インフルエンザが猛威を振るった前シーズンですが、さらに新型インフルエンザの登場などでクローズアップされたけど現時点ではパンデミック状態にはなっていないのでホットしています。
麻疹(はしか)が海外から日本に流入していることが問題になっていましたが、行政の対応が早かったために大流行は抑えられています。
本記事の内容
すでに効果がないと判定された抗インフルエンザ薬
感染症の問題点は気づかない間に大差者に移してしまう点です。「チョッと喉を見せてください」と患者さんに接近した瞬間に「ゴホッ!」なんてやられた時は、インフルエンザの予防接種を受けていても万が一のために、予防的に抗インフルエンザ薬を服用することがあります。一部の抗インフルエンザ薬は「予防的投与」が認められていますので、受験生などに処方する場合もありました。ありました、と過去形で書いているのは実はあのタミフルはやっぱりインフルエンザにはあまり効果がなかったんです。
「Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children」というタイトルになっています。
現場の医師は副作用の点から使用を控えていた
私たち現場の医師はタミフルって5日熱が出る所が3〜4日程度になる程度の解釈しかしていませんでしたが、特効薬としてマスメディアが取り上げたこともあり「タミフルを飲んだんで次の日はすっかり熱が下がって⋯」なんて当方としては予想外の効果を感謝されたことも少なくはありません。副作用として若年者の「不穏な行動」もさんざん報道されましたので、中高生にはタミフル以外の抗インフルエンザ薬を出していた医師も多いのではないでしょうか。
タミフルに耐性をもったインフルエンザの報告もありましたので、当院の場合ここ数年間は他のインフルエンザ薬を主に使用してきました。その裏付けがハッキリしましのでお知らせしておきます。
国は万が一の為に備蓄しているらしいけど
医学には様々な意見があり、論文も玉石混淆の状態であるのは自由な発言が許される環境でもあるとの見方もできますが、今までに発表された論文が医学的にどれだけ人類にとって有用であるか、そうでないかはハッキリさせる必要があります。英国が中心になってコクラン共同計画というもので世界中の論文を集めて解析して医療サイドが合理的に判断を下せるような仕組みを作り上げています。コクランで方向性が明らかになったことに対して合理的に反論することはほとんど不可能なんです。そのコクランが「タミフルの効果は限定的である」って表明してしまいました!
タミフルの実際の効果は?
この論文の内容を簡単に説明させていただきます。
- タミフルはインフルエンザの症状を7日から6.3日に短縮する
- 小児への効果は不明
- タミフルが合併症を減らすというエビデンスは無かった
つまり、全く効果が無いわけではないけど、小児に使っても効果は期待できないし、お年寄りの肺炎などを減らす可能性を裏付ける証拠はありません!という非常に非情な結果を出しています。
副作用も明らかになったタミフル
効果は限定的としても全く効果がないわけではありません。そこで気になる副作用ですが、これまた厳しいことをコクラン共同計画は報告しています。
- 吐き気と嘔吐のリスクがある
- 頭痛・神経障害のリスクがある
- 腎臓に影響を及ぼす可能性がある
以上の点がコクラン計画によって判明しましたので、効果はあんまりないけど副作用は明らかなこの薬を有り難がって処方する医師ってかなり少なくなることが予想されます(前述のように当院では最近は殆ど使用していませんでした)。
タミフルを製造している製薬会社はコクラン共同計画に噛み付いているようですが、多分データをかなり工夫しない限り(どっかの製薬会社が日本でやらかしましたね)反論は難しいと予想されます。
日本の国としての抗インフルエンザ薬の備蓄問題
数年前の新型インフルエンザ騒ぎによって国がタミフルなどを備蓄するようになりましたが、コクランの発表が正しかった場合(限りなく正しいんですが⋯)、この在庫どのように処分するんでしょうか?
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002n2pk-att/2r9852000002n2r1.pdf
結構、いい金額(今、タイピングミスしたら「良い金が喰う」になりました)であり、効果のあまり期待できない薬を買い込み一定の条件下で保存することに批難を受けることは必至です。
さすがに優秀な官僚を抱える厚生労働省です、昨年コッソリと今までタミフルの使用期限、食べ物で言えば消費期限を7年から10年に延長していました。