だいぶヤバそうな中国の新型鳥インフルエンザH7N9型、人から人に感染⁉

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今シーズンはノロに始まりインフルエンザも久々に大流行しましたが、現時点では感染の広がりやや沈静化してきたところに、中国で発生した新型鳥インフルエンザH7N9の様子が怪しげになってきています。

昨年末にH10N8亜型による感染・死亡が報道されていますが、2014年1月25日に二人目の死亡者が出ていますが、分析に耐えるだけの情報がありませんので今回はH7N9に絞って考えていきます。

新型の鳥インフルエンザ情報

マスメディアの情報って医療関係者が視ると「?」なことが多いので無用なパニックを起こさないために、私が得られた情報に基づきできるだけ解り易く新型鳥インフルエンザについて説明と予防をお伝えします。ちなみに今期もインフルエンザは大流行でしたが、当クリニックで予防接種を受けたのに肺炎になったなんて方が幸いにもいなかったことを報告しておきます。

メディアによると今にも新型鳥インフルエンザが大流行しそうだけど

報道によると今年に入ってから新型鳥インフルエンザに感染して死亡した人は34人に上るとされています(一部の中国ウォチャーによると35人以上死亡者がでると責任者が処分されるために、上限は当初34人と発表するとの意見あり)。

H7N9鳥インフルエンザ感染者数

            

Yahoo!ニュースより

さらに一部のオッサン向け週刊誌では『即死、新型「鳥インフルエンザ」で中国で死者100名以上』なんて感じの取り上げ方もしています。「日本上陸 新型鳥インフルエンザ」なんて言葉も使用されています。

ここは少し冷静になってこの新型鳥インフルエンザH7N9についての報告を検討してみましょう。感染症の専門家ではない私の意見では信憑性がありませんので、ここは虎の威を借る狐に徹してあの格調高き「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(The New England Journal of Medicine略してNEJM)に論文として掲載されていたものを基本情報とします。

結論 新型鳥インフルエンザは人から人へ感染の可能性あり

この論文は中国の人が書いていますので、万が一政府の干渉が入ったとしたら悪い結果は抑圧される可能性を心配する人もいるでしょうが、結論として「人から人への感染の可能性」を示唆しています。ですからかなり信頼度が高い情報に基づいた結果と考えてください。「Epidemiology of human infections with avian influenza A (H7N9) virus in China.」(The New England journal of medicine. 2014 Feb 6;370 (6) ;520-32.)という題名で昨年2013年2月から3月に中国東部で流行した新型鳥インフルエンザを切っ掛けに2013年12月1日までに確認された感染者の動向を分析したものです。

新型鳥インフルエンザ感染者の動向

この研究グループは公衆衛生救急センターとよばれる人たちを中心に構成されていますので、明らかに政治的な圧力を受け易い立場にあります。だからこそアメリカの公正な判断を受けられるNEJMに発表した可能性が高いです(勇気ある行動に拍手をそして医学情報の自由さに感謝)。

H7N9型のインフルエンザウイルスであることはPCR法によって確定しています。万が一家族で新型鳥インフルエンザに感染した人がいる場合は濃厚接触者を追跡して7日間様子を観察して、なにか症状がでた場合はPCR法を用いてH7N9型のウイルスが検出しないか検査を行ないました。

死亡率33.8%以上の新型鳥インフルエンザの恐怖

今回の調査の結果は新型鳥インフルエンザに感染した139人を対象としました。

  • 感染者の82%は動物と接触していた
  • 接触した動物はニワトリが82%、アヒルが22%、ハトが12%、野鳥が7%
  • 73%は都会に在住
  • 65歳以上は42%、5歳未満が3%
  • 6%は鳥を扱う業者だった(だから鳥の合計が100%を越えるのです)

ここまでの調査結果は特に異常な特徴は見られません。単に鳥が原因となって新型鳥インフルエンザに感染したんだね、という解釈になります。

死亡率33.8%以上の新型鳥インフルエンザ

さらに感染した人は

  • 137人が入院
  • 65人がICUに収容された
  • 47人が死亡

つまり新型鳥インフルエンザ感染者の死亡率は33.8%❗

人から人への感染が否定できない結果が出てしまった

濃厚接触者は2675人いましたが7日の追跡調査の間に風邪の様な症状が出た人が28人いましたが、全例でH7N9インフルエンザウイルスは検出しませんでした。ということは濃厚に接触しても感染しないということでしょうか?

実は家族で鳥インフルエンザに感染した人々もいましたが、職業が鳥を扱っていて一緒に仕事をしていれば複数人が感染して当然ですが、4家族グループのなかでは明らかにH7N9型のインフルエンザウイルスが人から人へ感染したことが否定できない例が存在していました。詳しい状況は記載がありませんでしたが例えばお父さんは鳥屋さんで仕事をしてインフルエンザに感染したが、うつった奥さんは全く鳥と接触する可能性が無いというような状況です。

さらに良く読み込んでみるとわかるのですが、新型鳥インフルエンザが人から人へ感染しないと仮定すると一番最初の鳥を中心とした動物と接触してウイルスが侵入したと考えられるのは88%であって、残りの12%は鳥とは無縁の生活を送っていたのです。 家族間での感染でも人から人が否定しきれないですし、マクロ的に解釈しても人から人への感染以外での説明がしにくい状況であることを今回の論文は伝えてくれています。

人から人への感染が確認された場合はパンデミックは避けられない

厚生労働省は公表しています。感染を拡大させない為には海外から日本への流入を防ぐ、流行の兆しがあらわれたら不用意な外出は避ける、ワクチンの開発と接種が必要となります。現時点でワクチンはまだ製造準備段階と『鳥インフルエンザA(H7N9)に関するQ&A』で厚生労働省は答えています。今からでも生活で簡単に気をつけることが出来るのは何と言っても、手洗いです。

正しく手洗いをする為には少なくとも石鹸を使用して20秒以上擦る必要があります。特にオッサンの手抜きが目立ちますので、こんなページを是非ご覧ください!「手洗い白書 – 世界手洗いの日」子供向けに書かれていますから、忙しいオッサンでも簡単に理解できる内容になっていますよ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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