毎年、暑くなってくると「プール熱」って病気が子どもの間に流行することが報道されます。米国ではプールの半数以上が大腸菌に汚染されていた、なんて報道もありましたが、日本のプールは諸外国に比べて清潔な状態が保たれているのになぜ本年2014年も「プール熱」が問題とされるのでしょうか?
本記事の内容
プール熱って単なるウイルス性の感染症なのです、感染力が強いのが問題!
2014年東京でも大流行の兆しがある「プール熱」は咽頭結膜熱が正式名称です
病気の名前から病状を察することができます。まず、原因のアデノウイルスですが、細かく分類すると50種類くらいの型に別けられますので多くの病気を引き起こす原因となっています。その中の3型が原因となるものが「咽頭結膜熱」で名前のように喉の粘膜と目の結膜においてウイルスが増殖して全身症状を引き起こします。
ちなみにアデノウイルスによって引き起こされる「はやり目」と呼ばれる感染症は正式名称「流行性角結膜炎」はアデノウイルスの8型が原因となっています。はやり目にしろプール熱にしろ感染力が強いために免疫力の弱い幼児・子どもを中心として流行し、感染拡大しやすいために問題となるのです。気になる病状は突然の高熱と喉の腫れ、結膜の炎症が主なものなのですが、この三つの症状が同時に出現することは少ないために開業医にとっては通常のカゼとの鑑別診断することが難儀になっています。
もちろん子どもばっかり診察している地元の小児科的存在の医師なら自分の守備範囲ないの学校・幼稚園の流行状況を把握しているために、同じ様な症状の子どもの患者さんが増えると「プール熱がこの周囲の学校で流行している」と判別できます。昔は校医を主治医としていたご家庭も多かったのですが、小児科医不足と呼ばれる東京でも住宅地周辺には小児科を標榜しているクリニック・医院が多いので地域の流行の度合いを計り知ることが難しくなっています。
プール熱の治療は単に対症療法になってしまいます
カゼなどのウイルス性の感染症はインフルエンザを除いて特別な治療法は確立されていません(インフルエンザに対するタミフルの効果さえ疑問視されています)ので、治療は対症療法となってしまいます。痛みや熱に対して消炎鎮痛剤、解熱剤を投与して様子を見るしかないのです。しかし、
小児に対する安全性の確実なエビデンスが存在する痛み止めや熱冷ましの薬ってほとんどありません。
大人の場合、治験などによって薬の効果や副作用を調査することができますが、子どもに対して治験をおこなうことは「人体実験じゃん」といわれますし、万が一副作用があった場合の人道上の問題点を含むからです。なかにはあのマイケル・ジャクソンが愛用していた(?)「プロポフォール」という鎮静剤を小児に使用して、患者さんが亡くなってしまったと言う痛ましい事故も起こっています。
プール熱の流行を防ぐためには
プール熱はプールに入ることによってだけ感染してしまうわけではありません。感染者が使用したタオルや一緒にお風呂に入ることでも移ってしまいますので、兄弟で感染者が出た場合は気をつけてください。神経質な考え方かも知れませんが、感染者が触れた本、ドア、玩具に付着したウイルスも感染源となってしまいますので、インフルエンザ流行時の対策と同様にしっかりと手洗いをする、ということに限ります。梅雨時は寝苦しい時期でもありますので、十分な良好な睡眠が取れないために免疫力が落ちがちですので、小さなお子さんのいるご家庭は生活パターンが乱れないようにしましょう。
プール熱は症状として喉がはれ、目が真っ赤になって高熱がでるために、保護者としてはいたたまれないくらい心配な病気ですが、細菌類による二次感染で扁桃周囲炎や肺炎にならない限り、生命を脅かすことはありませんので、冷静な対応が必要となります。ついでに言えば「プール熱」と診断されたら学校やお稽古は休んでくださいませ、4日程度で症状は回復しますので。