身近にあふれる「抗菌」の文字。
電車のつり革やエスカレーターの手すり、シャツ・靴下にも抗菌仕様と明記されているものがあふれています。抗菌は細菌の増殖を抑えるという意味です。
ウイルスは細菌ではありません。
新型コロナ感染症対策として、電車を丸ごと抗ウイルス・抗菌加工するという鉄道会社のニュースがありましたが、一体どうやって???と疑問に思ったので調べた結果、驚きの事実が⋯
本記事の内容
次から次と新型コロナ感染症対策グッズが出てくるけど、効果は実証されているの?
日課のトイレタイムの健康・医学関連記事チェックをしていたら、驚いて便座から滑り落ちそうになりました。あやうくウ●チまみれになりかけた記事がこれ。
抗ウイルス・抗菌加工を謳うグッズは今回の新型コロナ感染症パニック以前から出回っていました。抗菌作用があるらしいと噂されているものとして銀イオン(Ag) があります。興味深いCMで私の定点観測対象となっている小林製薬は以前銀イオングッズを販売する際に、広告の表現が誇大であると怒られた過去があります。
鉄道会社が新型コロナ感染症感染予防に使用している抗ウイルス・抗菌加工とはどのようなものだろう、と調べていたら親切な複数の方から、これだよ、っと教えていただきました。
なんとなーく、今はなき「花粉を水に変えるマスク」を彷彿させる効果効能の説明です。
このブログを書いたら「集団訴訟の準備をしたぞ」的な恫喝をこのトンデモ商品に関わっていた某大学医学部教授からメールやDMが来ました。
お正月に安寧な生活を送ると決めた2020年です。しかし、わからないことだらけの空気触媒、どうやって新型コロナ感染症感染予防になるのか根拠が不明な抗ウイルス・抗菌加工。一時期は医療崩壊寸前だった新型コロナ感染症パニックが比較的沈静化している土曜日の午後を利用して鉄道会社が採用している新型コロナ感染症感染予防対策を検証してみました。
光触媒なら理解できるけど、空気触媒って何?
触媒という概念、あまり科学に接する方ことが少ない方には理解しにくい用語です。手元にある中学生の理科の教科書「新しい科学」の索引には触媒は掲載されていません(老眼のために見落とした可能性はあるけどね)。
ネット検索の結果としては中学1年生の化学「気体の性質」で触れられているようです。
自分自身は反応しないが周りの反応を助ける物質を触媒といいます。
中学理科ポイントのまとめと整理(https://chuugakurika.com/2018/01/09/post-1317/)
次に「空気触媒」という聞き慣れない用語は、私が持っている教科書的成書では見つけられませんでした。そこでネット検索するとこのような結果に。
上位のほとんどを前掲の阪神電気鉄道と阪急電鉄が新型コロナ感染症感染予防として使用した会社のサイトが表示されます。実はこの空気触媒を利用した新型コロナ感染対策グッズは日本が世界に誇るJRでさえ採用していました。
この度、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)様にて、全車両への抗ウイルス効果を目的とした弊社商品が採用されました。
20202年5月22日ニチリンケミカル株式会社 新着情報(https://nichirin-chemical.co.jp/)
JRが採用しているのですから、空気触媒による抗ウイルスグッズの効果・効能は疑う余地がない、と一瞬は判断しました。でも、気になって空気触媒関連の論文があるか確認したところ、見つかったのはこれ一本だけ。
空気触媒、って少なくとも医学系の用語では無いことがわかり、ほっと一安心。
あれ、あれ〜、触媒学会のサイトでは「空気触媒」は見つからないぞ
空気触媒に関する医学的文献は無さそうなので、かなりマニアックな触媒学会のサイトで「空気触媒」に関する情報を探してみました。その結果がこれ。
該当件数はゼロ、空気触媒って言葉は触媒学会では使用されていないようです。
うーん、空気触媒がどのように新型コロナ感染症感染予防に効果を発揮するかを調べたかったのに、そもそも空気触媒という概念自体がちょっと怪しげなことになっていきました。振り出しに戻る的にJRや阪神や阪急などの鉄道会社が採用したセルフィールを取り扱っている会社のサイトの説明をもう一度チェックしてみました。
空気触媒の驚くべきパワーは読めば読むほど混乱してきた
セルフィールの説明に「空気媒体」というこれまた聞き慣れない言葉が登場してきます。どうも触媒と同じ意味で「媒体」が使われている模様。
セルフィール(空気媒体)と光媒体の比較 セルフィールは触媒の仲間です。シックハウス問題等で有名な触媒では「光触媒」があります。十分な光(紫外線)エネルギーがある場所では、概ね光触媒は「セルフィール」よりも高い分解力を発揮しているようです。
https://nichirin-chemical.co.jp/products/selfeel/effects01.html
触媒と媒体は別物なんじゃないの?
PCで検索しまくったせいなのか、ううっ〜、首が痛いし、手もしびれてきた⋯持病の頚椎ヘルニアの症状が再発してきた、頭も痛くなってきた。でも、続けます。
私が尊敬するNATROMさんが、すでに記事にしていたセルフィール
NATROM(なとろむ)さんは、私が尊敬するガッチガチの理論でトンデモを排除してきた医師がいます。私のようなちゃらい論法でニセ医学を批判するのではなく、NATROMさんはニセ医学を徹底的に追い詰めます。
さすがNATROMさん、すでに 2005年2月25日に投稿された 「空気触媒(無光触媒)って、どうよ?」という記事でセルフィールの効果効能に疑義を呈しています。
複数の大手鉄道会社が新型コロナ感染症感染予防対策として空気触媒グッズ、限りなくトンデモに近い案件だと判断して良さそうです、だってNATROMさんも
いろいろ調べてみたけれども、何か、未知のテクノロジーが使われているような感じ。「空気中の酸素と水が接触することで、表面反応が起こり、三価オゾンと二価の酸素を生成します」とのことだけど、水分子の水素原子はどこにいっちゃうのだろう?
とブログに書いています。
持病の頚椎ヘルニアの症状が軽快したら、セルフィールに関して違った方向からいじってみる予定とします(予定は未定だよ)。
セルフィールの効果・効能を示した実験がちょっとヘンです
おまけ1:セルフィールが抗ウイルス効果を実証した、とサイトに掲載しているもの、ちょっとヘンです。
実験に使用したものはインフルエンザウイルスであり新型コロナではありません。
さらにこの実験ではウイルスを精製水で10倍に希釈したウイルス浮遊液を対象としています。インフルエンザウイルスと新型コロナは別物であり、だからこそ厄介なのです。さらに新型コロナが感染拡大している経路は接触感染と飛沫感染ですよね。唾液などに包まれた新型コロナに触れることによって、感染が成立します。水で薄められた新型コロナが不活化されたとしても、感染予防に効果があるとは考えないのが科学的思考であり、医学的な考え方なのです。
試験管レベルで効果あっても、臨床では全く効果が認めらなかった薬品は星の数ほどあります。
おまけ2:このウイルス不活化試験の説明で見慣れない「TCID50」という言葉がでてきます。TCID50は実験に使用した50%の細胞に対して感染する濃度を意味します。
他社のこの商品の実験のほうがセルフィールよりインフルエンザを不活化させる時間ははるかに早いですよね。
この商品の主成分はエタノールです。セルフィールというトンデモ理論で解説されている抗ウイルス・抗菌加工より効果は確実です。鉄道会社は優秀な技術者を多く抱えているはずです、この方たちはなんかおかしいんじゃないの、と意見はださなかったのでしょうか?
お時間のある方はこれもどーぞ。
次から次とヘンテコな消毒グッズがでてきています。