先日タクシーに子供達と乗った時に運転手さんが「お客さん、医療関係者ですか?」と尋ねてきました。そうです、と答えると「先日、学会帰りのお客さんを乗せたんですけど、味の素って頭が良くなるんですってね」と長々と話をしだしました。
本記事の内容
タクシーの運転手さんが突然いいだした「味の素って頭が良くなるんですってね」は本当か?
タクシーの運転手さんによれば、味の素を適量、毎日食べるとIQがどんどん増えて頭が良くなる、でも一定量以上食べるとそれは逆効果になる、と言う内容でした。ちょうど、高速にのってから話だしたので、いつもの私だったら反論するところを、命を預けている身ですので適当に相づちを打ちながら延々20分間、ありがたい講義を受けさせていただきました。
昔、なんにでも味の素をかける友人がいた
そういえば、小学校の時、それこそ何にでも味の素を振りかける友人がいました。友人宅に遊びにいっても家族全員が当たり前のように、ご飯からみそ汁、醤油にまで味の素を振りかけていたんです。
1960年代に「味の素が頭を良くする」という今で言う、健康ブームがあってその後、お決まりの味の素が毒である的反論がでて、味の素を取り巻く賛否論は沈静化した記憶がよみがえってきました。今、考えると「○○を食べる○○になる」というパターンはここ数十年間以上繰り返しているのですね。
味の素で頭が良くなる論の考案者はあの近藤氏と同じ大学
ここ数年、がんもどき論(?)と提唱して「がんになっても放置しろ」というヘンテコな主張を行っている近藤氏はあの私学の雄の出身ですし、母校に勤務しています。味の素が頭に良い、というブームを作ったのが、林 髞(ハヤシ タカシ)という医師で1958年に「頭脳 才能を引き出す処方箋」という本を出版しています。
この本の内容は「コメを食べると頭がわるくなるので、パンを食べなさい」ということなど、今ではトンデモ系に属する話が詰まっています。そのなかで「味の素を食べると頭が良くなる」という主張をしたので、味の素善玉説がブームとなって高度成長期に入りかけた昭和の黄金時代の都市伝説を築き上げたのです。
残念ながらグルタミン酸は脳には行き渡りません
池田菊苗氏が1907年に発見した旨味の本体である、グルタミン酸ソーダが味の素の主成分です。
これは世界的な大発見なんですが、多くの日本人がこの偉業を忘れているのは残念です。一般的な中華料理屋さんでは大量のグルタミン酸が使用されていることは既知のことでしょうし、あの「ラーメン○郎」も大量のグルタミン酸が入っていることは間違いないでしょう(本店が近藤・林氏の母校近くであることは偶然です)。
このグルタミンは神経系に効果を現すのですが、残念ながら血液脳関門(blood-brain barrier)を通過することが出来ませんので、脳に良い影響、つまり頭が良くなるようなことはありません。
味の素のオフィシャルHPの商品に関するご質問にも記載があります。
Q 「味の素®」を食べると頭がよくなると聞きましたが、本当ですか?
味の素
A そのようなことはありません。
素っ気ない回答です。
グルタミン酸ソーダ、味の素が毒であるという陰謀論に振り回されている人もいますが、通常の使用量で問題が起こるとは考えられませんのでご安心ください。
しかし、あのタクシーの運転手さんは何故、私が医療関係者か判ったのかというのが不思議ですし(もちろん当方の身元を明かす様な会話はしていません)、あるいは乗ってきたお客さん全員に「お客さん、医療関係者ですか?実は味の素って⋯・」と話していたら、かなりキテいる運転手さんだったことになります。