睡眠によって影響されるホルモンについて調べていたら、このようなグラフを掲載した論文にぶち当たりました。
睡眠時間によって分泌量が左右される「レプチン」と「グレリン」と呼ばれるホルモンが肥満と大きく関わっているのです。
本記事の内容
睡眠と食欲の関係を解くカギはホルモン!!
睡眠不足だと朝食を食べる気も起こらないことが多いと思うんだけど、徹夜明けだと猛烈に食欲が出ちゃう人もいるようです。生活が乱れやすい年末年始、お正月太りなんて言葉さえあります。
私個人の話とすれば、間違いなく休みが続くと太ります。その原因として仕事のある日は昼食を摂ることがほとんど無いけど、休日だとゆっくり朝・昼・夜+おやつ、と充実の食生活を送る為と考えています。
先日からコリに凝っているホルモンを中心に考えた場合、
間違いなく寝不足はデブの原因の一つである!!
と言い切れるのです。睡眠と食欲、そして体重の増減の関係をホルモン中心に検証してみますね。
食欲を抑えるホルモン「レプチン」と睡眠の関係
レプチン(Leptin)と呼ばれる脂肪細胞から分泌されるホルモンがあります。通常ホルモンは特定の臓器の分泌腺で産生されるのに、レプチンは全身に分布している脂肪細胞から分泌され別名「抗肥満ホルモン」とか「痩せホルモン」とかの名称でネット上では散見されます。
「Leptin levels are dependent on sleep duration: relationships with sympathovagal balance, carbohydrate regulation, cortisol, and thyrotropi」(PMID: 15531540)などによっても、レプチンが睡眠と強い関係があることは医学的な常識と判断して間違いありません。
レプチンが脂肪細胞から分泌されると、視床下部を刺激して満腹感を与えることによって人体の消費エネルギーを調節します。この仕組みを利用して逆に体重減少、つまりダイエットをしようとの健康関連記事が多数出回っているけど真っ当な医学論文でその効果を証明したものは、私が探した限りでは無いよ。
そもそも脂肪が減少して体重も減少したとしても、その場合はレプチン自体の分泌も減っちゃうもんね。
しっかり睡眠を取らないとレプチンの分泌が悪くなり、肥満の原因になることは確実だとしても、痩せホルモン「レプチン」の逆の働きをする「グレリン」と呼ばれるホルモンの働きも睡眠と強い関連があります。
食欲を増進するホルモン「グレリン」は睡眠時間が短いと大量に分泌される!!
肥満ホルモンと呼ばれることもある「グレリン(Ghrelin)」は主に胃で分泌されます。このグレリンと睡眠の関係については「A single night of sleep deprivation increases ghrelin levels and feelings of hunger in normal-weight healthy men」(PMID: 18564298)や「The effects of ghrelin on sleep, appetite, and memory, and its possible role in depression: A review of the literature」(PMID: 29395244)や「Elevated ghrelin predicts food intake during experimental sleep restriction」(PMID: 26467988)によって報告されているように、
睡眠不足だと肥満ホルモンのグレリンが必要以上に分泌されデブになる!
のは確実です。
寝不足だと痩せホルモン「レプチン」が減少し、肥満ホルモン「グレリン」が増えるために太ってしまうのはメカニズム上は間違いのない事実を認めざるをえない状況なんです。
寝不足だと太るのは確実、でもこんな考え方もできるんじゃないの?
ホルモンの働きによって寝不足だとデブになることは確実だとしても、逆に考えると寝不足ということは起きている時間が長いことになるよね。
起きている時間が長けりゃ、それだけ食べちゃう機会も増えるんじゃないの?
ということも考えられます。
睡眠不足で太るのは脳のメカニズムに因りますが、夜更かしが肥満の原因というわけではない
なんてブログ記事を2013年に書いたんだけど、睡眠不足ということは夜更かしをして長時間起きているんだから、当然おやつを食べちゃうじゃん!との考え方もできますよね。
私の考察を支持する医学論文はその後多数発表されています。例えば、2020年にFood Science Nutritionに掲載された、「Association of sleep duration and snack consumption in children and adolescents: The CASPIAN‐V study」(PMID: 32328254)や2018年にJournal of Sleep Researchに掲載された、「Associations between self-reported sleep measures and dietary behaviours in a large sample of Australian school students (n = 28,010)」(PMID: 29527744)などは睡眠不足、つまり夜更かしすることとジャンクフードを食べちゃう関係について言及していますもんね。
レプチンとグレリンの二つのホルモンは間違いなく食欲増進・抑制をコントロールして体重増減と強い因果関係があるとしても、成長ホルモンや女性ホルモン・男性ホルモンも体重の増減に関係があることを示す研究結果が存在します。最近ホルモン関連のことを学び直すと、あらためて確認できる人体の不思議と共に現代医学はまだまだ宿題を多数残していることを実感しています。
深みにハマって苦しむのも、筋道が立てられそうになって楽しいのも医学。医師という職に就いたことも間違いではなかったし、開業医を長年続けることによって患者さんへ近い距離で健康関連情報を伝えることをリアルでもネットでも続けてきたことは自分なりに正しい選択だったと感慨に耽る2021年の年末です。