新型コロナにまつわるニュース・テレビ番組の内容はいったい何が正しいのか分かりません。未知のウイルスが故に対応が難しく日々新たな情報が発信されるものの、不確かな情報・間違った情報・希望的観測・悲観的観測が入り乱れたカオスな状況です。
ですが、明らかに間違った情報だけは明確にできます。伊藤隼也氏による「新型コロナの本当の話」という本が出まして、その中身は医師としては取り上げずにはいられない危険な内容でした。
本記事の内容
厚生労働省が激オコした、例の自称医療ジャーナリストの新刊本を読んで
以前から自称医療ジャーナリストと、ほとんど固有名詞化した呼称で世間を賑わせている伊藤隼也氏の新刊が出版されました。
内々では伊藤隼也氏は自称医療ジャーナリスト界のショーンKとも呼ばれています(大丈夫かあ、「とくダネ!」)。
「誰も言わなかった」とのサブタイトルが添えられていますけど、まっとうな医師および医療関係者であったら、著作にあるようは発言は恥ずかしいから言いません、つまり「誰も言わなくて当たり前」なのです。
言論の自由、出版の自由は民主主義国家では守られなければなりません。しかし、Twitterであろうとワイドショーにおける発言であっても、世間中が敏感になっている新型コロナ関連に対する発言は慎重に行うことが求められています。
伊藤隼也氏は先日、根拠のない話をワイドショーで披露して厚生労働省が激オコしました。
厚生労働省 新型コロナ感染症に関する「とくダネ」報道を否定 支援交付金「特定のメーカーを名指し」などの発言
https://www.sponichi.co.jp/etertainment/news/2020/05/11/kiji/20200511s00041000331000c.html
私は伊藤隼也氏には当然Twitterではブロックされていますので、伊藤隼也氏の発言はスクショあるいは著作からの引用であることをお許しください(伊藤隼也氏にブロックされて医師として一人前との格言もあります)。
検証不可能な怪しげな情報源からの話をもっともらしく語り、さらにちゃっかりと効果効能が明確ではない医療機器を推奨してしまうという無責任な態度をどうしても書き留めておきたい、書き留めておかなけならないと、私は誰に頼まれたわけでもない使命感をもってしまいました。
では伊藤隼也氏の新刊本「新型コロナの本当の話」を見ながら(読みながらじゃないよ)を検証してまいります。
※伊藤隼也氏の新刊本、しっかりとamazonで中古品ではなく、プロパーで購入しました。
気になるところというか、医学的にへんだなあ、と感じているページにポストイットを貼ったら、こんな状況に⋯。
宅配便から新型コロナが感染、そのようは報告は無いのですが
このようなツイートがありました。
たぶん、必要以上に新型コロナ感染を恐れている方のツイートだと思われます。
これに対して伊藤隼也氏は次のように引用ツイートしています。
医療機関でさえ、今現在入手困難であるアルコールで宅急便の消毒を推奨しつつ、「オゾン機器」での消毒をおすすめしていますね。なんでここでいきなりオゾン機器での消毒が登場するのか、私的には疑問だったのですが、今回入手した伊藤隼也氏の著作を読んで、はじめて伊藤隼也氏とオゾン機器の関係が理解できました。
新型コロナの危険性を煽りながら、オゾン消毒器を推奨?
こんなツイートがあります。
オゾン消毒器が病室やPPE (個人防護具)を安全に除染できると述べています。へんてこな感染症(伊藤隼也氏はなぜか「covit」とタイポしていますけど)に対するオゾンの除染効果が2ヶ所の大学医学部で(医学部の病院とは記載されていない)で実験が始まることをツイートしつつ、すでに医療現場でオゾン消毒器が投入されいるともツイートしています。
リンク先を見てみると⋯北播磨総合医療センター(http://www.kitahari-mc.jp/)のサイトに飛ばされます。確かに北播磨総合医療センターでは
院内消毒は清拭による消毒を徹底し、併せて、オゾン除染装置を導入し、感染リスクのある全19室の除染作業を3月15日から実施し3月18日には完了させています。
と「診療の段階的再開について」についてのページに記載されています。
でも、もう一つのリンク先を見てみると「タムラテコ」という会社のこんなページに飛んじゃうのです。
なーんだ、伊藤隼也氏はある特定のオゾン殺菌消臭機器メーカーと深い関係があるのか。でも、その関係を調べるのは私の守備範囲外ですから、これ以上の検証はやめておきます。
そもそもオゾンによって新型コロナが不活化あるいは失活することは科学的にファクトなんでしょうか?
ちなみに紫外線は新型コロナを不活化させることは、大方の科学者や医師が認めていますが、あくまで紫外線が照射された部分であって、影になった部分への効果は期待できません。
医療機関が本気で感染を防ぐために、その効果をオゾンに求めたとは思えないのですけど⋯。
ほかのオゾン関連機器を製造している会社はこのように述べています。
さすが日本を代表するトヨタの関連会社です。きっぱりとオゾンが新型コロナへの不活化効果は現時点では確認されていないことの見解を表明しています。
前掲のドアの前に置かれた商品から新型コロナに感染したのでは、と心配した方へ「はい、正解でしょう」と物品の消毒、それもオゾン機器をつかっての消毒を自慢気に披露している伊藤隼也氏です。
私が調べた限りでは、購入した商品から新型コロナ感染が考えられる報告は見当たりませんし、東京都もこのように述べています。
現在のところ、中国やウイルスが見つかったその他の場所から積み出された物品との接触から人が新型コロナに感染したという疫学的情報はありません。一般的に新型コロナ感染症ウイルスは、手紙や荷物のような物で長期間生き残ることができないとされています。
東京都「新型コロナ感染症FAQ(よくある質問)」
BBCも新型コロナ感染拡大下における買い物の注意を促してはいますが
Online advice for food businesses says: Food packaging is not known to present a specific risk.
「食品の包装が感染リスクをもたらすことは知られていません」と報じています。
伊藤隼也氏はどこから宅配便が新型コロナの感染源となるとの話を仕入れたのか、非常に気になるところです。
まさか、オゾン消毒器の販売に貢献するためのツイートでは無いですよねえ⋯。
伊藤隼也氏のジャーナリストとしての特徴が良くわかるエピソードがあります。
著作のP91で新幹線が密閉空間であり、東京-名古屋間ののぞみが一番危ないかな、とツイートしたことが記載されています。
あのね、新幹線って数分間で車内の空気が全部入れ替わるんだよ、ちょっと調べればわかることだし、新幹線の車内アナウンスでも告知しているんだけどなあ⋯つまり、思いついたこと調べもしないで、自分で検証もしないでツイートして、それを本に仕上げてしまう。
参照:JR東海 新型コロナ感染予防について(https://jr-central.co.jp/notice/detail/info_00043.html)
ツイートはまあ「つぶやき」だから良いとしても、本にする時にご自分のツイートの矛盾点や間違いをチェックしなかったのですかねえ。つまり、ジャーナリストとしてファクトチェックする、一番大切な作業を端折っているように感じました。
自分を自分で褒め称えているTwitter集で構成された稀少本
伊藤隼也氏の新刊本ですが、ご自分のツイートと引用ツイートで構成されています。
私はtwitter上では彼にブロックされているので彼のツィートを拝見することはできません。ですので今回の書籍は貴重な資料にはなりました。
しかし、ブロックされていない方は、伊藤隼也氏のツイートを見ればいいだけなので、「ぜひ、ぜひ購入を」とか「これは必読です」とは言えません。
まだまだ新型コロナ騒動が収まらない真っ最中にこのような著作を出される勇気は称賛されることなんでしょうけど、著作でしきりにN95不足を訴えつつ、医療関係者では無いご自分が外出時にN95を使用する感覚が信じられないのです。
マスク不足を知りながらN95を使ってしまう素人さん
2020年3月9日にはエタノールがないことに関して以下のようなツイートをしています (p110) 。
エタノール不足をご存知なのに、自分は宅配便をエタノール消毒しちゃう余裕の生活、どこでそのエタノールを手に入れたのか、かなり気になります。
私はいままでこの伊藤隼也氏をいろいろと批判していきましたが、本当にこの人はダメな人、信頼できない人と感じたのはこれです。
2020年3月17日
久しぶりに丸の内線に乗る。N95マスクと手袋。相変わらず混んでいるので何台かやり過ごすが窓をなんで開けないのか?開かないのか?
とツイートをしています(p131) .
伊藤隼也さん、N95マスクが医療機関で不足していることを知っているのに、ご自分は気軽な外出にどのようなお考えでN95マスクを着用しているのでしょうか?
ぜひ、回答をいただきたいところです。
伊藤隼也氏は今後は「ムー」に寄稿すればいいじゃん、とツイートしたところ、「ムーはオカルトは掲載するけど、デマは掲載しないよ」とのリプがありました。ムー編集部の方、謝罪いたします。