コンビニで買い物をするときなにも表示されていない食品より「トクホ」とか「機能性表示食品」との表示があれば「これは身体に良いだろう」とついつい表示のあるものを選択してしまいませんか?
そもそも「機能性表示食品」と「トクホ」の違いを明確に知っている人は案外少ないと思います。
最近では機能性表示食品のバナナが登場しています。機能性表示食品とトクホの違いについて再確認してみると、そこには複雑な背景がありました。
本記事の内容
機能性表示食品とトクホの違い、知っていますか?
健康志向の高まりとともに、コンビニで飲み物一つ選ぶときでさえ気になってしまうのが、「トクホ」(「特定保健用食品」の略)と「機能性表示食品」の表示。
トクホと機能性表示食品のどっちの方が偉いのか、どっちの方が身体に良いのか、どっちの方が効果・効能は確実なのか、などなどチョイスに時間がかかって仕方のないオッサンも多いかと思われます(私の場合は老眼で細かいトクホとか機能性表示食品の表示がよく見えないことも少なくないけどね)。
たしか、機能性表示食品は安倍政権が打ち出した成長戦略の一つだったと記憶しています。政権が気合を入れて「これからは機能性表示食品が日本の戦略だ❗機能性表示食品で世界をリードしよう」って、ことなら当然トクホよりは機能性表示食品の方が偉いし、身体に良いし、効果・効能が確実なような気もします。
でもねえ、調べてみるとかなり妙なことになっているんですよ、機能性表示食品とトクホの関係は⋯。
最近ではバナナにまで機能性表示食品との表示が⋯。個人的には食べやすくて美味しいからバナナを食べる、それで良いと思うのですが。
めちゃくちゃ気合の入っている「機能性表示食品」業界
「https://www8.cao.go.jp/」って内閣府のURLですよね。内閣府とはどのような組織というか機能を担っているかに関しては各自で調べてね。
その内閣府のサイトにはこんな気合の入った資料がありました。
機能性表示食品は世界を目指していたようです、やっぱり気合が入っています。この資料によると2013年6月に安倍首相は成長戦略第3弾スピーチで「健康食品の機能性表示を解禁いたします」と宣言したようですね。
機能性表示食品の定義は
機能性を表示することができる食品は、これまで国が個別に許可した特定保健用食品(トクホ)と国の規格基準に適合した栄養機能食品に限られていました。
だから、
機能性を分かりやすく表示した商品の選択肢を増やし、消費者の皆さんがそうした商品の正しい情報を得て選択できるよう、平成27年4月に、新しく「機能性表示食品」制度がはじまりました。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/150810_1.pdf
と消費者庁のサイトに明記されています。
つまりトクホの機能性をわかりやすくするために用意されたカテゴリーが機能性表示食品ということらしいです。
機能性表示食品とトクホの区別、分かったようで分からないぞ
安倍政権が気合を入れて始めたのが機能性表示食品という制度であることが、ここまでの機能性表示食品の歴史をたどることで理解できました。
じゃあ、機能性表示食品とトクホは具体的にどのような違いがあるのでしょうか?と当然知りたくなりますよね。これが分かったようで分からない内容になっています。
●トクホ
健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」などの表示が許可されている食品です。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しています。
●機能性表示食品
事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものです。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。
消費者庁「機能性表示食品とは?」より
どちらも科学的根拠に基づいているらしいことは理解できました。「エビデンスを示せ」という時代の風潮に乗っかっているのは間違い無さそうです。まあ、エビデンスといってもエビデンスレベルがあって、信頼度に関しては科学的根拠があっても何段階かになっているのですけどね。
Research Gate よりトクホと機能性表示食品の大きな違いは次のようになると上記の文言から推測できます。
●トクホ 効果を明記することができて、消費者庁長官が個別に許可したもの。
●機能性表示食品 以前から効果があることが知られていた食品を含む商品で消費者庁長官の個別の許可は必要ではないもの。
と、いうことはトクホの方が機能性表示食品よりは偉い、ってことになるのかな?でもトクホであっても機能性表示食品であっても、身体になんらかの効果・効能はあるし、同じような商品であるように感じてしまいます。
私のぼんやりした脳では、ここまでの説明ではトクホと機能性表示食品の明確な違いが判然としないのです。
唯一、明確に理解可能なことは、機能性表示食品は安倍政権が鳴り物入りで気合を入れて作った制度である、ってことだけ。
安倍政権の成長戦略の一つとなったことで、サプリメント業界はさらに盛り上がっています。
健康食品とは次元がちがう高いレベルだあー❗オッサンたちの盛り上がり方がうかがい知れる文言です。
機能性表示食品でさらに盛り上がっている業界もありますね。
私には広告手法が今まで以上に誇大になってしまうような気がしないでもありません。機能性表示によって売上アップ事例が増えたことは安倍政権が高らかに宣言した成長戦略が成功した根拠にはなっているでしょうけど(エビデンスレベルは不明だよ)。
機能性表示食品の台頭でトクホは影が薄くなったような⋯
私の記憶では機能性表示食品以前からトクホは存在していたはず。トクホ(特定保健用食品)のこのマークを見たことがない人は少数だと思います。
ここでちょっと変なことに気が付きました。バンザイしているイラストは同じだけど、以前はこのマークじゃなかったっけ?
いつの間にやら、トクホの管轄が厚生労働省から消費者庁に変わっているぞ❗
お役所の縄張り争いの対象となってしまった暗い歴史を持ったトクホのようです。
市場規模はトクホのほうが大きいことがわかります。市場規模の拡大については、安倍政権の思惑通りに機能性表示食品は右肩上がりのようです。
トクホは取得するために消費者庁長官の許可がでるまでに長期間かかり費用も高額になることが問題でした。トクホ取得期間が5年以上かかり、費用も2000万円以上必要となることもあります(SPEEDA総研「機能性表示食品の現状と課題」https://jp.ub-speeda.com/analysis/archive/46/より)。
個人的にはトクホは以前のように厚生労働省がしっかりと管轄して、機能性表示食品は消費者庁が広告で誇大表現を使用していないか厳重に監視する方式が安心なんですけどね。
なぜならトクホに関しては有効性や機能性や安全性の評価がヒトに対して検証されることが必要なのに、一方の機能性表示食品は文献や論文を添えるだけで消費者庁の許可を得ることができますから。
トクホと機能性表示食品以外に「栄養機能食品」ってのがあります。さらに話は複雑になる可能性が大なので、今回は栄養機能食品は無視しますね。