新しい生活様式に向けて「料理する人は積極的に検査を受けましょう」??

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テレビでは相変わらず検査数が足りなさすぎると主張する番組がありますが、ネット上ではヘンテコな感染症の検査に対する正しい認識が徐々に広まっているように感じています。

とはいえ、ネット上の意見は世間一般の認識には程遠く、テレビの影響力はやっぱり強大です。でも、諦めずに、ひとりでも多くの人に正しい医療情報が伝わるために地道にコツコツ情報発信していくしかありません。

新型コロナ感染症の第2波に備えよう・新しい生活様式に関する情報が増えていますが、料理する人はPCR検査を受けようという情報が目に留まりましたので、ツッコミを入れていきたいと思います。

名誉教授といえども、しっかり調べてからの発言を強く希望します

新型コロナ禍という非常事態では半可通の人がわさわさ出現してきます。感染症の専門家ではない医師、臨床現場をほとんど経験していない医師、医師免許をもっていない医学博士、自称医療ジャーナリストなどなど。

新型コロナ関連の情報で重要なポイントの一つとして、その発言は誰のものであるか、があります。一般的に大学の名誉教授の発言であれば、純真な素人さんは信頼度がかなり高くなるはず。

でも、これって本当なんでしょうか???

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Yahoo!ニュース 「食べ物づくりに関わる人を新型コロナ感染症から守る 第2波に備え根本的対策を」 (https://news.yahoo.co.jp/byline/okudakazuko/20200525-00180199/)

発言している方は名誉教授

他の肩書は日本災害救援ボランティアネットワーク理事

経歴は米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員など

どこから見ても発言内容は信頼できるものだと考えますし、特に医師である私は食品分野は素人に毛が生えたレベル、患者さんには飲食店経営者および従業員も多数であるために、参考にさせていただこうとおもって「食べ物づくりに関わる人を新型コロナ感染症から守る 第2波に備え根本的対策を」を読ませて頂いたところ⋯絶句状態、この名誉教授はまったく新型コロナに関してご存知ないことに驚きました。

のっけから飛ばしまくる名誉教授のトンデモ発言

この名誉教授の問題提起、椅子からひっくり返りそうになりました。

調理人、料理提供者には新型コロナ感染症ウイルスの「PCR検査」の実施しろだと!⁉?

ウイルス保持者が料理を担当しているのでは感染が拡大し論外です。その意味で食べ物関係の仕事に携わる方々は「陰性」という条件が求められます。

そもそも、調理した料理から新型コロナの感染が成立した症例ってあるのでしょうか?医学の一般常識としてウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染です。

感染者の飛沫が料理に付着して感染成立、調理した料理を載せたお皿にウイルスが付着して、お客さんがナメるか手指に付着して口や鼻や目を触って感染成立、ってことなんでしょうけど⋯。

そうなると、家庭内で調理をする人もPCR検査を受ける必要がありますよね、家庭内感染ってクラスター形成の一つですから。

毎日、毎日PCR検査を受け続けなければならないじゃん⋯

PCR検査は微量のウイルスを増幅して、ウイルスが存在しているかを調べる検査であり、感度や特異度を考えるとスクリーニング検査としての意義はかなり疑問がある検査です。

新型コロナ感染をやっかいな問題にしている一つとして、どこで感染したかわからない「感染経路不明」者であることは多くの方は連日のメディアの情報でご存知のはず。

調理人、料理提供者であっても日常生活を営まなければなりません。外出を自粛していても全く一人ぼっちで生活をして、全く移動もしないで生活はどうみても無理です(職場に監禁状態であるなら、感染リスクは減少しても精神的に破綻するでしょうし、経営者がそれを指示したらブラック中のブラックで即アウト)。

おいおい、PCR検査の乱用を行政に要望しちゃマズいよ

名誉教授は続けます。次の仕事に就いている人へのPCR検査を行政に提案します、だってさ。
テイクアウト、出前、ケータリング、仕出し屋、ファーストフードなどに携わる関係者 ・飲食業・調理加工業・食品加工業―食べ物の製造、品質チェック、包装などにかかわる業務 ・喫茶店などの店員など

例えば当日のPCR検査の結果は陰性だったウーバーイーツの人が、料理を届けた時、届け先のお客さんが新型コロナに感染していたら、どうするの?玄関先に注文された料理を置いておけば感染リスクは減少するだろうけど、ウーバーイーツの人が勤務時間外にへんてこな感染症の第三者と接触したら、うつっちゃうよねえ。

食品加工業者の包装に関わる業務の人も全員PCR検査を受けなければいけないの?そもそも、食材の包装を介して新型コロナの感染が成立した症例ってあるのかねえ。

ちなみに本来は新型コロナに感染していない人であっても、PCR検査を延々と繰り返すと間違って陽性判定されることが確率的には明らかになっています。

名誉教授はひょっとして、細菌とウイルスの違いが判っていない可能性が⋯

さらに名誉教授の発言は暴走します。

食べ物・飲み物は衛生面で新型コロナ感染症や食中毒になる危険性をはらんでいるからです。

だから〜、食べ物・飲み物を介して新型コロナに感染した症例ってあるの、って話は戻っちゃうのですよ。

店頭販売あるいは宅配された食べ物は往々にしてそのまま食べることが多く再加熱しにくい。食べるまでの間に細菌が繁殖するのが不安です。

あれ、あれ、新型コロナの話がいつの間にやら細菌による食中毒の話に変わっているぞ。

さらにさらにヘンテコな方向に暴走は続きます。

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品質表示で「新型コロナは含まれていません」を求めるのでしょうか?

温度管理によって新型コロナの増殖に影響するとの明確なデータ等はあるのでしょうか?

おいしさや塩分濃度と新型コロナの関連性は何を根拠としておっしゃっているのでしょうか?

どうみても、ウイルスと細菌がごっちゃになっているし、最終的にはおいしさという、誰がどう見ても新型コロナ関連とは乖離した話になってしまっています。

最後の最後まで「根拠は何?」ってことになるんだよなあ

真偽不明の情報がパニック状態に油を注ぐことは、いままでの災害時に経験済みです。正しい情報を得るためには、誰が発信している情報なのか、その発信者は信頼できる専門家であるのか、情報を取り扱っているメディアはいままでも正しい情報を発信してきたか、などなどのリテラシーが必要とされています。

名誉教授は

学校も再開します。給食担当者も新型コロナ「陰性」であることが強く求められます。そのため、行政はPCR検査を必要度の高いグループから急いで実施する必要があります。

と発言しています。

世の中を混乱に陥れるような不埒な気持ちでトンデモ発言を繰り返しているわけではないと思います。

子どもたちを新型コロナ感染から守るため、新しい生活様式における食事のデリバリー、テイクアウトの利用拡大に際しての注意点を健康面から注意喚起をしているものだと、考えます(私も最近は大人の対応ができるようになりました)。

医学的検査

検査する人(臨床検査技師)も感染を防ぐために、ここまで重装備が必要。

最後に言わせてくださいね。名誉教授のお考えと私の医学的知見を合わせて考えると、「PCR検査を必要度の高いグループ」はPCR検査に携わっている医療従事者なんですけどね⋯。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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