サルコペニアという言葉を最近耳にしませんか?
サルコペニアとは「筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態」を示す言葉です。
加齢によって筋肉が弱ると転倒が増えたり、それに伴い骨折もしやすくなります。さらに転倒・骨折により入院生活が長くなれば「寝たきり」「認知症」の危険も増えてきます。
見た目普通でもサルコペニア肥満であるケースは多々あります。いわゆる隠れ肥満です。
サルコペニアかどうか、そうでないかの基準は?
サルコペニアについては欧米ではガイドライン的なものが出来ていましたが、現時点でもともと体格が違う日本人に対する診断基準自体がハッキリしていません。NHKが「メタボより怖いサルコペニア肥満」という話題を取り上げたことにより、サルコペニアという病態自体の診断基準もエビデンスも曖昧なまま、筋肉が減って替わりに脂肪がつく状態の方が多くの方が知る所になっています。(関連エントリー)
健康オタク系のオッサンの間でも「メタボ」は今や古い言葉になり今では「サルコペニア」が話題の中心となっています(私の周辺のみの現象かも??)。サルコペニア肥満は置いといて、「サルコペニア」とは何か?診断基準はどんなものか?サルコペニアを予防するための方法などについて簡単に解説していきます。
とにかく加齢とともに急激に増加する「サルコペニア」です。「Prevalence of Sarcopenia in Community-Dwelling Japanese Older Adults」(JAMDA Online: October 07, 2013 より)日本の研究者によって書かれた論文です。
サルコペニアを診断する基準
サルコペニアの日本人に対する診断基準の問題点は
サルコペニアの定義や診断は,国際的合意のないままで推移していたので,欧州から統一見解が示された意義は大きく,我が国のサルコペニア研究発展の一助としてそれを監訳した.
厚生労働科学研究補助金(長寿科学総合研究事業)高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究 研究班
とあるように名前先行であり、注目を集めてはいる病態だけど、診断基準も曖昧で、もともと欧米人とは体格に大きな差がある日本人に対しては診断基準を明確にする作業が必要となります。
欧州老年医学会が考えているサルコペニアの診断として測定するものは
- 筋肉量
- 筋力
- 身体能力
となっていますが、筋肉量を測定するためにはCTやMRIを使用する必要がありますし、筋力といっても握力や下肢の屈伸運動など評価する方法は多数に渡るために、それぞれのエビデンスをハッキリしないといけません。
アジア人向けのサルコペニアの考え方はもう少しすっきりしていて
- 歩行速度0.8メートル/秒以下
- 握力は男性26キロ未満、女性18キロ未満
までは納得のいくものですが、四肢筋肉量インデックスという面倒なパラメータがつきまといます。
生体電気インピ-ダンス法 (BIA 法) によって筋量計を測定する機器です。
メタボリックシンドロームもそうだけど基準ばっかりつくっても⋯
超高齢化社会を迎えることによって焦っているのは日本だけではなく欧米も同様です。とにかく将来を考えた場合の膨大な医療費をどうするか、が大問題となっています。その為に疫学による調査をもとに様々な「将来病気にならない基準」作りに各国が血眼になっているのですが⋯。
人間ってとにかく複雑な構造になっているし、様々な人生を送ることによってストレスも違ってきますので、何かのデータと何かの病気が相関関係にあっても、因果関係にあるとは限らないのです。物理学などの因果律がハッキリしている学問においても今では「バタフライ効果」や「複雑系」が中心になっています。
スーパーコンピュータを使用した天気予報でさえ、雨が降るか、降らないか、さえ当たらないことが多いように、人間の健康を考える医学って果たして「科学」なのか、混乱している今日このごろです。