マスクダイエット、効果があったら世界の健康問題が解決するかも?

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医療機関はまだですが、一般のマスク入手できない問題も徐々に解消しつつある中、ダイエットに関するお話。

マスクとダイエットなんて関係ないと誰もが鼻で笑うことでしょう。ですが、テレビにも多数出演されている某有名医師が薦めているのです。さて本当にマスクつけるだけでダイエットできるのでしょうか?夏に不織布マスクしていたら、めちゃくちゃ汗をかくことは必至ですが⋯

外出自粛で運動不足が気になる中、ついついお菓子などを食べすぎてしまっている方も多いはず。マスクつけるだけで痩せることができるのか否か、検証します。

マスクつけるだけダイエット、これが本当なら世界中から肥満が解消するかも

海外では特異な目で見られがちであったマスク姿も当たり前のようになりつつある今日このごろです。マスクと言っても大まかに3種類に分けることができると考えています。

まずは現在世界中で不足しているN95と呼ばれる特殊なマスク、医療関係者が使用するサージカルマスク、そして一般の方が使用するマスクがあり、それぞれの目的や効果には違いがあります。

N95マスクは医療従事者がウイルスなどの極小の物質を吸い込まないことを目的として設計されたマスクです。

サージカルマスクは「surgica musk」であり、外科手術用のマスクを意味しています。目的としてはマスクをした人(医療従事者)の呼気に含まれる飛沫による汚染から患者さんを守る、そして、患者さんの飛沫や血液から医療従事者を守る、この2つです。

一般の方が使用するマスク(今回、国から配布された布マスクなど)はなんらかの感染をしている人が着用することによって、周囲に飛沫を拡散させない、つまり第三者を感染させないためと考えられます。

私の書棚にこのような健康系一般書籍があるのですが、話題にしたくてもちょっと話題にできない雰囲気が漂っていたので、避けてきました。

マスクつけるだけでダイエット本

amazonで発行されたら速攻で買った。「マスクつけるだけダイエット」。これをお書きになった呼吸器の名医(本に書いてあるんだもん)がテレビに出まくっていましたからね。右のガーゼマスクはお国から頂いたものです。

もしも、このマスクをつけるだけでダイエット、が本当に効果があるのであれば、世界中の人々がマスクをしている状況下を考慮すると、たぶん近い将来、肥満症が世界中から消え去ってしまうことになるような気がするのは私だけなんでしょうかね?

うわっ、ダイエット目的でN95マスクを推奨しないで欲しいのですが⋯

外出自粛生活が長引くと、時間つぶしに料理に凝りだすひとも多く見受けられます。料理に凝りだすと、包丁から鍋までなんとなーくプロユースのものが欲しくなってしまうのは人情なんじゃないかな。

マスクを着用するとなると、いままで使っていた普通のマスクより、サージカルマスクが欲しくなり、サージカルマスクを着けなれてくると、今度はN95マスクが欲しくなるのは、人間の欲望として当然の流れです。

マスクをするだけでダイエットが可能、との一般書籍ではどうみてもN95マスク着用を推奨しています。

だって、マスクがおまけに付いてきちゃいますから(本文中では「このマスクはN95に準じる素材を使用しています」的なことは書かれいるけどね)。

ここで一つ思い出しました。この本の著者はしきりにPCR検査の普及をワイドショーで主張していたのと同時に、N95マスクなどの医療資源枯渇も訴えていなかったっけ?

本のおまけにN95に準ずる素材で作ったマスクをつけちゃうくらいなんだから、おまけのマスクを製造したメーカーから供給してもらえば良かったのに、それこそ「売るほどある」のですからね。

マスクをするだけでダイエットは可能か?

ついついN95マスク不足で感情的になってしまった。今回のブログはマスクをつけるだけでダイエットは可能であるかの検証が目的でした。マスクでダイエットが可能なら、さらに世界中の人々がマスクを着用してる状況が続くのであれば、将来的には世界的な健康問題である肥満も解消してしまうはずですよね。

日本の研究でもBMIが30を超えると以下のように死亡率は統計学的に優位に高まることがわかっています。

肥満指数と死亡率の関係について

国立がん研究センター 予防研究グループ 「肥満指数と死亡率の関係について」(https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/250.html)

痩せすぎも死亡率が高まる点に注意が必要です。

世界的にもこのような報告がなされています。

肥満関連の疾病が大半の国で死亡原因の上位3位以内

THE WORLD BANK 「肥満関連の疾病が大半の国で死亡原因の上位3位以内に」(https://www.worldbank.org/ja/news/press-release/2020/02/05/obesity-related-diseases-among-top-three-killers-in-most-countries-world-bank-says)

肥満は、生産性を低下させ寿命を縮め、障害を増やし保健医療コストを膨らませるなど、国の経済と人的資本に多大な影響を及ぼす。途上国では今後15年間に、肥満の代償は合計で7兆ドル以上に上るとみられている。

とも述べられています。

高所得国であろうと、低所得国であろうと、肥満は世界的に健康問題であり、経済問題にもなっているのです。

マスクをつけるだけでダイエットが可能なのであれば、肥満という世界中の国々が頭を抱えている問題が一気に解決に向かうはずです。

N95に準ずる素材で作られたオマケのマスクの効果は⋯

呼吸器の名医が書いたとされる前掲の一般書籍にはおまけというか付録でN95に準ずる素材で作られたとの説明されたマスクが付いてきます。

この本、3年ほど前に出版されたものであったために、マスクの現物はどっかに無くしてしまったためお見せすることができなくて非常に残念です。

ちなみに付録のマスクは「Made in China」であったことだけは記憶しています。中国製でN95に準じたマスクとなるとKN95マスクがあるのですが、このKN95マスクは問題含みなのです。

KN95マスクはN95マスクと同等の医療的効果があるかについては以前から問題視されていました(ダイエット効果については不明)。

2020年、世界中を混乱に陥れた新型コロナの蔓延における、N95マスク不足対策としてKN95マスクへの評価はこのように一般の医療従事者は受け止めています。

N95マスクの再利用について

日本救急医学会「N95マスクの再利用について」(https://www.jaam.jp/info/2020/files/info-20200428_1.pdf)

KN95マスクなどの医療用マスクもN95マスクに相当するものとして取り扱い、活用するよう努めること (米国 FDA は、KN95 マスクなどの医療用マスクの使用方法に関して緊急使用承認 (EUA) が与えられたところ。)

今まではKN95マスクはN95と同等には考えられていなかったけど、非常事態だから使わざる得ないよね、的と解釈できます。

さらに再利用する場合、安易に洗ったり消毒してしまうことへの危険性を学会や厚労省が医療関係者に注意喚起しています。

しかし、このN95に準ずるマスクは大問題を抱えているのです。

米国食品医薬品局 (FDA)や米国のCDC (Centers for Disease Control) は4月中旬からKN95マスクの効果を検証していたところ、新型コロナを防ぐ医療的な基準を満たしていなかったことがわかっています。

The NewYork Times 「F.D.A. Bans Faulty Masks, 3 Weeks After Failed Tests」による。

CDCが公表したデータ類はこちらを↓

画像

https://www.cdc.gov/niosh/npptl/respirators/testing/NonNIOSHresults.html

FDAは質が悪いとの理由で中国のKN95マスクを取り扱っていた80社中、65社以上に米国に輸出することを禁止しました。

ダイエット効果に関して述べるはずが、なんだか変な方向に話がそれてしまいました。

最後にTV出演の多いセンセイが出版された「マスクつけるだけダイエット」に関して、私が言いたいことを3つにまとめます。

まとめ

マスクをするだけでダイエット効果を期待するのは無理難題。

世界的にN95マスクが不足していますので、一般の方はできるだけご利用を控えてください。

マスクをオマケにつけたダイエット本、N95に準ずるマスクでウイルスがブロックできる(p22など)と書いてしまったり、再利用をすすめたり(p52) しちゃって大丈夫なの?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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