米国ガン学会で発表!○○○でガンから生還者が続出、という新聞の広告にノセラレて書店に走ってしまった、民間療法が最近お気に入りの私。
本記事の内容
米国ガン学会とは多分American Association for Cancer Researchのことだと思うんだけど
American Association for Cancer Researchは略してAACRと呼ぶことが多いのですが、発表といっても単に発表であって誰にでも発言の自由は許されています。学会というといかにもスクリーンにデータやグラフ、写真をつかったものを普通の人は思い浮かべますが、ポスター部門というものがあり、与えられた部屋の壁とボードに各自の研究を貼っているだけの場合もあります。
先日、AACRで発表された健康食品なる物体の記事を某健康系月刊誌で見つけてしまいました。
タモギタケが体にいいらしい、がんも治っちゃう⁉
タモギダケというキノコの仲間が、とにかくガンに効果があるとの内容の記事でした。タモギダケは英語でcitrinopileatusらしいのですが、この言葉をキーワードとして医学論文を検索したところ、免疫系等になにか作用しているのは間違いないようですが、論文として臨床に使用したものは見つけられませんでした。
たしかにタモギダケの論文はあることはあるんですが、中国系と思われる人がいっぱい書いて色んな論文に投稿しているのが、ちょいと気になりました。
色々なチョッと風変わりな市販薬を扱う○林製薬もキノコ系には力を入れているようですが、ここは未だにノコギリヤシが前立腺肥大症に効果があると主張していますし、なんで薬でなくサプリとして開発するのか理解に苦しみます。
若い人は知らないだろうけど、昔紅茶キノコとかサルノコシカケなどのキノコ系が大ブームになったのに、今では全く聞かなくなったように、キノコ系って体に良さそうだけど怪しい感じがする、というのが私の感想です。ちなみに紅茶キノコは家の母親も養っていましたが、キノコではなく酢酸菌だったんですよね、確か。
あの当時は一家にひと瓶はこんな不気味なものがあったのではないでしょうか。
安易な「がんの患者さんの体験記」は止めた方がいいです
ガンを克服したサバイバーの方のお話を現時点でがんの治療をしている患者さんが聞くことは、患者さんの希望と励みになりますので非常に良い効果があります。しかし、健康雑誌のがんを克服した的なことが書いてある「体験者の声」は読んでいて悲しくなってしまいました。その方は一年少しまえに「スキルス性胃がん」と診断されました。
発見時はステージⅣに近いⅢだったとのことです(ⅢとⅣでは大違いなんですけど)。通常の診断であればこの方は手術もしたので、Ⅳは考えにくいと思います。
現在では乳酸菌を飲んで副作用も無く、抗がん剤治療も行って立派にがんと戦っているのですから素晴らしいことです。
胃がんの五年生存率はステージIIIで54.7%、ステージIVでは9.4%と国立がんセンターは公表しています。約5割と1割の生存率の差は早期発見ができて、積極的な治療の可能であるステージの差に依るのです。この体験者の場合、万が一ステージⅣであったならかなりの確率で急激に体調が悪化することが予想されます。
ステージⅢであることを祈らずにはいられませんが、通常スキルス胃がんは発見が送れることが多く、有名人で亡くなったかたも多数います。
見出しの文章はどうみてもスキルスが乳酸菌で治ってしまった、としか読み取れないものです。藁にもすがりたい気持ちの患者さん、そして家族の方のことを思うと、かなり無責任な内容だと考えます。
健康雑誌の選び方
センセーショナルな記事でも苦しんでいる人の役に立つ情報であれば、全く問題ないでしょう。どんなヘンテコな治療法でも効果があれば文句はありません。医療関係者の話を出して論文があるとか、学会で発表したとか書いてある場合、論文の番号や学会で発表した時の正式なタイトルが書いてあるものは良心的だと思いました。
今回のAmerican Association for Cancer Researchの総会で口で発表したタイトルの一覧には残念ながらタモギタケ系のものを発見できませんでした(私のリサーチ能力が足りない可能性ももちろんありますけど)。
まさに玉石混淆とはこのことです。
案外、一番怪しげな○キ○出版の健康雑誌はグラフや表にさえ論文の識別番号が書いてありますし、理論もかなり複雑ですが、根拠はしっかりしているのです。現在私はこの○キ○出版の健康雑誌の民間療法は、WWEの次にハマっている大好物です。