メディアが「殺人ダニ」とSFTSウイルスのことを報道しているんですが、まるでホラー映画の様な取り上げ方って良くないです。現時点で判明している感染者は53人でその内21人の方が死亡していますので、致死率の高さからは「殺人ダニ」という呼び方もあながち大間違いではありません。
本記事の内容
インフルエンザやノロの大流行とは全然違います
ダニというとアレルギーによって起こるアトピー性皮膚炎や喘息の原因のアレルゲンとして知られていますが、この殺人ダニとアレルギーを起こすダニは全く違った種類なので、混乱を招かないようにしましょう!
殺人ダニはSFTSウイルスをまき散らす
殺人ダニの本名は「マダニ」と呼ばれる種類のダニであり、アレルギーを引き起こすダニは「コナヒョウダニ」「ヤケヒョウダニ」なんです。良く外来に「ダニに刺されたんですけど」とやってくる患者さんがいますが「山などに行きましたか?」と先ず尋ねます。というのもアレルゲンとして問題となるダニは基本的に刺さないのです。
一方、山などの生息するダニはマダニの他に多数いますが、これらは刺すダニです。 この刺すダニであるマダニは刺すと言うか吸血するダニであり、山や草むらに住んでいますので、一般家庭で刺されることは先ずありません。このダニは昔から病原体を媒介するベクターとして知られていて何も最近になって発見された「殺人ダニ」ではありません。
ダニに刺されると重症熱性血小板減少症候群という重篤な状態になる可能性がある
このダニに刺されると重症熱性血小板減少症候群という死に至る病態に陥るために「山や草むらに入るときは長袖・長ズボン」と昔からいわれていたのです。もちろん、蚊やブヨに刺されないためという意味もありますが、「おばあちゃんの知恵」的に知られていた感染症です。
近年になってマダニ感染症の原因がSFTSウイルスであり、このウイルスは2011年に中国で発見されています。SFTSウイルスに感染するとひどい場合は致死率10パーセントともいわれていますので、確かに殺人的被害を引き起こすことは間違いありません。しかし、実はこの感染症は100年以上前から日本であったと考えられますし、一部の専門家は1000年以上前から日本に存在していたと指摘しています。
詳しくは国立感染症研究所の「マダニ刺咬例の調査」などをご覧ください。
単に原因不明だったものが原因のSFTSウイルスが明らかになっただけ
このマダニによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS) は昨年もマスメディアで「恐怖の殺人ダニ」的な取り上げられ方をしました。残念ながら死亡例も出てしまいましたが、昔は原因がわからなかったものが2011年以降SFTSウイルスが発見され、原因が特定されたというだけの話なのです。でも、もちろん感染されないように、山などに出かけるときはそれなりの注意が必要ですがパニックに陥る様な必要はありません。