「ビタミンCが新型コロナにゼッタイに効く」そんなワケ無いじゃん❗

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人間は、他の動物と違いビタミンCを体内でつくることができません。ですから食べ物から摂取する必要があります。

ビタミンCは、風邪に効く、過剰摂取しても体外に排出される特別なビタミンといった、若干神格化されている節があります。

様々な疾患に効果ありとする高濃度ビタミンC点滴や注射がありますが、それらは基本的に保険適用外、つまり標準医療ではありません。

残念なことに、新型コロナ感染症対策として、ビタミンCを大量に摂取することを推奨する情報が氾濫しています。

「ビタミンC 新型コロナ感染症」でGoogle検索してみてください。

検索結果だけをみると、ビタミンC摂っておけば安心と思ってしまうのが普通です。医師として結論から申し上げますと、ビタミンCが新型コロナに絶対に効く、は間違いです

絶対は医師が絶対使ってはいけないNGワードなんだけどねぇ⋯

久々の大型トンデモ医学系記事を見つけてしまいました。

ビタミンC過剰摂取を推奨する危険な記事
https://tinyurl.com/yb5lnvpcより短縮URLで失礼します

医師免許を取得した時点で、ほとんどの医師は間違いなく先輩医師に「絶対との言葉は使わないように」と指導されたはずです。

安易に「絶対」とのワードを使用した場合、人体の仕組みは解明されていないことが多数のため、後々のトラブル発生は必至だからです。

特に薬に関しては「絶対は絶対使ってはいけない禁忌ワード」として知られています。

この記事はオトナンサーが紹介しているリンク先の記事はこれです。

ビタミンCが新型コロナ感染症対策になると決めつけた記事
https://otonanswer.jp/post/66490/より

「ゼッタイに効く」と「期待し得る」では全く違う意味だと感じるのは私だけ?

どちらにしてもビタミンCが新型コロナの感染予防、あるいは新型コロナの治療に役立つ可能性に触れた記事であることに間違い無さそうなので、興味深く読ませて頂き、私なりの解釈を行って参ります。

ビタミンを激推、オーソモレキュラーの芳ばしい香りが

新型コロナ対策として、ビタミンの摂取を強く推奨しており、食物で新型コロナに対して効果がある量を摂取するのは無理、だからサプリメントからビタミン、特にビタミンCを摂りましょう、との論調です。

新型ウイルス対策として5種類の栄養素を推奨しました。その筆頭が、ビタミンC(VC)です。VCの推奨摂取量は成人で1日当たり3000ミリグラムです。食品から取ろうとすると、アセロラやケールなどVCが豊富な食品でも2~3キログラムの量で現実的ではありません。サプリメントからの摂取を考えざるを得ないでしょう。

ここまで読んで、ビタミン摂取によって様々な病気を治しちゃうと主張している分子矯正医学・分子整合栄養医学(orthomolecular、オーソモレキュラー)と呼ばれる標準医学ではない、普通はトンデモ系医学と呼ばれている流派の芳ばしい香りが漂ってきました。

なぜなら食品から摂取することが推奨されているビタミンCの量は常識的には成人で1日100㎎とされています(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所等による)。

さらに1000mg/日以上は意味がないことも、知られています。大量のビタミンC摂取を医学的根拠なく推奨するのがオーソモレキュラーの特徴です。

オーソモレキュラー界隈ではビタミンCによって免疫力アップ的な医学的に証明されていないトンデモを主張する医師の一派が存在しています。ひどいのになるとビタミンCを大量に摂取することで、がん治療まで推奨している医師もいます(どっからその強気の自信が出てくるのか不思議)。

オトナンサーの記事をスクロールすると、やっぱり登場しました、「国際オーソモレキュラー医学会」との名称が。

オーソモレキュラーに関したは以前このような記事を書いています。

トンデモさんからのDM、オーソモレキュラー療法セミナーのお誘い。

トンデモさんからのDM、オーソモレキュラー療法セミナーのお誘い。

お時間のある方はぜひお読みください。

オーソモレキュラーはビタミンCが新型コロナ重症例に効果があると唱えるけど

記事によれば国際オーソモレキュラー医学会が新型コロナ感染症肺炎(へんてこな感染症) の治療としてビタミンCを推奨しているそーです。ビタミンCをへんてこな感染症治療に投与する理由として

VCには免疫物質であるインターフェロンの生成促進、白血球の能力強化、感染症のストレスで負担のかかる副腎のサポートなど免疫力を上げるための多くの作用があります。

とのこと。

えええっ❗ビタミンCでインターフェロンの生成促進って本当かよ(私は泌尿器科医であり、腎がんの治療として以前インターフェロンを使用した経験は多数あります)。

おいおい、ビタミンCで白血球の能力強化ってどんな理屈なの〜❗

さらにさらに、ビタミンCで感染症のストレスで負担のかかる副腎のサポートってなんだよ〜❗

と、免疫関係の知らないことがビタミンCが新型コロナ対策として効果があることが羅列されています。

私は素直に自分の勉強不足を恥じ入り、ビタミンCが免疫力アップ(このワードが怪しい)効果があり、新型コロナに「ゼッタイに効く」のか、顔を洗って出直すつもりで自分なりに調べてみました。

そもそも免疫がつきすぎちゃうことがへんてこな感染症を重症化させ、死に至らせるとの考え方もあるのですが⋯

ここで注意喚起をしておきます。取材に応じた医師(医師と書かれていますが、歯科医師のようです)は

手洗いなどは別として、新型コロナの予防法や治療法で「確実に効く」と証明されているものは他にはない

と述べています。

確実に効くとの証明が無いのに、「いまトピライフ」は「ゼッタイに効く」とタイトルに書いています、これはかなり問題を含むのではないでしょうか?

画像
朝日新聞デジタル「新型コロナ感染症報道で訂正続発 増える現場負担、厳しくなる視線」(https://digital.asahi.com/articles/ASN5X5RSGN5VUCVL025.htmlより)。

新型コロナ関連で医師の言質が取材した側の都合や思い込みによって切り取られて使用されることが、新型コロナ問題をさらに深刻にしていことが報じられています。

話を進めます。

インターフェロンへの疑問

ビタミンCが生産に関わっているとされるインターフェロン(Interferon、略してIFN)はサイトカインの一種類です。NHKが新型コロナ騒動の初期に取り上げたことで広く知られるようになった医学用語で「サイトカイン・ストーム」(cytokine storm)があります。

このサイトカイン・ストームは血中のサイトカインが暴走してしまうことによって引き起こります。サイトカイン・ストームが起こると、血液の凝固系に異常が発生して血栓を作り出し、それによって心筋梗塞・肺塞栓・脳梗塞になってしまいます。へんてこな感染症で死亡された方を解剖させていただくことによって、心臓や肺や脳に血栓があった症例が報告されています。

白血球の能力強化への疑問

ビタミンCの白血球への作用として、白血球中の好中球・リンパ球等生産と機能強化があるとオーソモレキュラーの教科書的な「Linus Pauling Institute」のサイトでは説明されています。まあ、このライナス・ポーリングって方がオーソモレキュラーを権威あるもの風にしている困ったノーベル賞ダブル受賞者なんですけどね。

細菌による感染症の場合、好中球を中心として白血球が大活躍します。ウイルス感染の場合の白血球中のリンパ球の一つである「細胞傷害性T細胞」が中心となっています。細胞傷害性T細胞は感染した細胞を破壊し(これを細胞性免疫と呼ばれています)、リンパ球性炎症が引き起こります。これを前掲の歯科医師は「白血球の能力強化」と表現しているのでしょうか?

インターフェロン等のサイトカインは白血球から分泌されます。白血球が能力を強化してサイトカインを必要以上に大量に分泌したらサイトカイン・ストームが起きてしまうのでは、たぶん、私は今夜眠れなくなってしまいます。

副腎のサポートへの疑問

ビタミンCが感染のストレスを受けた副腎をサポートする、とのメカニズムは私の知識では全く理解できません。ひょっとしてトンデモ医学のお約束である「副腎疲労症候群」とやらのことなんでしょうか?

医師が知らないニセ医学【その5】副腎疲労ってなんじゃ⁉

医師が知らないニセ医学【その5】副腎疲労ってなんじゃ⁉

副腎疲労に関しては以前書いた↑の記事を参照してください。

免疫は複雑なシステムです。私は巷にあふれる「免疫力を上げる」「免疫力アップ」をトンデモ系ニセ医学を見分けるリトマス試験紙的ワードとだと考えています。

メモ

やたらめったら免疫力をアップさせることは、へんてこな感染症の死因になっている可能性もあるのです。だからこそ免疫抑制剤のアクテムラ(一般名トシリズマブ)の重症へんてこな感染症肺炎治療効果に期待が寄せられ、治験がおこなわれているのです。

海外でも免疫力をアップする方法は問題視されています

次のような論文が新型コロナが世界中に拡散される前の2019年7月25日に投稿されています。

「Boosting the Immune System, From Science to Myth: Analysis the Infosphere With Google」(PMID:31403046)、タイトルはGoogle翻訳を使うと「科学から神話まで免疫システムを後押し:Googleで情報圏を分析」です。

この論文は初っ端から免疫を高めるとのワードは人気があっても、免疫システムに効果がある医学的根拠のある方法はワクチン接種である、と述べています(オーソモレキュラー界隈ではワクチン忌避派も少なくありません)。

免疫力をアップさせるために医学的根拠の無い方法を行っている人がワクチン接種を怠る傾向を嘆いている論調です。この論文では注意が必要なワードとして“how to boost immune-system”(免疫力をアップさせる方法) を挙げている点にご留意ください。

海外でも日本同様に免疫をアップ(boostと同じと捉えて間違いはありません)をさせる方法の怪しさが問題になっているのですね。

米FDAもビタミンC摂取が新型コロナ感染症対策にならないと注意喚起

新型コロナ対策としてビタミンC摂取に対して、米国のFDA (U.S. Food and Drug Administration)は注意喚起情報を出していることを総論的にお伝えしておきます。

ホメオパシーと並んで、ビタミンCとビタミンDのサプリに対しても注意喚起をしています。

新型コロナ騒動の最中に消費者庁がこのような文面を公表しています。

新型コロナに対する予防効果を標ぼうする商品の表示に関する改善要請等及び一般消費者への注意喚起
消費者庁「新型コロナに対する予防効果を標ぼうする商品の表示に関する改善要請等及び一般消費者への注意喚起について」より

この中で

新型コロナ 感染予防サプリメント❗ ビタミンCとビタミンD・ビタミンCは新型コロナ感染症ウイルスから体を守る・新型コロナ感染症ウイルス対策サプリ、ウイルス感染症の予防、症状軽減にはビタミンC、ビタミンD、亜鉛、マグネシウム、セレンの摂取が重要

https://www.caa.go.jp/notice/assets/200310_1100_representation_cms214_01.pdf

この表現は景品表示法(優良誤認表示)及び健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)に抵触するため、消費者へ注意喚起を行っています。

まだまだ世界的には拡大している新型コロナ禍、このような非常事態に対して烏合無象の怪しいトンデモ系ニセ医学が跋扈していることに注意が必要です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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