一家庭2枚配布されたアベノマスク。異物が混入して不潔❗との話が出回っていました。
医学的に言うところの清潔・不潔と一般の方が考える清潔・不潔の違いをアベノマスクを使った実験でご説明します。
本記事の内容
実験してみました、汚れていても医学上は清潔なアベノマスク。
アベノマスクと呼ばれるガーゼマスクが国から配布されました。ガーゼマスクや布マスクがウイルス感染にどのような機能を果たすのかについては議論の余地があります。アベノマスクがどのような経緯で国民に配布されたのかについても様々な報道があります。
一つだけ言っておきたいことは、見た目が汚くても医学上は清潔である、と判断されることがあるということ。
アベノマスクが医学的に汚染された状態、つまりバイキン類が付着していて健康に悪影響があるのか、培養検査という方法で確認してみました。
思想信条に関わりなく、医学的清潔不潔はゆるぎません。
少しでも安倍政権を擁護するような発言をすると、「ネトウヨだー❗」と言われてしまう傾向が無くもないです。反対に安倍政権にケチを付ける発言に関しては「パヨク認定」されてしまう今日このごろ。
こんなブログ記事を書いた私は一部にネトウヨ認定されてしまいました。
こんな考え方もできるよ、との真意を理解してもらえなかったようです。
政治的な思想信条に科学は左右されませんし、医学はゆらいではいけません。
このような記事を見かけました。
「そのマスク、清潔? 家に届いた実物を調べてみると⋯」海堂尊の死ぬまで生きる (5) 「アベノマスク」の危険性について
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO60088530Y0A600C2000000/
清潔不潔の概念は医師、特に手術室では徹底的に教え込まれました。「センセイー、それ不潔」とか看護師に言われると、「朝にしっかりシャワー浴びてきたのに」って感じでオドオドしてしまう研修医時代を思い出しました。
医学的な清潔・不潔と一般に考えられている綺麗・汚いは全くの別物と考えて下さい。
コーヒーをこぼしてシミがついた白衣であってもしっかり洗浄されていれば清潔、真っ白なシャツであってもバイキンが付着している可能性のあるものは不潔。
ざっくりですが、これが医学的な清潔・不潔の概念です。
アベノマスク、いっけん異物が付着して不潔なようにも見えるけど。
海堂尊氏の記事にあるアベノマスクは、たしかに汚れが見えます。これがゴミであったとしても、微生物が検出されない限り、医学的には清潔と考えるのが医師なんじゃないかなあ。
私の持っているアベノマスクもゴミ様のものが見えましたが、マスクを構成する繊維の一部がほつれたものだと思われました。
異物といえば異物だけど、拡大しないと見えないレベル。
そこで私は手元にあるアベノマスクでこんな実験を実施してみました。
アベノマスクを滅菌スピッツに入れて、生理食塩水につけてみました。アベノマスク水溶液を検査機関に提出して、異物が混入しているかの顕微鏡検査および培養検査を実施してみたら⋯。
アベノマスクは医学的には清潔でした❗との結論に。
中学校レベルの実験ではありますが、アベノマスクをいじるときは滅菌されたハサミとピンセットを使用しました。
医療機関を受診して「バイキンがいないか検査しておきますね」レベルは担保してあります。
その結果がこれ。
アベノマスク水溶液を作成したのは、水溶液中に細菌類や真菌類や白血球などが混じっていないか、沈渣を見てみたかったからです。
検査機関からは「繊維様のものが見えましたが、報告書に記入しますか?」との問い合わせがありましたが、必要なしと回答しました(余計な迷惑を検査機関にかけたくなかったので)。
赤血球・白血球は確認されていません。カビや一般細菌類で顕微鏡で確認できるものは、この報告書に「細菌+」とか「真菌+」とかの表記で報告されます。
さらにアベノマスク由来の水溶液を培養してみた結果がこれです。顕微鏡で沈渣の観察だけでなく、微生物が付着していた場合、培養検査をすれば細菌の種類も鑑別可能です。
赤枠を拡大しのがこれ↓
培養によって一般細菌(-)、真菌(-)と書かれていますよね。
アベノマスクを漬けた作成した水溶液には一般細菌も真菌(カビ類)も含まれていないことが培養検査によって確認されました(ウイルス等のメチャクチャ小さい微生物の検出は培養では無理)。ちなみに、検尿用の紙コップの内部を指で触ったりした場合は、検出された菌類の名称が記載されて報告されます(入り込んでしまった異物や細菌をコンタミと私達医師は呼びます)。
海堂氏は述べています。
「アベノマスク」は衛生上、大変不潔なものだという評判が立っていました。
は少なくとも私の手元に届いたものは医学的には「清潔」であると考えて差し支えないと判断できます。
海堂尊氏の思想信条がどのようなものであるかについての事前の知識は私は持ち合わせていません。しかし、医師であるはずなのに見た目の綺麗・汚いに左右されて、
「アベノマスク」の不潔さ、恐るべしです。
と述べるのはどうなんでしょうねえ⋯。
日本人って家族であってもお箸は各人自分のマイ箸をもっています。しかし、ナイフとフォークは共有していませんか?感覚的な不潔と医学的な不潔は全くの別物です。
当院のような一般診療所では、高圧蒸気滅菌器で手術器具は滅菌します。
滅菌は消毒より、さらにバイキンが少ない状態を医学的には意味します。
高圧滅菌した他人のお箸って医学的には無菌状態レベルの清潔さ、でも使用するのに抵抗あるのは、科学的医学的な思考では説明できないかもね。
オペ室に出前が乱入、清潔警察卒倒事件。
私が研修医時代に大学病院のオペ室に、清潔警察とも呼べるような鬼軍曹的看護師がいました。とにかくやたらめったらと手術室の医師に「センセー、それ不潔❗」と怒るのです(あいつ、なんで清潔不潔に命かけているんだ、なんて悪口を研修医同士でブツブツ嘆いていたっけなあ)。いまとなっては清潔操作を徹底的に指導されたと感謝はしています。
ある日、泌尿器科の手術としてはかなり大掛かりな膀胱全摘除術+回腸導管造設術を行っていました。術中のトラブルで手術は深夜近くまで及び、当時のオーベン(指導医)が「寿司でも取ろうか?」と医師および看護師に声掛けしました。一年目の研修医がオペ室を出て電話注文して、お腹をすかせた医師および看護師はお寿司の到着を待っていました。
突然「キャー」「ギャーッ」と看護師の叫び声がオペ室に響き渡りました。そこには長靴を履いて右手にオカモチをもった坊主頭の兄ちゃんが立っていたのです。
通常はオペ室に入るには何段階ものドアを開け、看護師や医師の目を通り抜けてオペ室に入ることは不可能。その日は私達の泌尿器科チームしかオペ室を使用していないし、病院って今ほど出入りには厳しくはなかったのですが⋯。
オペ室は清潔区域であり、通常の出前はオペ室の前にあった手術部受付に届くはずなのですが、その日は誰もいませんでした。
通常は厳重な関所が複数ある大学病院のオペ室、さらにもろ手術をしている部屋に出前の人が乱入してきた衝撃的な事件に遭遇した私は、清潔警察所属の看護師が卒倒しそうになった、その光景が忘れられません。
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