ポリフェノールが健康に良いらしい、特に心血管系の病気になりにくいので長寿につながることを裏付ける医学論文は多数だされています。
特に赤ワインに含まれるポリフェノールのなかでレスベラトロールは長寿遺伝子のスイッチをオンにすることが示唆されていて、レスベラトロールの効果は医学論文でも証明済み、と考えている方も多いと予想します。
ポリフェノールの代表、レスベラトロール惨敗
今回はある研究によってレスベラトロールは死亡率に全く影響を及ぼさなかったし、心血管系に影響しないし、ガンも予防しなかったという赤ワイン健康論者にとっては痛い論文が登場しました。
実は以前から長寿遺伝子(サーチュイン遺伝子)はポリフェノールによって活性化しないという論文も有りました。
Nature. 2011 Sep 21;477 (7365) :482-5.より
これは動物実験ですが、今回の「長寿とレスベラトロールは関係ない説」は人間を対象とした疫学的研究です。前向きのコホート研究ですので、反論するのは結構至難の業です。
赤ワインにたっぷり含まれるレスベラトロールですけど⋯
ネズミと人間って遺伝子は数%しか違いませんので、可哀そうですけど医薬品の実験に使われてしまいます。長寿遺伝子とよばれるサーチュイン遺伝子がポリフェノールの1種類であるレスベラトロールによって活性化されることは動物実験で証明済みとしても(もちろん前述の論文のような反論もあり)、ネズミの体重を人間に換算した場合、赤ワインで考えた場合毎日100本近く飲まなければならないことになります。
フレンチパラドックスと呼ばれる「脂質をたくさん食べるフランス人がなぜ心血管系の病気になりにくいか?」って話ですが、この話が出回った時点で多くの医学的知識があり、統計学を理解している人は「心臓病になるまえに肝硬変で死んでんじゃないの」とレスポンスしたものでした。
その後大掛かりな研究調査によって、多くの品数の食品類をストレスなく摂取する「地中海ダイエット」とか「地中海食」はそれなりに健康には良い、という結果に落ち着いていたところにこんな論文の登場です。「Resveratrol Levels and All-Cause Mortality in Older Community-Dwelling Adults」8JAMA Intern Med. Published online May 12, 2014. doi:10.1001/jamainternmed.2014.1582 )。研究の対象はイタリアの65歳以上の783人です。
- 1998年から2009年の観察期間に268名が死亡していた
- 尿中のレスベラトロールはワインの飲酒量と関連があった
- レスベラトロール(尿中)と心血管系の病気やガンは関連無かった
ということが判明しました。さらに問題となる長寿つまり長生きとレスベラトロールの関係については尿中レスベラトロールと死亡は有意な関連が無かったというポリフェノール神話にとっては悲惨な結果が導きだされたのでした!
レスベラトロール3000万ドル市場は大打撃か⁉
今回の論文はレスベラトロールのサプリなんて摂取しても、皆さんが望んでいるような効果は全くありませんよ!ということになります(注意 私がいっているわけではありません 汗)。
米国のサプリ業界の効果・効能に対する理論はそんじょそこらの医師では太刀打ちできないほど見事なものです。米国内でレスベラトロールサプリの市場は3000万ドルと言われていて、ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームはそんな巨大産業を相手に勇気がある、と関心したのですが、よくよく考えてみると3000万ドルって30億円ですよね〜。かなりちっぽけな市場ですので、レスベラトロールってアメリカではもともとあまり売れていなかったんじゃないのかな?
一方、外資系製薬会社のインチキ降圧剤論文事件ですが、日本だけで1400億円も最盛期には売れていました。私もサプリなんて小さな悪は大人の対応で見逃して、巨悪である製薬メーカーのデタラメにメスをいれようと決心しました❗っていうか既にdisっていたか。笑(保険適応がある某ニキビ治療薬の名前で検索すると、副作用を警告した私のブログが一時期メーカーのオフィシャルサイトより上位表示されていましたから)