「お薬手帳を断ろう!」という動きは当然です、本来の機能を果たしていないんですから!

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病院や調剤薬局で「お薬手帳はお持ちですか?」「お作りしますか?」と聞かれたことが1度はあるはずです。

まるでお店のポイントカードみたいな扱いのお薬手帳ですが、ネット上で「お薬手帳を断ると、支払いが20円安くなる」という情報が拡散されちょっとザワつきました。※2016年4月からは「お薬手帳を6ヶ月以内に同一薬局に持参した場合に自己負担金額が安くなる」よう制度が変更

薬局をはじめ多くの医療関係者がお薬手帳の重要性を訴えているようですが、医師として意見を述べさせてください。いまのままのお薬手帳なら、断る動きには私は納得です。

そもそも「お薬手帳」ってなんのためにあるの?

お薬手帳という制度(薬が処方された場合に薬の種類とか飲み方を書いたシールを貼るための手帳)はある事件が切っ掛けになっています。1990年代に抗ウイルス剤と抗がん剤両者の処方を受けた方が15名も亡くなった事件がありました。薬の相乗効果によって副作用が強く出てしまったのが原因でした。

抗ウイルス剤と抗ガン剤を処方した医師が同一人物であれば起こりえなかった事件ですが、患者さんが他院で処方されている薬を把握することによって防げる問題だったために「お薬手帳」に処方されている薬全部の記録を残す手段として導入されました。

飲み合わせの問題や今までどのような薬を飲んで来たかが一冊の手帳で把握できる

本来ならば患者さんにとっても、医療機関にとっても有効な対応手段になるはずなんですが⋯。

多くの患者さんが「お薬手帳」は持参しないで医療機関を受診しています。

お薬手帳の問題点

お薬手帳に薬の記録を残すために調剤薬局などでシール状のものを渡された経験が有ると思います。これは何も調剤薬局がサービスで行っているわけではなくしっかりとお金を取られているんです。

本来はもともとサービスとして始められたもの

当初は患者さんのためのサービスだったのです。ですが2000年から「手帳記載加算」という医療費が徴収できる制度になりました。

さらに2014年4月からは調剤薬局で徴収することができる「薬剤服用歴管理指導料」という医療費がお薬手帳を持っていると、持っていない場合より70円高くなる制度が定められました。
・薬手帳持参⋯410円なので3割負担だと130円
・薬手帳なし⋯340円なので3割負担だと110円

必要ない医療費20円を支払わないで済むように「お薬手帳断ろう」ツイッターなどで情報が拡散しています。お薬手帳の意義云々ではなく節約術・生活の知恵として広まったようです。

ある意味いつも同じ薬である薬が処方されているのに、毎度同じシールを貰って20円徴収されるのは無駄なのではという当然の意見だと思われます。

おくすり手帳で利益が有る人と無い人

当院を受診する患者さんでもお薬手帳を持参してくれる人もいますし、もっていても持参忘れって場合もあります。一番多いパターンが数カ所の病院・クリニックを受診しているために複数のお薬手帳を持っているという人です。大病院の場合は「門前薬局」とよばれる調剤薬局がズラッと並んでいるために、患者さんとしては待っている人が少ない、待ち時間が短くて済みそうな薬局を選択する傾向があります。

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となると、一つの病院に掛かっていても複数の薬局で処方を受けてしまい更にお薬手帳の本来の機能をご存じないために新たにお薬手帳を出してもらうなんて無駄であり、混乱を招く事態が生じてしまいます。

複数の医療機関を受診している人は一冊のお薬手帳で全ての服用している薬を記録として残せば、薬の相互作用によっておきる副作用を防げますし、緊急的に入院する事態に陥ってもどんな薬を常用していて、どんな服薬歴があるのかが把握できますので、医師側にとっても患者さん側にとってもベネフィットがあります。

滅多に医療機関を受診しない元気な人がカゼを引いた場合にワザワザお薬手帳を出してもらって服薬情報を貼付ける必要ってあるんでしょうか?次回、医療機関を受診するのは数年後なんて人の場合、せっかく貰ったお薬手帳なんてどっかに無くしているんじゃないですか??

当院が院内処方にこだわる理由

当院は事務機器からレセプトはもちろんのこと電子カルテも早期導入しています(単に私が新し物好きって理由もありますが)、しかしながら薬は医師が直接患者さんにお渡しすると言う昔ながらのやり方を頑に守っています。さらに薬を入れる袋に薬の名前と飲み方を医師が手書きで記入します。

大昔だったら薬価差益という利点があったかもしれませんが、今ではデッドストックを抱えるという点で医療コンサルが絶対導入してはいけないといっている「院内処方」です。

高熱や痛みを伴う病気でクリニックを受診して、処方箋を貰って体調が悪いなか、わざわざ近くの調剤薬局にいって薬を貰うのって単純に考てツラくないですか??私には似合わないとご批判を受けることを覚悟して言わせてもらいます、

「医療で重要なことは愛です❗」

恥ずかしい。笑

追記

一部で院内処方の方が儲かるんじゃないの的な話がでていますが、在庫を抱える金銭にはデッドストック・期限切れなどでキャッシュフローが悪くなり、医院経営上は非常に不利なんです。4月の消費税アップで医療費は増えるのか、減るのか?をご参照ください。(2014年11月21日)

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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