オンライン診療(遠隔診療)は患者さんだけでなく医師にも不便な点があります。

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オンライン診療、遠隔診療とも呼ばれる、実際に患者さんと医師が顔を突き合わせない診療スタイルがあります。

もともとは医療過疎地等での使用が想定されていたものですが、新型コロナの感染拡大に伴い、医療機関をわざわざ訪れないでも薬の処方を受けることが可能な新しい診療形態として注目されています。

しかし、オンライン診療は対面診療と比較して、患者さんにとっても医師にとっても不便な点があります。オンライン診療が普及することによって、現時点で不便であり不利だと思われている点も将来的には改善されることが大いに期待できます。

便利なオンライン診療にもデメリットはあります。

ネットを利用して、実際に医療機関を訪れないで診察を受けるオンライン診療 (厚生労働省は以前は遠隔診療と呼んでいた)は、そもそもは医療機関に行って実際に医師の診察を受ける(これを「対面診療」と呼ぶ)が困難な地域に住む人などが、診療機会を逸失しないために設けられた制度だと考えていました。

今回の新型コロナの蔓延により「不要不急の外出自粛要請」の対象として医療機関は外れてはいます。しかし、万が一へんてこな感染症感染者であっても自覚症状が無い方と待合室で密な状態となって感染してしまうリスクを避けるために、当院は急遽オンライン診療(遠隔診療)を開始しました。

オンライン診療はじめました⋯まずは既存の患者さん限定で開始させていただきます。

オンライン診療はじめました⋯まずは既存の患者さん限定で開始させていただきます。

不慣れな診療形態であるため、まずは当院の既存の患者さん限定で開始させていただいています。

このオンライン診療、実際に行ってみると何点か患者さんにとって不利益な面があります。また、医師側としても不利益な面があります。

今回のような特別な事態によってオンライン診療が普及するによって様々な問題が発生するのは当然ではあると考えます。

問題があるからオンライン診療普及は無理とは一切考えておらず、このオンライン診療を今後どのように発展させていけば良いのか、オンライン診療初心者の一町医者の経験と考えをお伝えします。

実際にオンライン診療を行ってみました。

【オンライン診療】こんな方に利用してもらいたい、3つの例。

【オンライン診療】こんな方に利用してもらいたい、3つの例。

このような感触を得ました。

そもそも医師会はオンライン診療に反対だった

オンライン診療は「情報通信機器を用いた診療などのための遠隔医療設備整備事業」として政府が検討をしていました。

さらに「オンライン診療」や「オンライン処方を取り入れる医療機関に対して、補助金もでる予定だったのです。

しかし、医師会は当初はオンライン診療に対して冷ややかな、積極的では無い姿勢をとっていました。

その大きな理由は医療機関の収入源、だったようです。

確かに収入が減ることによって、薬問屋さんからの仕入れさえままならない医療機関もあると聞きます。人件費の占める割合が多くなって倒産した医療機関もあります。

医療機関、特に個人開業医は儲かるとのイメージを強くお持ちの方が多いはずです、実際は経営難で苦しんでいるクリニックが少なくは無いのにです。

儲かる町医者が「収入源につながる」と声高に主張してオンライン診療に反対する図式は国民には、悪代官VS庶民、という使い古された見せ方ですね。

以前は医師会のお硬い頭をお持ちの偉い人々に対して、批判的な意見を積極的に発言していた私であっても、さすがに「収入が減るからはんたーい!」と医師会が考えていたわけじゃないと感じていました(なぜかについては別稿でお伝えする予定です)。

新型コロナの世界的な感染拡大という非常事態に対応するために、厚生労働省及び医師会は合意に至り、オンライン診療の普及を積極的に推進することになり、今に至っています。

オンライン診療で患者さんにとって不便な点とは?

当院が導入したオンライン診療システムはまずは患者さんが専用アプリをスマホあるいはタブレットにインストールする必要があります。

アプリのインストール、若い人ならサクサクできるでしょうけど、オンライン診療を必要としている方の多くは高齢者です。

高齢者であってもスマホを持つ時代になったとしても、アプリのインストールに関してはサクサクと出来る方は、少なくとも私の患者さんの中ではまれです。

アプリのインストール、QRコードを使えば楽に出来るのですが、「じゃあ、スマホしかもっていない人はどうやってQRコードをカメラで取り込むか」問題が発生します。

例えば当院のウェブサイトにオンライン診療アプリがインストールできるQRコードを表示していたとします。でも、ウェブサイトをスマホで見ているは、どうやってQRコードを読み取るんだあ???

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これ当院が採用したオンライン診療専用アプリをダウンロードするQRコード。PCで見ている人はスマホで読み取れるけど、スマホオンリーの人が読み込むことは無理じゃん。

QRコードを長押しすればアプリのインストール画面にアクセスできるけどね、たぶん多くのお年寄りはしらないと思います(笑)。

さらにダウンロードしても患者さんにはかなり不便。入力する文字が小さすぎて、老眼の方にとってはかなりの難作業になります。

さらに、さらにアプリにご自分の情報を入力するためには、一度メールに添付されたURLから入り直す必要があります。

未だにキャリアメールをお使いの方やメーラーをお使いの方の場合、PCから発信されたメールを自動的にゴミ箱行き設定にされている方もいます。

この機会にGmailでもいいですし、Yahooメールでも良いですから、アカウントを作ることをオススメします。

オンライン診療を導入した医師側にも不便な点がある

私が使っているオンライン診療システムは事前に患者さんがアプリ上で診察日と診療時間を事前に予約していただくものです。

当院の一般診療部門(保険診療部門)は予約制ではないので(なぜ予約制にしないのか、いっぱい理由がありますが、これも別稿かなw)、オンライン診療に対応できる時間は昼休み中、あるいは診療前、あるいは診療後と自ずとなってしまいます。

まあ、私が休み無しで働き続けるのは自分が我慢をすれば良いだけですが、オンライン診療の受付作業、電子カルテの立ち上げ作業はスタッフ任せです。

となると、スタッフが休憩を取る時間が無くなってしまいます。この時節柄、休み時間を削ってもスタッフはオンライン診療の受付作業を文句なく(陰では多分私の悪口を言っている)、献身的にすすめてくれています。

しかし、残業時間ゼロを目指して、ほとんどその目標をクリアしている当院としては時間外にスタッフに働くことを強制することはありえません。

そうなる、スタッフ増員して休み時間をズラせばいいじゃん的なアイディアも採用するべきでしょう。でもねえ、人を一度雇用すると仕事が少なくなったからといって解雇することなんてできないよ。法的に可能であっても私のポリシーとして絶対ムリです。

となると、従業員ではに雇い主である私が休み無く受付作業から診療までこなせば良い、と判断するしかありません。

さらに診療報酬を頂く点でも問題が発生します。

当初、オンライン診療でオンライン処方をした場合、処方箋を送付する時にPayPayのQRコードを同封すれば良いと考えていました(当院は保険診療であってもほとんどの電子決済サービスが使用可能です)。

ところがどっこい、PayPayの利用にあたって細かい規約を読んでみると、対面じゃないのにPayPayで決済するのはルール違反であるとの文言を見つけてしまったのです。

となると支払いはオンライン診療アプリの搭載されているクレジットカード決済、あるいは銀行への振り込みとなります。

お年寄りの場合、ネットバンキングユーザー率が低く、そうなると密になる可能性の高い銀行に出向く必要がでてしまいます。

私はいままで手持ちのお金が足りない患者さんには「ツケでいいよ。次回来院時に払ってくれれば」と受付スタッフに指示していました。しかし、先行きがどうなるかだーれも今の時点では判断できない外出自粛要請、そうなる診察料の自己負担分の回収がいつになるのか不明ということになります。

当院としては自己負担分が頂けないことによって、経営難に陥る可能性はかなり低い恵まれた経営状況であっても、塵も積もれば山となる、とのことわざもありますので、そのあたりをどうすれば良いのか、判断しきれていない状況です。

診療報酬等に関しても、複雑な仕組みがあるようですが、それに関しては事務スタッフに任せておりますので、私がコメントを述べるのは今の段階では控えます。

オンライン診療を推進する厚生労働省にお願いがあります

厚生労働省にお願いがあります。

厚生労働省のサイトにオンライン診療を行っている医療機関のリストが公開されています(https://www.mhlw.go.jp/content/000625103.pdf)。

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ここに当院も掲載してもらえるのはいつになるのでしょうか⋯。オンライン診療を開始するにあたって事前に届け出る仕組みの名残だとは思いますが、お忙しい中、大変も申し訳ないのですが、早めに登録をさせていただければ、初診の対応も当院として可能になるかと思います。

ぜひご検討くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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