首をボキっとやるカイロプラクティックで行われている首ポキ施術は気持ちが良いかもしれませんが実は大変危険です。
クセで首の骨を鳴らしてしまう人は多いと思いますが脳卒中になるリスクがありますので出来れば止めましょう。
そんなデリケートな首ですが、乳児は大人よりもずっとずっと弱いのです。乳児の首を独自の「首ひねり」マッサージで痛めつけ死亡させるというなんとも痛ましい悲惨な事件がおきました。子供の健康や成長に不安をもつママの「なんとかしてあげたい」という心理につけこんだ非常に悪質な事件です。医師として憤りを隠せません。
本記事の内容
免疫力を高める首をひねる独自マッサージ後乳児死亡❗ってニュースになっていますが⋯
非常に痛ましい事故っていうか事件が起きています。大阪と新潟で「免疫力を高める」と称して赤ちゃんに独自❗のマッサージを行なっているNPOの代表が任意聴取を受けているとのことです。低酸素脳症による多臓器不全で独自のマッサージを受けた乳児が死亡しています。このマッサージを行なった方は昨年も同様のマッサージで乳児の死亡を引き起こしています。
これは皮膚病を治すための、首へのマッサージらしいのですが⋯。
このNPOが行なっているマッサージ治療??風景の写真がブログにアップされていました。これって完璧に首を捻っているというか、以前危険性を指摘した「首ポキ・首ボキ」じゃないのかな??」(関連エントリー)
発作性上室性頻拍症頚動脈洞をマッサージすることで緊急的に心臓がバクバクするのを抑える裏技があるくらいなので、安易な首のマッサージは心停止を引き起こす危険があります。
対面 (ついめん) 抱っこ、で免疫力アップ⁉
この乳幼児に対する独自のマッサージを行なっているNPOは「ついめん抱っこ」ということを強調しています。字面から想像するに、赤ちゃんとジックリ接しましょう、赤ちゃんの表情をよく見ましょう、お母さんの顔の表情を見せて赤ちゃんに話しかけましょう、と解釈すればとても素敵な育児方法だと思います。お母さんがニコニコして、赤ちゃんも愛情たっぷりに育てば感性も豊かになり、免疫力もアップするかもしれません。
関連書籍も多数でています
しかし、首を捻って免疫力がアップする、という理論は「独自」でしょうね。多分、首をマッサージするか、ひねるか、捻るかして首の神経が集中している所を刺激して、副交感神経が有意になり免疫力がアップするという理論になっていることが予想されます。
今回事情聴取を受けているNPO の代表者の著作と思われますが、「免疫力アップ」というと必ず登場する医師が併記されているので、親御さんがこの独自のマッサージの治療効果・施術効果を信用してしまいます。この医師は今回の事故をどのように捉えているでしょうか?
親御さんがご自分の赤ちゃんの健康を願ってこれらの本を参考にマッサージをすることは違法ではありません。
でも普通こんなこと親だったらできませんよね、そこでこのNPOの代表の女性が登場するのでしょうかね??
今回の乳児死亡事故は明らかにこの団体の代表である女性が「施術中」に呼吸が止まってしまったのですから、施術と称して治療を行なっていたとしたら、無資格者による疑似医療行為が原因となります(首をひねったり、首をマッサージしたりした施術に対しての費用が支払われていたかは現時点の報道では不明です)。
免疫力を高めるというこのNPOだけど、なんだかこれもセミナービジネスのような
事件というか事故を起こした方の志は理解できます。少子化問題を考えた場合も1人一人の乳幼児を愛情たっぷりに病気に罹らないように「免疫力アップ」を目指すことも結構なことです。この結構な子育て方法を講演会などを開催して広く知らしめるという行動も批難されることではありません。しかし、「アドバイザー養成講座 」ってものがあると、以前私が酵素栄養学(インチキ)を理論的背景とした「酵素スムージー」なるもののでダイエットを行なうアドバイザー養成講座の怪しさをブログに書いた時と同じ香りを感じてしまいました。
ちなみにお値段は
『対面 (ついめん) 抱っこアドバイザー』養成8ヶ月コース
◆講座金額:¥200,000-
分割等につきましてはご相談下さい。
(講座用テキストが別途必要です。¥20,000代引き発送)
となっていてかなり高額ですが、可愛いご自分の赤ちゃんの為なら、と思って分割までして受講を希望する人がいるんだろう、と思っている方は大間違いです。
これは「対面 (ついめん) 抱っこアドバイザー」として資格(もちろん国などが認めた国家資格とは別物)をとってアドバイザーとして活躍するためのものなのです。アドバイザーとしてどのような活躍ができるのか詳細は不明です。ひょっとすると今回の乳幼児死亡事故を起こした主催者同様、首をひねる独自のマッサージを行なっていたらと思うとゾッとします。
NPOとつくと信頼度が抜群に高まるのですが、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人をNPO法人と呼び、お役所に申請するだけで認証されてしまう、非常に緩い基準となっています(内閣府より)。
民間療法を全否定するわけではありません
おばあちゃんの知恵的な民間療法の中には、理にかなったもの、医学的にも効果が認められているもの、中には医学治療より明らかに優れているものもあります(関連エントリー)。一般の方がマッサージ、整体などと読んでいる治療方法に関しては国家資格が必要である、つまり国による免許を必要とするものもありますし、そこらのオッサンが短期間のセミナーを受けて「整体師です」と名乗ることも可能であり、行政もその対応に困っている状態です。
この無資格者、有資格者の関係は美容皮膚科とエステティックの関係と非常に似通っています。そういえば昨日の朝日新聞は明らかに違法であるエステティックの光脱毛を堂々と掲載していて、記者及び担当デスクのリテラシーの低さが曝露されました(関連エントリー)。
こりゃモロ違法だろって❗
国から頂いた医師免許を持った医師でも変なのがいることは否定しませんし、イカガワしい事件を起こす医師もいます。一方的に民間の独自の治療が悪いとワケではないのですけど、もしも民間医療を受けるなら少なくとも情報を集める力を付ける必要があるのではないでしょうか?
今回の乳児の死亡事故を起こしたNPO代表は以前にも同様の死亡事故を起こしているのですから。
この首を捻る健康法を主催していたNPO法人「子育て支援ひろばキッズスタディオン」の「姫川“裕里”」理事長(本名は姫川尚美)は2015年3月4日に大阪府警に逮捕されました。あと⋯「対面抱っこ(ついめんだっこ)」について大きく間違っておりました。普通の抱っこの逆で赤ちゃんの背中が抱っこする親の胸と触れる、カンガルーのような抱き方のことでした。
トンデモやニセ医学にご興味がある方、こんな本を出しましたのでよろしければどーぞ。
お近くの本屋さんにない場合は取り寄せるか、電子書籍版もありますのでAmazonなどでお買い上げいただけると非常にうれしいです。