医師の診断よりマニュアル至上主義の弊害、錯乱状態の保健所から発生届拒否の連絡が‼

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「みなし陽性」との言葉が一人歩きをして日本国中を混乱に陥れています。「みなし陽性」の正式名称は「特例疑似症例」と言うらしいのですが、一般の方はもちろん医師でもそんな言葉は知らないのでは。

どうみても新型コロナウイルス感染症の方を診察したのですが、厚生労働省に届け出たところ、その患者さんの居住地の保健所から却下されてしまいました。

混乱を招いている「みなし陽性」とは・・・。

検査キット不足が主な原因となって、検査をしないでもコロナ感染者であると判断することが一部の自治体で可能になることがメディアを騒がせています。

みなし陽性の定義を間違えて解釈しているメディアによく登場する方も少なくはないようです。ほらねっ!!

三浦瑠麗氏 東京都「みなし陽性」含む感染者発表を批判「風邪でも何でもオミクロン」

https://www.daily.co.jp/gossip/2022/02/02/0015031581.shtml

三浦氏の発言の一部が切り取られている可能性もありますが、誰でも彼でも自己申告で「みなし陽性」認定されるわけではありません。みなし陽性の定義は感染者の同居家族で症状がある場合は抗原検査やPCR検査を受けないで医師の診断によって陽性と判定するものです(https://www.mbs.jp/news/kansainews/20220128/GE00042206.shtmlなどによる)。

同居家族が陽性者であることが「みなし陽性」の必須事項であることが混乱の原因なのではないでしょうか?医師が発熱外来にて行政検査の品薄状態の抗原検査やPCR検査をしないで陽性と診断することを「みなし陽性」と解釈している人も少なくは無いと大いに予想されます。

なぜ「みなし陽性」と私が診断した症例は保健所に却下されたのだろうか?

私がみなし陽性に強い関心を抱いたのは、どう見てもコロナ感染をしている患者さんを当院の発熱外来で診察したからなのです。

医師の義務として新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS ハーシス)にその旨を登録したところ、患者さんの居住地である保健所(目黒区じゃないよ、隣接している区だよ)から電話にて疑義紹介があり、状況を説明しても担当者の判断は却下。

酸素飽和度が低下していることを保健所は確認しているのに新型コロナウイルス感染者としての登録は拒否されてしまったのです。

紙ベースで発生届を出すと、診断した理由というか診断条件には必ず抗原検査あるいはPCR検査が必要になるけど、HER-SYSだとその他の理由にて新型コロナウイルス感染者であることを登録することが可能なのに却下されちまいましたぜ。

新型コロナウイルス感染症発生届

ほらねっ。紙であっても担当者がしっかり読み込んでくれれば欄外に私が新型コロナウイルス感染と診断した理由を明記すればそれなりの取り扱いをしてくれるはず。

ネットを使って登録するHER-SYSだと抗原検査やPCR検査のチェックボックスに記入しなくても備考欄に診断理由を書けるのに却下、電話で説明しても却下なんです。

なぜそのような対応をされちまったか、よくよく考えてみたら「みなし陽性」とのワードを記載してしまったことに原因があるのかもしれません、とクールダウンして少々反省。

でもさあ、この新聞の記事だって「みなし陽性」をこんな感じで解釈しているもんね。

診療を担当する田村大輔医師は、感染者と診断されれば本人の行動に大きな制約が生じることなどを念頭に「濃厚接触者かつ発熱などの症状があるだけで全て『みなし陽性』とすれば、混乱は避けられない」と話す。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA253MD0V20C22A1000000/?unlock=1

どうみても感染している、通常の濃厚接触者や発熱などの症状がある人を「みなし陽性者」と解釈していますよね。

検査を拒んだら感染者として登録できないとなると医師の責任はどうなる?

患者さんの個人情報や個人の特定を避けるためにちょっとばかし要点をぼかして私が経験した典型的なお役所仕事をご紹介しますね。

症例は喫煙している肥満体型の男性で当院での受診歴はありませんので、発熱相談センターからの紹介で当院発熱外来を受診したと思われます。その方の同居家族は3名、そのうち2名はPCR検査によって新型コロナウイルス感染が確定しています。

ハイリスクと考えられるその男性は今まで複数回なぜかPCRを他院あるいは野良で行っていることがご家族の会話から知ることができました。

鼻に綿棒を入れらることに懲り懲りしたその男性はPCR検査を拒否しました。体温は38度であり酸素飽和度も危険水域の入り口(詳細は省きます)。私は慌ててスタッフに速攻でHER-SYSに登録するように指示したのが当日のお昼頃でした。

翌日、当院の診察終了間際の時間に当該保健所(目黒区じゃないよ)からお尋ねの電話がありました。担当者曰く「みなし陽性」の条件を満たしていないとのこと。

私は他の患者さんの診察中であったために当院スタッフが電話対応して、どうみても陽性というか肺炎起こしているじゃんと説明したところ、某保健所職員は「そうですね、既に酸素飽和濃度はさらに低下していますものね」との返答・・・でも「みなし陽性」の基準を満たしていないと告げられました。

当方スタッフの熱心な説明によって、「上司の判断を仰ぎます」との言質の直後に「やっぱり感染症の届は受理できません」だってさ。

ひょっとして、ひょっとすると疑り深い当院スタッフがHER-SYSを確認するとその男性の届出は削除されているではないですかあ!!

私は感染者を確認しているのに下手すりゃ「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の第12条に違反してしまう可能性がでてきます。

紙ベースの発生届には「届出は診断後直ちに行ってください」と警告文(?)が記載されているからこそ、速攻でHER-SYSに登録したのに登録した経歴自体も削除されちまった模様。

杓子定規なお役所仕事では患者さんの重篤化は防げないじゃん!!

私の法律違反なんてことはどうでもよくて、重症化リスクがある今すぐに酸素投与が必要な方を保健所が無視しちゃうってことが心配でたまりません。

最終的にはご家族のPCR結果が却下された日の夜遅くに陽性と依頼している検査所から連絡があったため、深夜にその方を再度「みなし陽性」としてHER-SYSに登録したけど、またもや世田谷保健所から削除するね、って連絡が来るのだろうか・・・。

そもそもみなし陽性例は誰が判断するの?

素朴な疑問があります。「みなし陽性」正式名称は特例疑似症例の診断というか人体は誰がするのでしょうか?オンライン診察ができる環境の方は「家族が陽性なんだけど自分も発熱してしまった」とかかりつけ医に伝えることで医師はみなし陽性と診断しても、HER-SYSにはみなし陽性あるいは特例疑似症例を報告するフォームはありません。

となるとその医師は私が前掲の症例で行ったように備考欄に「みなし陽性です」と記載すればいいのかなあ・・・。あるいは保健所に電話して「家族が陽性なんだけど自分も呼吸が苦しくなってきた」と伝えることによって保健所がみなし陽性判定するのでしょうか・・・でもこれは医師法に抵触する可能性があります。だって診断は医師だけに許されたものですからね。

発熱外来の届出なんてしなければよかった、でも地域密着型のクリニックとして23年間現在地で開業してきた私としては、微力ながら地域医療に貢献したいのです。

その志を理解してスタッフも休日返上で頑張ってくれています。お役所仕事の杓子定規な考えにゲロが出そうなくらい困惑しつつ明日も発熱外来を行う、けなげな自分を褒めてあげたいぞ!!(笑)

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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