人に対する不信感が強いシニカルな思考回路の人ほど認知症になりやすく、死亡率も高いかもしれないかも、という論文を読んでいる最中に「ドクター中松の関係者ですけど」とクリニックに電話がありました。
泌尿器などの保険治療中心のサイト(当院では保険診療向けサイトと呼んでいます)に先日「ドクター中松が前立腺がんに⋯」というブログを書いたので、そのブログに対する苦情の電話だと一瞬思いました。そっちのブログは正しい泌尿器科の病気へ対する啓蒙活動として書いているので、disったり、おふざけは控えていますのでクレームは無いはずです。
ドクター中松の秘書の方でも来院されるのかとお待ちしていたら、なんとご本人が登場して院内スタッフ全員が目テン。読みかけの論文は「シニカルな思考と認知症そして死亡率の関係」となっていますが、ドクター中松ほどシニカルとはかけ離れた存在もありませんでした。会話中にも「このおじさんって85過ぎなのになんて柔軟な思考回路があるんだ」と感じました。
認知症に3倍なりやすいシニカルな人、死亡率も⋯
シニカルって日本語に訳す場合、「嫌みな」「ひねくれた」的な解釈が多いですが、その対義語、つまり認知症になりにくい性格を現す日本語を探しましたが明確な答えは見つけられません。でも、ドクター中松と対面して「ユーモア」と「ポジティブ」がシニカルの対義語ではないかと確信しました(このブログを読んでいる人って理系が多いのですが、もし文系の人が読んでもツッコミは禁止とします)。ユーモアを含んだ独創性溢れる発想こそ、認知症予防の特効薬なのだと考えますし、健康長寿の秘訣だと確信しました。
ドクター中松訪問の興奮も覚めやらない診療後に再度「シニカルだと認知症になりやすい」論文を読み直しました。
http://www.neurology.org/より
この研究はフィンランドにおける1449人の65歳〜79歳の人を対象に調査研究されたものです。Hostility Scaleと呼ばれる性格分析方法における「cynical distrust(シニカルな不信?)」の質問を抽出して、回答と回答者のその後の認知症の発症頻度と死亡率を調べています。
疑い深い性格だとあきらかに認知症になりやすい
質問事項に「みんな嘘つきだ」「自分の身を守るためには誰も信用しない」という答えをした人としない人を比較した場合、認知症になっていた人はシニカル派(素直でなく、疑い深い人)が3倍に達していました❗
死亡率さえ、非シニカル派の方が1.40倍低いというデータも掲載されています。ここで理系のオッサンは突っ込むでしょうね、他の因子で調整すると差がでないと論文中にありますけど、今回は無視してくださいませ。
http://biohacksblog.com/cynicism-associations-mortality-among-bad-things/より
論文は「何でも信じてしまう人が認知症になりにくい」という事を証明するものではありませんし、巷に蔓延る「ポジティブ思考が認知症予防になる」という結果も導いてはいません。
なんにでも関心を持ち、興味があることは自分で調べて自分なりの結論を引き出し、それでも足りなければ自分から積極的に知識を持っているひとに直接会い行くくらいの好奇心と探究心、そして少しの冒険心をもった人の方が認知症になりにくいという事になるのではないかと、颯爽とした洒落たオッサンであり、知識豊富だけどわからない事は若輩者である私にも尋ねちゃう、「ドクター中松こそ、認知症予防のお手本」と考えました。
ドクター中松に一つだけお願いがあります
写真撮影でピースサインをする事は私の本心では有りませんでした。ピースサインって酔っぱらったオッサンがカラオケのマイク片手に女性と写真を撮っているイメージが私の脳裏にインプットされていて、絶対避けたいショットなんです(私のこのシニカルな面が認知症を早めるかも)。
しかし、「ドクターなかまつ〜!」と言いながらピースサインをすると「つ〜!」と言った時に口元が挙るからいい写真が取れる、との中松理論に翻弄されてしまいました。確かに「チーズ」とか「いち足すいちはに〜」より、遥かに素敵な写真が撮れました。恐るべし、ドクター中松❗ユーモアとそれを裏付ける理論に全く隙がありません。
余命1.5年と宣告されたとのことですが、ぜひ反シニカルの典型であるドクター中松様、ユーモア溢れるが理論的に裏付けられた画期的な「前立腺導管がん」の治療法の研究を是非お続けくださいませ❗