低線量被爆によって鼻血がでるという表現で批難が集中した「美味しんぼ」ですが、放射線を多量に浴びて骨髄がダメージを受け、血を止める働きがある血小板が減って鼻血がでた、という話であればこのような事態には陥らなかったと思います。
本記事の内容
美味しんぼ鼻血事件で普通の鼻血、病的な鼻血について考えてみた
鼻血はストレスによってでることもあります。福島在住の方が強度のストレスによって「鼻血」という現象が増えているのなら対策が必要であることは間違いありません。
しかし、漫画「美味しんぼ」に書かれていた過酸化水素、ラジカルの理論によって鼻血がでることは物理学的にも医学的にも福島での被爆状況ではかなり無理があります。
一方で生体内での低線量被爆の確かなデータはチェルノブイリのデータ以外には福島の事故だけですので、今後も細心の注意を払いながら福島および周辺部の住民の方の健康調査を行う必要が重要であることは脱原発派はもちろん、原発推進論者も異論はないと考えます。
ではどんな場合に鼻血が出るか?常識的な医学知識で検討してみます。あと万が一鼻血がでたときの正しい鼻血の止め方は以前書いたブログをご参考いただけると幸いに存じます。
重大な注意が必要な白血病とガンが原因の鼻血
白血病という血液のがん、とも言える病気があります。この場合、血小板が正常に作られなくなるために出血傾向という症状が現れ、チョッと腕をぶつけただけで内出血(医学的には皮下出血)が起こってしまいます。
このような症状の方は鼻の粘膜に張り巡らされた血管が少しの刺激で傷つき鼻血が出てしまいますが、血を固める機能が弱くなっている為に簡単な止血方法では鼻血を止めることが出来ません。鼻の中にガンが出来てしまう場合も鼻血で病気に気づくことが多いのですが、頻回に止まりにくい鼻血が続く場合は耳鼻科を受診してください。
肝機能障害が進行して肝硬変になった場合も鼻血がでる
血液凝固因子と呼ばれる成分の多くが肝臓で作られていますが、ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎を放置してしまうと肝硬変になってしまうと、この血液凝固因子が少なくなる為に出血しやすくなり、また止血も難しい状態になってしまいます。このような病気と戦っている方は鼻血は多く経験するのですが、ティッシュや綿を詰めても血液自体が固まりにくいために大量出血を引き起こします。
耳鼻科の医師によるとティッシュやコットンを詰めて来院されると詰めたものを除去してから、治療に入る為に手間と時間が掛かりますので、喉や気管に血が流れ込まない様な姿勢をとって来院することを推奨しています。上を向いて首の後をトントンは効果が無いだけでなく、鼻血を飲み込む危険がありますので行ってはいけません。
風邪やアレルギー性鼻炎・花粉症でも鼻血はでます
鼻づまりや鼻水に対して「鼻をかむ」行為も回数が増えるとキーゼルバッハ部位と呼ばれる鼻の粘膜の血管が集中した場所に力学的なダメージが加わって鼻血がでることがあります。この場合は小鼻の部分を10分から15分程度押さえておけば自然に鼻血は止まりますので、あまり心配することはありません。
鼻のいじり過ぎ⋯鼻くそをとる癖
鼻の中に指をいれて熱心に鼻掃除に励んでいるオッサンを見かけますが、不用意ないじり過ぎは鼻血の原因となります。特に乾燥する時期である冬は鼻の粘膜も乾燥して、鼻くそもこびりつき易くなりますので注意が必要です。
これからの暑くなり冷房をガンガンに入れた部屋も意外と乾燥しますので、きれい好きは結構ですがお鼻掃除はほどほどにされた方がよろしいかと考えますし、第三者から見るとかなり不潔な行為に見えますのでご遠慮いだだけると幸いに存じます。
「鼻くそ」って言葉ですが、残念ながら医学用語がないので鼻くそと言ういかにも素人臭い言葉を使用させていただきました。あえて医学用語っぽく言えば「鼻垢」ですかね。
子どもは鼻血が出やすいんですよ
子どもの場合、活発に動き回って鼻をぶつけることもありますし、気になる鼻くそも周囲に遠慮なくホジル傾向があります。また、解剖学的構造により成人と比較して鼻血が出やすい仕組みになっているようですが、空気が乾燥する冬だけでなく夏も出やすくなっています。
大人と比較して体温調節機能が未熟な為に体温を下げる為に鼻の粘膜の血管が拡がりやすいために、出血した部位が自然に止血できても再びカサブタがとれて鼻血を繰りかえしてしまいます。
その他高血圧や頭部に強い衝撃を受けた場合も鼻血がでます。このように鼻血の原因は多数考えらますが、止まりにくい鼻血の場合は耳鼻科を中心とした専門医を一度受診していただければご安心いただけるはずです。
最後に「オッカムのカミソリ」という言葉をご存知でしょうか?哲学者のオッカムが言い出したことですが
「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでない」
これを発展させて私が大好きな天文学者のカール・セーガンも言っています。
同様のデータを説明する仮説が二つある場合、より単純な方の仮説を選択せよ
という考え方です。つまり、病気の場合も原因は一番単純明快な理由を採用するべきであり、いきなり複雑な理由を考える必要はないということになります。