新型コロナ対策として、インドネシアで日光浴がブーム説を検証しました。

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日射しが強まる夏にかけて新型コロナが弱まるのでは?という希望的観測話も出ていますが未知のウイルスなので分かりません。

そんな中、新型コロナ対策として日光浴が効果あるという噂が広まりインドネシアで日光浴ブームというニュースが報じられました。

インドネシアは宗教上飲酒が禁止されており代わりに高喫煙率でも知られています。インドネシアのへんてこな感染症の致死率は約9%と非常に高いです。

日光を浴びることで人間はビタミンDを生成しますので、ビタミンDで免疫力UPするって聞いたし日光浴は天気さえ良ければタダだしと流行るのは自然なことといえるでしょう。適度な日光浴はよいとして日光浴が本当に新型ウイルス対策になるのか?という点について考察しました。

インドネシアで日光浴ブーム⁉効果があったら私的には厳しい状況に

へんてこな感染症の世界的蔓延に対して、各国で様々な対策が試みられています。いまのところは人口は多いけど、死者数が少ないとデータ上で判断される東南アジア諸国ですが、インドネシアでこんな光景が見られるそうです。

インドネシアで日光浴ブームAFP 日光浴で新型コロナ感染症撃退、インドネシアでブーム (https://www.afpbb.com/articles/-/3281111) より。

昨年末、へんてこな感染症が話題になる以前に、大型トンデモ案件が話題になりました(少なくとも私の周囲では)。

万が一、日光浴が新型コロナ感染症の感染拡大に効果があったら、こんなことしても意味ねーよ、と強く主張した私は非常にマズい立場に追いやられてしまいます。

微生物が紫外線によって数が減ることは科学的・医学的事実です。人体の皮膚の表面に付着した新型コロナ(ヘンテコなウイルス)に対して、ウイルスを撃退する効果を否定はできません(「表面」である点に注目ね)。

でもさあ、そもそも日光浴の効果が免疫力アップだとの主張は納得できないんだよなあ⋯。

インドネシアの新型コロナ感染状況を日本と比較すると⋯

前掲のインドネシアのへんてこな感染症の様子は下記のようになっています。

インドネシアの感染状況

2020年5月5日に確認できるデータとしては感染者は1万1587人、死亡者は864人、人口100万人あたりの死亡者は約3人です。100万人あたりの死亡者数で比較すると日本より少ないです(まあ、インドネシアの医療事情として2014年から国民皆保険制度が取り入れだしたのは良かったのですけど、常に医療機関は混雑していて、さらにこのような報道もあります。

インドネシアの死者数は正しいのか?

朝日新聞 「統計外の死、ひつぎはビニールで覆われた インドネシア」(https://digital.asahi.com/articles/ASN4W3PY1N49UHBI034.html)より

日本でも実はもっと死亡者は多いけど、国家権力によって隠されている、なんて感じの陰謀論に振り回されている残念な人もいるようです。

紫外線に消毒効果はあっても免疫力アップ効果はかなり微妙です

私の本棚に「消毒と滅菌のガイドライン」という医学系教科書があります。この本には消毒・滅菌の基本との章があり、「消毒の種類と方法」の中に物理的消毒法の一つとして「紫外線殺菌法」が記載されています。

紫外線の消毒効果

「殺菌法」って菌を殺す、との意味ですよね。ウイルスは菌ではありませんので、紫外線がウイルスを殺すわけではなさそうです(そもそも、ウイルスは生き物とは考えられていません)。

消毒と似た言葉で滅菌があります。

●消毒⋯微生物が感染症の原因とならないレベルまで減少させること。

●滅菌⋯すべての微生物を除去すること。

が、定義です(うーむ、ウイルスは微生物だけど、菌を滅する、の菌に含まれちゃう)。

ウイルスを滅菌(ウイルスは菌じゃないのですが⋯)する場合、実践で使われる方法はアルコール・次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸水じゃないよ)・グルタルアルデヒドなどが医療機関では一般的であり、手術につかう器材は高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)や酸化エチレンを使用したガス滅菌が必要です。

私がもっている消毒・滅菌系のその他の教科書を見回した範囲では、紫外線のウイルスに対する消毒あるいは滅菌効果を明確にしたものはありません。

画像

これはへんてこな感染症が世界的に流行する前に、amazonで衝動的に購入してしまった「除菌器 ケース マスク滅菌器」なる代物。英語で「Sterilizer」と書いてあるけど、それって「滅菌」という意味だよねえ。amazonのカスタマーレビューがめちゃくちゃ怪しい日本語がてんこ盛りで笑えます。

注意⚠

私はあくまで、「なんじゃこりゃ」的に上記の紫外線滅菌器を購入したのであって、効果を期待したものでは無いことをご理解くださいね。よくよく考えてみてください、紫外線が照射された箇所で殺菌効果があったとしても、紫外線照射の影になってしまった部分では効果は全く期待できないですよね。だからさきほど「微生物が紫外線によって数が減ることは科学的・医学的事実」と述べた後に「人体の皮膚の表面」と「表面」を強調したのです。

紫外線を浴びるとウイルスに勝てるような免疫を得ることは可能なのか?

紫外線の殺菌効果(「殺菌」って医学用語じゃないんだよなあ)は無いわけじゃないですが、へんてこな感染症関連としては、

日光浴をする → 紫外線を浴びる → ビタミンDが活性化する → 免疫機能が上がる

という図式で説明している記事や医療関係者が目立ちます。

これを極端に端折って

ビタミンDを摂取する → 免疫機能が上がる

的な乱暴な解説をしている医師もいたっけなあ⋯。

確かにビタミンDサプリメントがウイルス感染予防になることを報告した医学論文は存在します。

「Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory tract infections: systematic review and meta-analysis of individual participant data.」(PMID: 28202713)がビタミンDがウイルス感染予防になる可能性を伝えていますが、人類がはじめて経験する新型コロナに対して、予防効果があることには一切触れていません。

さらに、これはビタミンDを摂取することによって、ウイルス感染を予防する可能性に関しての研究であり、日光浴をすればウイルス感染予防になることも伝えてはいませんし、ましてや日光浴によって新型コロナ感染予防になることは一切伝えていません。

でも、医療関係者、特に医師が「日光浴も新型コロナ感染には効果あります。データがありますから」と言ったらほとんどの素人さんは信じちゃいますよね。

日光浴とビタミンDは強い関係があるけど、ウイルス対策にはならないかも

紫外線は美容的にはシミやシワの原因になるので、百害あって一利なし、と考えられています。しかし、紫外線は人体に害を及ぼす一方で重要な働きもしています。

画像国立環境研究所 地球環境研究センター 「ビタミンD生成・紅斑紫外線について」(http://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/exposition.html)より

人のからだは紫外線を浴びることによってビタミンDを生成する仕組みを備えています。

しかし、ビタミンD自体がウイルス感染、特に新型コロナの感染を防ぐ効果を明らかにした医学的な論文は存在しません。

例えば「Randomized trial of vitamin D supplementation to prevent seasonal influenza A in schoolchildren.」(MID: 20219962)では、A型インフルエンザに対してビタミンDは感染リスクを下げる可能性を報告していますが(執筆者に注目、今回の新型コロナ関連でコメントを述べている医師が複数です)、B型インフルエンザを予防する効果があるとは結論されていません。

さらに「Vitamin D3 supplementation and upper respiratory tract infections in a randomized, controlled trial.」(PMID: 24014734)ではビタミンDを摂取しても、上気道感染を防ぐ効果は無いことを伝えています。

要するに、ビタミンDが新型コロナの感染を予防する効果を明確にした、信頼度の高い医学論文は無いことになりますし、日光浴によって新型コロナ感染を予防することは現時点では明らかではないのです。

まあ、たしかに肛門日光浴は3密は意識しているかも

新型コロナ感染予防として「3密」つまり密閉・密集・密接を避けましょうと繰り返しインフォメーションされています。

私がインスタで視認した肛門日光浴風景はたしかに、換気の悪い密閉空間でもないですし、多人数があつまる密集でもありませんし、ほどよいソーシャルディスタンスを確保した密接も避けられていますね。

緊急事態宣言があと1ヶ月延長されます。特定警戒都道府県以外の地域では段階的に社会活動も回復させる動きも出てきました。

でもさあ、いくら3密を避けたとしてもインドネシアの様にオッサンが集団で日光浴していたら子供たちは怯えるでしょうし、ましてや肛門日光浴を公園等で行っていたらドン引きどころじゃなくて、速攻で警察に通報ですね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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