自殺を予知する血液検査⁉本当に自殺予防方法が効果あるのか?

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アベノミクスの効果によって緩やかに景気が戻りつつあるとされている昨今です。1990年代に始まった景気後退の影響により経済的に問題を抱えたことが原因である自殺が増加しています。

自殺は先進国にとって大きな問題です

自殺は経済的な問題を含む社会環境や福祉の問題、そして個人個人の問題が原因となる複雑な事情が交叉して起きてしまうと考えられています。そのような様々な因子のなかで自殺を予想する血液検査が見つかったという話があります。

A_blood_test_for_suicide_risk__Alterations_to_a_single_gene_could_predict_risk_of_suicide_attempt_--_ScienceDaily

http://www.sciencedaily.com/でもこの話題を取り上げています。

DNAを分析して自殺を予想する因子を見つけた??

自殺の大きな原因は漠然と捉えた場合はストレスと考えられています。精神的なストレスを測定する方法は幾つも検討されています。しかし、どの方法もまだ決定打とはなっていませんし、最悪の結果である自殺との因果関係も明らかになってはいません。脳の視床下部、下垂体、副腎系(ホルモンバランスを調節している)がストレスに対して反応をしていることは知られていますので、この調節システムが自殺という行動に何らかの関係があることは当然予想されていました。

そこに「エピジェネティック」と言う考え方を持ち込んだ研究があります。聞き慣れない「エピジェネティック」という言葉は個々の遺伝子情報はその人の全ての細胞に組み込まれているんですが、ある細胞は皮膚となり、ある細胞は内臓に変化をする、その違いを説明する為の考え方です。DNAメチル化と呼ばれる状態があり、これが遺伝子情報自体は変化させないで、遺伝子の目的(耳になる、胃になるというなど)を発揮させる切っ掛けになっています。米国の研究者が人間の脳168人分を解析することによって、脳の遺伝子のエピジェネティックと自殺の関連性を検討しました (Am J Psychiatry 2014;:. doi:10.1176/appi.ajp.2014.14010008) .

血液検査で自殺のリスクが判る⁉

この研究によれば

SKA2遺伝子が自殺者には少ない

という結果がでています。さらに自殺した人の脳に存在する遺伝子を解析したところ

SKA2遺伝子のDNAメチル化が自殺者では多く見られた

ということも判明しました。つまり、自殺という最悪の行動をしてしまう人は

血液検査でもSKA2遺伝子のエピジェネティックと関連している因子が見つかった

のです。この結果は他の精神的な病気や国民性、民族性とは切り離して検討されていますので、「自殺をさせる遺伝子」の存在が予想されるのです。ここで勘違いをしないで欲しいのですが、人間誰でも自殺という行動を取らせる遺伝子が埋め込まれていて、それがなにかの切っ掛けでスイッチオンされることによって自殺するという考えであり、自殺が遺伝するわけではありませんのでご注意ください。

Epigenetics____Group_for_Development_of_Molecular_diagnostics_and_Individualized_Therapy_Division_of_Epigenomics____National_Cancer_Center_Research_Institute

http://www.ncc.go.jp/

エピジェネティックを簡単に説明しないと、判りにくいんですけど、それが簡単に説明できないので⋯。お時間が有れば上図を参照してくださいませ。

この検査で80%の確率で自殺を予想できる、って言われても⋯

自殺と深い関連性があるSAK2遺伝子ですが、エピジェネティックに影響をおよぼしていると予想されるrs7208505って長ったらしい名前の遺伝情報に関連している一塩基多型(SNPと呼ばれ普段は遺伝情報を伝えないのですが、変異的に遺伝情報に影響を与えて、個人個人の多様性を生み出している)などを調べることによって高精度(80%程度)で自殺を予想することが可能になるのです。

でも、血液検査によって「あなたは自殺するリスクが高いです」って言われても、どうやってその行動を防ぐんでしょうか?自殺を流行の言葉であるダイバーシティ(Diversity 多様性)で説明されてもなんだか納得いかないのです。なぜ、自殺と大きく関連しているSAK2遺伝子が変化して、それに伴って血液検査で判明するrs720850が増加するのか?という研究も重要だとは頭では理解できます。

でも、最初からストレス反応と関連している、ってことが判っているんですから、そもそもの原因である「ストレス」自体を無くす方法を考えた方が結果である自殺を防ぐことになると感じるのは私だけでしょうか??

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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