日本語の記事が見つかりました。「バナナ大学」というサイトの中に「バナナのスギ花粉症予防効果(研究紹介)」というページがありました。筑波大学付属病院とその関連施設で行われた実験です。
花粉症である人を二つのグループに分けて、片方はバナナを食べてもらい、もう片方のグループはバナナを食べないでスギ花粉の時期にくしゃみがどれだけ緩和されたかを検討した実験です。
バナナを食べてもらったグループは2月上旬から3月の8週間にわたって朝・夕にバナナ一本ずつつ摂取しています⋯だから「バナナ2本で花粉症対策」ってことになるんですね。このグラフから読み取れることは、スギ花粉症のシーズンが本格化するとバナナを食べようが、食べまいがくしゃみの回数は増えています。しかし、バナナを食べ続けているグループの方が3回目の効果判定時には明らかに花粉症の一症状である「くしゃみ」の症状は減っています。
この数字はあくまでくしゃみの判定を「症状なし・軽い・やや重い・重い・非常に重い」の5段階の分けて、自主申告制で評価してもらったものです。評価2は「やや重い」に相当し、評価1は「軽い」に相当しますので、バナナを1日2本8週間にわたって食べていた人の評価は1.5であり、バナナを全く食べなかった人は評価2ですから、明らかにバナナが花粉症の症状を抑えていた、と言えますね❗⋯あのー、言いにくいんですけど科学的および統計学的に実はこれは言えないのです。
バナナが花粉症対策になるという説の問題点
まず、花粉症経験者は知っていることですが、スギ花粉をどれだけ浴びてしまったか、によって花粉症の症状は違ってきます。ゴーグルを使用して、マスク装着によって花粉症の症状を抑えることができるますよね。
・問題点1
この実験ではこのようなマスクなどによる花粉症対策をしたか、しないか、は明記されていません。
ある人はゴーグル・マスクなどで厳重に花粉が体に付着したり、吸入しないように気をつけていれば当然花粉症の一症状であるくしゃみの回数は減っていたでしょう。
・問題点2
実験の対象になった方の居住地が明らかになっていません。
場所によってスギ花粉が散布される量は変わってきますし、スギ花粉の飛散量は毎日の天気、特に風向きに左右されます。ひょっとしたら、バナナを食べてくしゃみの症状が緩和された人なかで、数人がスギ花粉が大量に飛散することが予想された日に外出をしていなかったら当然、くしゃみの症状はあまりでないことになります。なんせ症例数はバナナを食べたグループと食べないグループで26人ずつしかいないのですから、数人の行動パターンが結果に大きな影響を与えます。
・問題点3
あくまで評価は自己申告
このように評価を他覚的な判断ではなく、自分の感じる基準で判断する場合「実験者効果」や「観察者効果」というバイアスが生じます。研究者が求める結果を出したいという深層心理的なものが被験者におこってしまって、研究者が求める結果がでるように、気づかないうちに協力してしてしまうのです。また研究者側も自分のもとめる結果を意識しないでも被験者に伝えてしまうことや、無意識下で自分の研究に有利な結果にスポットを当ててしまうのです。
以上の三点がこの「バナナ2本を食べると花粉症対策になる」という説を科学的・統計学的な見地からは強く支持できない理由になってしまいます。
美白とダイエットについても書くつもりでしたが、長文になりましたので、美白は次回、ダイエットは次々回のブログにその検証を書きますね❗お楽しみに⋯こんな理屈っぽい話は誰もお楽しみに待ってくれないかも(泣)。