低容量のアスピリンの服用は、脳梗塞や心筋梗塞の予防になり大腸がんの発症リスクが低下することは医学的な常識となっています。
私は脳梗塞恐怖症であり、大腸がんには絶対なりたくないと考えて低用量アスピリンを以前から毎日服用していました。
本記事の内容
デブだとアスピリンの予防効果が減弱!?
そんな私は先日ネット上をフラフラしていたら、このような論文を見つけました。「Effects of aspirin on risks of vascular events and cancer according to bodyweight and dose: analysis of individual patient data from randomised trials」(PMID: 30017552)、ざっくり翻訳すると「アスピリンの欠陥イベントとがん予防に関する効果」ってところでしょうか、そしてこの研究のポイントは服用するアスピリンの容量が万人に共通であることに対して素朴な疑問とその結論を導いています。
この論文は
体重が70kgを超えると、低用量アスピリンの脳梗塞や心筋梗塞の再発予防、そして大腸がん発症を抑える効果は無い!!
との衝撃的な結論になっています。
まあ、体重に関しては70kgオーバーを数年前に経験して以来毎日毎日体重計にのっかって厳重なる管理の元でおやつを食べまくっている私としては、自己流健康管理は間違いではなかったと自己満足していたのですが・・・アスピリンの落とし穴にどっぷりハマってしまったのです。
毎日のようにこんな感じのゴージャス&高カロリーおやつを食べていても体重は67kg近辺を維持している自分を褒めてあげたいかも(笑)。
アスピリンの副作用で心停止と痛風リスクが上昇!!??
先日、特に体調が悪いわけじゃ無いけど、めちゃくちゃ高カロリーなお昼ご飯を摂ったので、衝動的に血液検査をしたところ、尿酸値が異常値になってしまいました。
こんな高カロリーなものを食していたら、中性脂肪や血糖値、そしてコレステロールが異常値を示すリスクを予想していたのに、検査結果は尿酸が8.1mg/dL、カリウム(K)6.1mEq/Lmと下手すりゃ心停止になっちゃう検査結果、心臓が止まるほど驚きましたぜ。
高尿酸血症及び高カリウム血症になった原因はどう見てもゴージャスなおやつや超高カロリーお昼ご飯(バターはあのエシレだぜ)が原因だとは思えません、なぜこのような検査結果になってしまったのかを、家にある内科や生理学の教科を抱えて自分の医学知識をフル稼働させて原因探究の旅に出ました。
長年親しまれてきて、副作用に関する情報は出切っているため未知の副作用なんてあるわけないじゃんと安心して服用できると考えていたアスピリンなのですが・・・落とし穴がありました。
医薬品インタビューフォームをしっかり読まなかったことを猛省
一般の方は薬を処方されたら、簡単なお薬の説明が書かれた紙を渡されることが多いと思います。お薬手帳に貼るシールとしてこのようなものをクリニックあるいは調剤薬局でもらいますよね。さらに薬のことを調べたい慎重な患者さんはネットなどを駆使して薬の添付文書も調べたりすることができます。しかし、「医薬品インタビューフォーム」まで調べる方は極々少数だと思います。
医薬品インタビューフォームとはそもそもは薬剤師さん向けの医薬品に関する解説書なので、医師であってもあまり目を通さないうっかり屋さんも少なくは無いかもしれません・・・恥ずかしながらバイアスピリンをサプリメントの如く長期間服用していた私も医薬品インタビューフォームは読んでいませんでした。
全78ページに及ぶバイアスピリンに関する医薬品インタビューフォームをじっくり読んだのですが、高カリウム血症及び高尿酸血症に関する記述を見つけることができません。
非ステロイド性鎮痛消炎剤が高カリウム血症の原因になっちゃう可能性
アスピリンは鎮痛剤として有名であり、非ステロイド性鎮痛消炎剤(NSAIDs)に分類される世界中で気軽に処方されている薬です。処方時に副作用として注意するのはアスピリン喘息や消化管の潰瘍であり高カリウム血症や高尿酸血症に触れることはまず無いと思います(だって私は今までそんな副作用は言われたこと無いもん)。
内科学及び生理学、そして本棚に溢れかえっている泌尿器科学の教科書を読み込んでみると、アスピリンを服用することによってカリウムが上昇するメカニズムがわかりました。
腎機能から高カリウム血症が起こり得る機序はこれかな?
アスピリンなどのNSAIDsはプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼを阻害することによってプロスタグランジンの合成を抑え込むことによって痛み止め効果を発揮します。プロスタグランジン合成が抑制されると腎血流量が減少してナトリウムを溜め込む状態になってからだの中に水分を溜め込むことになることは泌尿器科を専門しているので知識として持ち合わせていました。ナトリウムはカリウムと密接な関係があり「ナトリウム・カリウムポンプ」という仕組みによって、バランスがとられていますので、血中のカリウムに対して、風が吹けばおけやが儲かる的になんらかの影響がある可能性が考えられます。
さらに泌尿器科の守備範囲(内分泌を専門としている先生の方が詳しいけどね)として、副腎から分泌されるレニン・アルドステロンというホルモンもカリウムの値に影響を及ぼしていることは医学的常識かつ医学生でも知っているよレベルの知識です。
アスピリンなどのNSAIDsによってレニンやアルドステロンの分泌も抑制されちゃうので、理論上は高カリウム血症を起こし得るはずです。
高カリウム血症と血液検査で判定された私ですが、高カリウム血症の症状としての嘔吐・痺れ・不整脈・筋力低下は起きていませんし、もちろん心停止にも何故かなっていないんだよなあ・・・。
痛風の痛み止めとしてアスピリンを飲んだらどうなる?
痛風発作になっても不思議がないレベルの高尿酸血症との結果になってしまった私ですが、高尿酸血症もアスピリンの副作用の一つである可能性を模索してみました。ところでもしもアスピリンの副作用として高尿酸血症があったとしたら、痛風発作の痛み止めとして処方したら患者さんは激おこになるんじゃないかなあ。
高尿酸血症に関してこのような論文を見つけました。
「ガイドラインに基づく高尿酸血症・痛風の治療」によれば、
アスピリンは少量投与で血清尿酸値を軽度上昇させ,大量投与で低下させる.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/136/6/136_6_330/_pdf
このように記載されています。脳梗塞・心筋梗塞そして大腸がん予防に処方されるアスピリンは低用量アスピリンですから、私の尿酸値上昇もバイアスピリンが容疑者として浮かび上がってきました
私の高カリウム血症・高尿酸血症の犯人はアスピリンが原因である、が確定診断です。
対処方法というか治療方法は簡単、バイアスピリンの服用を止めれば良いだけ。と考えたのですが・・・検査報告書に不穏な文字が書かれていました。
一回の検査結果で一喜一憂はしない方がいいんじゃないの
高尿酸血症及び高カリウム血症と診断されたけど、今までそのような指摘をされた記憶はナッシング。そんな場合は再検査をすることが一番です。
再検査の結果の報告書に「弱溶血」とひっそり書かれています。
溶血した場合、カリウムが上昇するのは有名な話ですし、赤血球中のヘモグロビンの影響によって尿酸値も高値を示す機序を説明することができます。
私の高カリウムと高尿酸の原因は溶血の可能性もかなり疑われます。検査結果に一喜一憂すること無く、検査で異常値が出た場合は再検査するのが一番なんじゃないかなあ。まあ、必要の無い検査はしない方が良いとの考え方もあるにはあるんだけど、さらに再検査をしてしまう自分がここにいます(苦笑)。