メタボ、メタボという言葉は10年前には聞いたことが無かったんじゃないでしょうか。
でも、最近ではお腹の出たオッサンは即「メタボ」と指摘されてしまいますね。メタボ健診は本式には特定健康診査と言う名前なんですが、メタボ健診で話を進めていきます。
メタボ健診ってなんだろうか?
この考え方は1980年代に糖尿病をベースにして高脂血症・高血圧症が重複すると心血管系の病気になりやすいという説が登場したことにより一般化しました。
中にはセンセーショナルに「Deadly Quartet(死の四重奏)」なんて言葉を使っていた人もいます。これらに上半身の肥満⋯オッサンの特徴をからませたものをメタボリックシンドロームと呼び始めました。
日本人の死因はがん・心臓・脳血管が大きく占めます。
がんは高齢化で決め手となる予防策がないため、心血管系に目をつけた医療機関とお役所が大々的にメタボリックシンドロームの危険性を訴えだして、「特定健診・特定保健指導の趣旨・概要について」なんて話し合いを行い法制化したものなのです。
メタボ健診を受けないと罰則があります
2008年の4月にスタートした特定健康診査(いわゆるメタボ健診)・特定保健指導は、自治体には行うことが義務付けられています。
さらに行わなかった場合はペナルティが科せられるのです。別にみなさんがペナルティを科せられるわけではなく、国民健康保険や社会保険を運営している自治体や会社などの保険組合や共済組合が罰を受けることになります。
具体的には現時点で健康保険を運営するために国から補助金が出ていて、その補助金を一定レベルの人がメタボ健診を受けてなかったら削減すると言う内容です。子供が約束を守らなかった、テストの点数が低かったからお小遣いを減らす的な幼稚なペナルティです。
メタボだと特定保健指導を行わないとペナルティ
メタボの住民を認識した自治体は、その人に対して特定保健指導というものを行うことが義務づけられています。
- メタボ健診を65%の人が受けること
- メタボ該当者の45%が特定保健指導を受けること
- メタボ該当者を10%減らすこと
上記の3つの目標を達成しないと、自治体や健康保険組合のお小遣い、じゃなかった補助金を減らしますよ、というペナルティです。
このペナルティを科せられると企業等で構成される社会保険基金などは財政難に陥ってしまいますので、そのために必死になってメタボ健診を受けさせようとやっきになっています。
それは自治体も同じであり、誰も読んでいないと思われる区の折り込み誌や誰も訪れることがない区のHPなどで盛んにインフォメーションしているポーズを取っています。
当院が区の健康審査を止めた理由
私は医師会でがん検診の委員長や委員をつとめていましたし、いまも地域の公衆衛生委員でもあります。
開業した当初、区の健康診断で今では一般的な前立腺がんのマーカーであるPSA検査を組み込むために、他の泌尿器科医と多大な努力を行って「前立腺がん検診」を実現させました。役所の担当者が2年ごとに変わる為に、二年以内に交渉が成立しないと、最初からやり直しという、アホらしい交渉でした。
前立腺がんの検診と区の健康診査は一括りでしたので、当院でも区の検診・健診を行っていましたが、2008年の時点ですべて辞退させていただきました。だって、定期的にガンや他の病気で十分に検査をしている人に対しても、「区の健診と一緒にメタボ健診もおこなえ」と盛んに役所が言ってくるのです。
これって変ではありませんか?同じ様な内容の検査をなんで繰り返し、患者さんに行わないといけないのですか。私は上記の理由を患者さんにお伝えして、健診やメタボ健診を受けたい方は遠慮なく他院で検査を受けていただくようにしました。
医者は儲け過ぎと批判されても仕方がないメタボ健診ですし、陰謀論者が国と医療機関の悪巧みで病気を作り出しているなんて説を唱えても、100%否定できないのです、私。