抗生物質の処方は誤診だらけ??インフルエンザへ適切な処方はたったの16%❗

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カゼを引いた場合に医療機関を受診するとなぜか抗生物質や抗菌剤を処方されることが多いと思います。教科書上の正しい処方としてはカゼと呼ばれるものの多くはインフルエンザをはじめとしてウイルス性の病気の為、細菌感染に対して効果のある「抗生物質」や「抗菌剤」は無意味とされています。

カゼやインフルエンザに抗生物質が効果ないのは常識だけど

抗ウイルス剤・抗生物質の使用における問題

しかし、一般的にカゼ様の症状に対してはウイルスに対して効果が確認されている抗ウイルス剤は非常に少なく、二次感染として細菌感染をしている場合も少なからずありますので、一概に「カゼに対して抗生物質を処方する医師は知識が少ない」とは言えません。「欧米ではまず、カゼ症候群に抗生物質なんかださないよ」と主張する若手の医師もいますが、それって本当ですか。

少なくとも私が実際に海外でカゼを引いた時はタミフルと抗菌剤の両方を処方されましたけど⋯。

インフルエンザであっても適切な抗ウイルス剤が処方されていない❗

タミフル等の抗インフルエンザ薬が効果が無い、とかの話は今は置いておいてください。日本の若手医師が「アメリカじゃ、カゼ症候群に対して抗菌剤なんか処方しない」という常識は本当でしょうか?実はこんなデータが有ります。

インフルエンザに適切に抗ウイルス剤が処方されていたのはたったの16%❗

米国の疾病対策センター(CDC 最近はエボラ出血熱で名前を聞きますね)が2012年から2013年のシーズンにインフルエンザを外来で診察した医療機関が正しく抗インフルエンザ薬(例えばタミフル)を処方していたか?という意地悪な調査をした結果が上記の低レベルのものだったのです(Use of Influenza Antiviral Agents by Ambulatory Care Clinicians During the 2012–2013 Influenza Season Clin Infect Dis. first published online July 16, 2014)。

インフルエンザなのに30%が抗菌剤を処方されていた❗

という衝撃的な事実も明らかになりました。

海外だってカゼに抗生物質処方しているじゃん❗

カゼ症候群あるいは感冒症候群と呼ばれる「カゼ」は呼吸器の炎症を起こす病態であって、インフルエンザ感染症とかの個別の病名ではなく、症状をまとめて表した急性炎症の総称をお考えください。90%近くがウイルスが原因となっていて、そのウイルスの数も100以上〜200種類くらいと考えられています。インフルエンザは大流行を引き起こす為に、医療機関では迅速に診断出来るキットが常備されていますが、すべてのウイルスを同定することは特殊な医療機関以外では不可能とお考えください⋯デング熱騒動でも検査キットは日本製はなく急遽韓国から輸入して主要医療機関限定で配布されたくらいですから。

Use_of_Influenza_Antiviral_Agents_by_Ambulatory_Care_Clinicians_During_the_2012–2013_Influenza_Season

今回の報告によれば咳が続いて急性の呼吸器感染症と診断された患者さんから原因ウイルスをPCRという方法(結果が出るまで数日かかる)を行なうと同時に、その医療機関でなにを処方したかを記録してもらったものを後日照らし合わせた結果、インフルエンザに罹っているのに適切に抗ウイルス剤(タミフル又はリレンザ)が処方されていたパーセンテージがたったの16%であり、抗菌剤・抗生剤が処方されていた人の方が多かったということがわかったのです。

つまり日本でカゼ症候群と呼ばれる急性呼吸器感染症に対しては抗生物質が当たり前のように、あの米国(訳知り顔の患者さんや医師がお手本とする)でさえ使用されていました❗

抗生物質の多用は耐性菌を生み出す

日本の医師が異常に薬を処方すると批難された時期に(今も科によってはお腹いっぱいの薬を出す傾向があります)、世界中の抗生物質の70%が日本で使用され、そのうち70%がセフェム系である(ペニシリン系のあとに開発された当時としては新薬の部類に入る抗生物質)なんて先輩にお説教をされた記憶があります(数字に対しての裏付けはありません 笑)。

医師が安易に抗菌剤・抗生物質を使用すると、細菌もだんだん知恵がつくというか、悪性度が増すというか、ようは薬が効かない新種がドンドン登場してくるんです。この薬剤耐性の細菌はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) が老人施設などで流行して、大問題になったことはご存知だと思われます。OTCとして手軽に手に入る皮膚の感染症の薬であるゲンタマイシンはトビヒの原因菌である黄色ブドウ球菌の半数以上が効果がないともいわれています。

抗生物質にしろ、抗ウイルス剤にしろ、目の前に苦しんでいる患者さんがいるのに「薬剤耐性菌を生み出すから」といって使用を控えることは難しいのですが(対個人)、使い過ぎは明らかに人類全体の不利益になります。となると耐性菌に対して製薬メーカーが次々に新薬を開発することが必要となるので、薬品メーカーと医療関係者が結託して抗ウイルス剤や抗生物質を多用しているという陰謀論が面白おかしく取り上げられるのもわからないでも有りません。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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