【悲報】「テンペ菌発酵のお茶」という効果がありそうな健康食品を医師が解説したら、逆に怪しげになってしまった。

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インドネシアの伝統的な民間医療食品として親しまれているテンペ菌と言うカビを使った発酵食があります。

テンペ菌は血糖値を下げる効果がありますが、このテンペ菌を添加した健康食品で怪しいものが目につきましたので検証してみます。健康食品は大抵、お墨付きをあたえる医師や医療関係者(たまに民間資格者の素人さん)がセットで登場しますが、今回はそのヘンテコな説明にツッコミをいれます。

テンペ菌で発酵させたお茶の効果は血糖値を下げる

テンペ菌と言うカビを使った発酵食がインドネシアの伝統的な民間医療食品として親しまれているようですが、これにお茶を加えた健康食品が目につきました。

成分であるテンペ菌は血糖値を下げる効果があり、お茶もギムマネ・シルベスタやヤーコンなどそれなりに糖代謝に関連する成分を含むものが入っていて、民間療法としてはインチキ商品ではないのです。

その効果・効能を証明するために医療関係者がヘンテコな説明をしているので、逆に怪しさが充満してしまうという残念なことになっています。

テンペの栄養成分表

典型的なインチキグラフをなぜその医師は使用したんだろうか

健康雑誌で紹介されているテンペ発酵茶で、血糖値がさがったと喜んでいるおじさんやおばあちゃんにケチを付ける気は一切ありません。

この健康茶の効果を医療関係者がもっともらしいグラフを持ち出して、説明していることに文句があるのです。折れ線グラフであろうと、棒グラフであろうと縦軸、横軸ともに0から始まらないと大きな誤解が生じてしまいます。

インチキ棒グラフ

『正しい統計データ』を使ってウソをつく方法「いんちき」心理学研究所より

少年強盗事件の正しい棒グラフ

本当はこんなグラフです。大きな変化が無いものを極端な差に見せかけるインチキ手法です。

『正しい統計データ』を使ってウソをつく方法 (http://psychology.jugem.cc/?eid=48) は、一度は目を通す価値ありです。

余りにも縦軸が長くなるときは途中で二重の波線でカットしたよ、ということを明確にするのがルールというか、常識です。しかし、この雑誌のデータとして記載されているグラフは意図的に読者をダマす初歩的インチキ技が使用されています。

隠そうとしても、数字で追いかけられますよ、医学的に解説している先生!

実験のデータすべてを列記していないので、テンペ茶を試した各人の血糖値の変化はわかりません⋯でも、裏技があります。

実験に参加した人は40人と書いてありますので、統計学的な裏技として少人数の対象者のデータの場合、

標準偏差=(最大値ー平均値)×0.4

という公式があります(当然、この記事をかいた医療関係者はご存知ないと思います)。血糖の平均値は172.8とありますし、その横に±75.4という数字が並んでいますので、この数字は当然標準偏差のつもりでしょう。

一般の方に標準偏差(SD) まで書いてあるんで、いかにも医学の統計学的な処理をしたデータと思わせる目論みだったのでしょうが、それが裏目にでます。

この公式を当てはめると40人のうち少なくとも1人は血糖値が323.6くらいの重症の糖尿病であったことがわかります。この医療関係者はもっともらしく標準偏差を持ち出していますが、必需品のp値が抜けています。p値は通常0.05とか記されて「このようなことが偶然起きる確率は5%しかありません」と意味する為に統計学的処理をする場合はデータの解析に必須のものなのです。

さらにこのオッサン(いつのまにかオッサン扱いになってしまった)は標準偏差自体の意味をご存知無いようです、というのも172.8±56.1が飲用前の血糖値としてますが、この中に含まれる人は40人中の27人にしかなりません(平均値と標準偏差の間に対象者の68.26%が含まれため)。

少なくともp値が0.05以下でないと、医学的には全く意味がないデータであることご存知なかったらなら仕方がありませんが、知っていてやっていたらかなり悪質です。

せっかくのおばあちゃんの知恵もこれじゃ台無しじゃないか

私は民間治療を頭から否定しませんし、とくに「おばあちゃんの知恵」の大ファンなんです。それをいらんお世話でしったかぶりの医療関係者が医学的??に説明することに非常に違和感というか怒りを感じます。

この医療関係者のテンペ菌発酵茶関連の「臨床データが日本肥満学会で大きな話題に」と書いてありますが、いつの日本肥満学会で発表されたのか、調べることが出来ませんでした。

以前も学会で発表とか、専門誌に掲載とか書くなら、いつの学会であり掲載された論文の番号はいくつかが記載されていないものは信用できない、とブログに書きましたが典型的な一般の方を惑わせる医療関係者による健康雑誌記事でした。

テンペ菌は地方でも村おこしとして注目されているだけに、残念です。

村おこしに使われているテンペ菌

一生懸命活動している人の努力を専門家がダメにしてしまう、典型例です。

おばあちゃんの知恵はそれなりに大事にして、医師側は民間医療を一般の人に医学的に解説して教えて上げるのではなく、民間医療を教えてもらい、何故そのような効果がでるのかを正しい分析データでわかりやすく解明する態度が必要です。

もちろん、医学的に危険だったら、警告を発することも必要です。私はおばあちゃんの知恵を大事にしていきたいといつも思っています。害が無く効果があるなら医師だって積極的に裏技的に患者さんにお伝えしても、全く問題はないのですから。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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