私がクリニックを営んでいる目黒区のお隣の某区に目立ちたがり屋で後先のことを深く考えないで行動して、派手な政策をぶち上げる区長さんがいます。そのトンデモ区長は、「どこでも、誰でも、何回でもPCR検査」が尻窄みになったのちに性懲りも無く、「抗原検査キットを区民に限って無料配布!!」なんてことをはじめたために私どもは大迷惑を受けています。
本記事の内容
抗原検査キットを買い占めちゃったら迅速な診断ができないよ〜!!
抗原検査キットは8分程度で感染の有無を判定し、症状が出まくりの患者さんに対して陽性判定をするとともに、まっとうな医療機関は速やかにHER-SYSに感染者情報を登録します。
一方で抗原検査より精度の高いPCR検査の場合は多くの医療機関は検査所に検体を提出して結果を待ちます。今までは翌日お昼頃には検査結果が出ていたのが大量の感染者・感染疑い者・濃厚接触者が出てきたために、PCR検査のオーダーも増えたことによって結果は翌日夕刻になリダしていました(夕刻でも夜でも深夜でもHER-SYSに登録は可能)。
抗原検査キットの買い占めによって、抗原検査キット不足の影響を医療機関はもろに受け、当院では先週には在庫が底をついてしまいました。他の医療機関も抗原検査キットが無いために診断をPCRに頼るしかない状況が続いています。
感染者が増加 → PCR検査が増加 → そこに抗原検査キット不足という事態が発生 → さらにPCR検査のオーダーが増加 → 検査結果報告が遅れる → HER-SYS登録が遅れる → 保健所から感染者への指示が遅れる
目黒区に隣接している某区のトンデモ区長の思いつき政策のためか、隣接区の発熱外来がパンク状態なのかよく知らんけど、今まで当院の周辺かつ目黒区にお住まいの方だけではなく、トンデモ区長の区の住民の方の検査希望者が増加しています。
もちろん目黒区にお住まいの方でなくても当院の発熱外来を受診することは全く問題ありませんし、なーんの不満もなく受け入れますけど・・・そもそもセルフ抗原検査キットを使用して陽性判定が出た場合に保健所に連絡しても、「医療機関で検査をしてください」と言われるんだけどね。その医療機関がその場で診断可能な抗原検査キットが無いのですから、感染者がHER-SYSに登録されるのは後手後手になってしまうのです。
目黒区に隣接する某区の目立ちたがり屋の区長はそんな当然起こりうる状況はは予想しなかったのでしょうか?
※某区では大混乱の原因になりかねない「無料セルフ抗原検査キット配布」が非常にまずい問題であることに気がついたのか、今では優先的に医療機関に供給する仕組みにしたようです。
※この区長は本当に思いつきかつ言葉足らずでさらにこんな混乱を招いています。
この区長は医療現場にどれだけ迷惑をかけているんだろう、これからもトンデモ発言で区民はもちろん医療現場に混乱を引き起こすのは必至、定点観測が必要です。
抗原検査キット買い占めによって、死亡リスクが高まってしまう危険性
感染症による死亡リスク低減に現時点では有効であると考えられ、特例承認されたある特効薬と称される「ラゲブリオ」という自宅で服用可能な薬があります。
ラゲブリオを処方するにあたっては様々な条件があり、その中で、「発症後5日以内に服用を開始する」があります。
医療機関用の抗原検査キット不足によって検査はPCRに頼らざるを得ない状況になってしまっています。例えは本日土曜日に検査を受けると検査結果は検査所の努力によって検査技師さんフル動員であっても早くて月曜日の夜になってしまいます。
金曜日発症 → 土曜日検査 → 検査結果は月曜日の夜 → 火曜日にラゲブリオ処方 → 服用開始は発症後ギリギリの5日目
ラゲブリオの添付文書には感染後6日以降の投与に関しては有効性を裏付けるデータが無いことが明記されています。
抗原検査キット不足を増長してしまう某区の区長は特例承認された感染による死亡リスクを低減する、入院しないでも服用可能な薬の処方条件を知らなかったのでしょうか?
そもそもラゲブリオを院内で在庫確保しているクリニックは少ないでしょうし、ラゲブリオを処方できる届出をしているクリニック・調剤薬局もちょっと前までは少なかったことを鑑みると当院に隣接する区では大混乱が発生していたのかもしれません。少なくとも隣接する区やかなり離れた区のクリニックや患者さんから早めに処方可能になる届出をしていた当院に問い合わせがあったことをお伝えしてきますね。
1人感染者が出たら無限ループの自宅療養
家族の1人が感染した方からこんなヘンテコな話を聞きました。「自分は濃厚接触者だから、感染した子どもが10日間の自宅療養終了時から10日間の自宅療養をしないといけないのですか?」とお子さんが感染者になった保護者の方から質問がありました。
保健所の指示によると、
子どもが感染したので保護者は濃厚接触者 → 子どもの10日間の自宅療養終了 → 濃厚接触は感染者に接触した最終時点から10日間の待機が必要 = 保護者は計20日間の自宅待機が必要
とのこと。感染した人より濃厚接触者の方が自宅待機期間が長くなってしまうという、かなりヘンテコな事態が各地で勃発しているようです。
もしも保護者が自宅にて待機している期間に発症してしまったら、お子さんはそこから濃厚接触者認定になるのであれば、保護者は濃厚接触者に濃厚に接触しざるを得ないのですから濃厚接触の再スタートになってしまうことになってしまうと、
家族の1人が感染すると、その一家は濃厚接触で自宅待機の無限ループに陥ってしまうことになりかねません。
※この件で患者さんに相談された私が保健所に詳しく尋ねるように指示したところ保健所の回答は、「担当医にご相談ください」でした(苦笑)。
意味不明な為政者の判断によって医療崩壊&経済活動損失拡大は必至
検査キット不足によって迅速な診断ができない。意味不明な自宅療養と濃厚接触者の定義、そして自主待機。さらに死亡リスクを低減できる特効薬が処方できない。にっちもさっちもいかない状況を為政者が招いてしまっていると考えている方も少なくはないです。
発症者というか検査陽性者の増加に伴って自宅療養者・濃厚接触による自主的自宅待機者が急増している東京、もちろん積極的な治療が必要な方も急増するでしょうから、近いうちに病床使用率は基準を超えてしまうのは時間の問題です。となるともう何度目だったか、これが通常の生活だったのかとさえ感じてしまう、「緊急事態宣言」が出るのは目前ですね。