怪しいぞ「冷たいおにぎりは太らない!」は医学的に根拠のある話なのか?

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世の中で冷たい炭水化物は太りにくい、との話が出回っています。

つい先日はダイヤモンド社が「冷たいおにぎりなら太らない!」とツイートしていました。

同じ食材であっても冷たければ太りにくい、は医学的に正しいものであり定説になっているのかを検証してみました。

冷たいおにぎりは太らない説は科学的・医学的な根拠はあるのか?

ホッカホカのご飯を愛してやまない人も多いことでしょう。一方で日本の伝統的ファストフード食である「おにぎり」は通常は冷たいですよね。こんなツイートをを目撃しちゃいました。

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https://twitter.com/diamond_sns/status/1273373101569396736

えええっ〜、同じおにぎりであってもホッカホカのおにぎりより、冷たいおにぎりは太らないの⁉

科学も医学もエポックメーキング的なビッグニュースが飛び込むことがあります。第三者の検証によってエポックメーキングが実はトンデモであることも珍しくはありません。

今回の冷たいおにぎりは太らない説、ダイヤモンド社のツイートながら今までの科学・医学の常識を破る大発見である可能性もあります。冷たいおにぎりは太らない説に関して私なりに検証をしてみます。

冷たいおにぎりは太らない説、初見は女子SPA!じゃん

ダイヤモンド社の冷たいおにぎり説ツイートは「医者が教える食事術」という一般書籍の広告の一部のようです。この一般書籍の著者は私が以前から非常に強い関心をもっていた医師です(私が常用する言葉だと「定点観測地点」笑)。

トンデモウォッチングしている人じゃないと持っていない一般書籍の検証だと、普通の人はその真偽を確認しにくいと思います。そこで私がEvernoteに記録してあったウェブ記事を中心に「冷たいおにぎりは太らない」説を検証してみますね。

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https://joshi-spa.jp/492547より

私が記録している1番古い冷たいおにぎりは太らない説が書かれている記事は2016.04.09の「女子SPA!」です。

冷たいおにぎりは「レジスタントスターチ」によって、ダイエット効果を生むのです。レジスタントスターチとは温かいご飯が冷めるときにできる成分で、冷たい主食のなかの消化されにくい「でんぷん」のことです。加熱されたでんぷんは、小腸に届くまでに消化、吸収されますが、消化されづらく変化したでんぷんは、大腸まで運ばれて排出されます。

冷たいおにぎりは太らない!コンビニのダイエットメニュー5選

とのこと。

デンプンの一種であるレジスタントスターチは消化されにくいけど、冷たいおにぎりの場合はこのレジスタントスターチが含まれているので太りにくい、とのロジックになっています。

そもそもレジスタントスターチってなんだろ?となりますよね。そこで今度はレジスタントスターチについて調べみました。

太らない成分「レジスタントスターチ」はちょっと怪しいぞ

女子SPA!に冷たいおにぎりは太らない、との記事を書かれた方は医学を専門としている人じゃないので、その方の経歴等についてはスルーします。医師が書いてダイヤモンド社がプロモーションしたのが2020年6月18日。女子SPA!が冷たいおにぎりは太らない説を記事にしたのが2016年4月9日。ってことは、医師が書いた本より先にSPA!は冷たいおにぎりは太らない説に着目していたことになります。

言い出しっぺは女子SPA!、それにインスパイアされたのが医師、という情けない構造になってしまうのでした。

医師の端くれとしてレジスタントスターチについてさらに詳しく調べてみました。

ダイヤモンド社が宣伝している医師の一般書籍、持っていたはずなんだけど書棚で見つけることができません。著者がレジスタントスターチに関して触れていたかの記憶もありません。

レジスタントスターチって学術用語なの?

消化されにくいデンプンをレジスタントスターチと呼ぶそうです。レジスタントは当然抵抗することを意味する「resistant 」であり、スターチはデンプンを意味する「starch」であろうと、「resistant starch」で医学論文を検索すると、かなり大量の論文が見つかりました。

ちょっと面倒なので日本語の論文検索サイトを利用したら、この論文が見つかりました。

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CiNiiにて「レジスタントスターチ」のキーワードで検索。この論文は2008年のものですから、女子SPA!よりは古くからレジスタントスターチという言葉は栄養学方面では使われていたことがわかり、ちょっと安心。

先程「resistant starch」のキーワードで検索したとき、目に残った検索結果があります。

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「Determination of the Non-Starch Polysaccharides in Plant Foods by Gas-Liquid Chromatography of Constituent Sugars as Alditol Acetates」(PMID: 6283946)は1982年に「Analyst」という基礎研究系の専門誌に掲載されています。

私が調べた限りではレジスタントスターチの言い出しっぺはこの論文を書いたH. Englyst氏らだと予想されます。

レジスタントスターチの効果はいくつかの論文をざっくり目を通したところ次のようになっていました。

糖の吸収速度を遅くする

整腸作用

脂肪の吸収速度を遅くする

つまり、栄養が十分に身体に吸収される以前に消化器を通過する、ってことですね。

冷たいおにぎりを食べると十分な栄養補給にはならないで、下手すりゃ下痢になっちゃうような気もします。

要するにお通じをサクサク改善させるダイエットサプリと同じ理論じゃん❗

やっぱり健康系バラエティ番組がとりあげていた、冷たいおにぎりは太らない

なーんだ、冷たいおにぎりであってもご飯であってもレジスタントスターチが含まれるために、身体に十分に吸収されない、故に太らない、とのロジックらしいです(これを強く支持するクオリティの高い医学論文はいまのところ未発見)。

ここで大発見をしました。「世界一受けたい授業」で2012年に既にレジスタントスターチに関しての番組が放送されていたのです。

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http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/120901/03.htmlより

そう言えば私も「世界一受けたい授業」は一瞬ながらVTRで出たことあったかも。

世界一受けたい授業ではこのように解説しています。

冷やすことによって温かいご飯よりも摂取カロリーが抑えられて脂肪がつきにくいレジスタントスターチ(消化されにくいでんぷん)ができます。

レジスタントスターチ⋯気になるワードですね。もう少し時間のある時にレジスタントスターチが実際にダイエット効果があるのかについて検証した医学論文を捜索して、続報を書きたいと予定しています(いつものように、予定は未定だよ、も明記しておきますね)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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