日本のお医者さんにしか見えない、世界的には認められていない謎のホルモン「パロチン」を検証‼

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唾液腺ホルモン製剤でパロチン(Parotin)という処方薬があります。

唾液腺からホルモンが出ていたっけ?と疑問に思ったので、調べてみました。

医師諸君、パロチンというホルモンを知っているかい?

手元にある生化学・生理学などの医学系教科書で調べたけど、パロチンというホルモンの記載は無いんだよなあ。

実はこのパロチンは日本だけで使われ、日本のお医者さんだけが知っている謎のホルモンなんです。

pubmedという医学系論文のデータベースで「parotin」を調べてみると日本の医学系研究者の論文がほとんどであり、

パロチンで検索すると・・・

パロチン関連の英文論文はほとんどが日本人の手によるもので21世紀になってからの新しい論文は見つからないのに、なぜか「若返りホルモン」なんて呼び方で健康雑誌では取り上げられているんです。

日本人のお医者さんだけが知っている唾液腺ホルモン「パロチン」がいま代替医療方面で大注目されている様子に強い違和感を抱いています。

パロチンは原料は牛の耳下腺で1990年代に効果は否定されている

唾液腺ホルモン製剤パロチンは注射薬と錠剤が以前は処方薬として認められていました。原料は牛の耳下腺から採取していたようです。ところが注射薬としてのパロチンは1990年に厚生省の中央薬事審議会常任部会で有用性が否定されてしまいました。

パロチンの有用性は否定されている

厚生省薬務局長 医薬品再評価結果平成元年度(その3)について(通知)

パロチン錠は幸いに有用性が否定はされなかったようで、パロチン錠はしぶとく2014年まで処方薬として生き残っていました。

唾液腺ホルモン製剤「パロチン錠」販売中止のお知らせ

https://hugepdf.com/download/5ae5dcc205d3e_pdf

BSEが販売中止の理由のひとつのようにも感じられるお知らせですが、効果がない、つまり有用性が認められないから販売中止にしたんじゃないの疑惑がわき出てきちゃいます。

しつこいけど繰り返します。

唾液腺ホルモンであるパロチンは日本以外ではその存在自体がみとめられていないのです❗

謎に包まれたパロチンについてもう少々お伝えします。

日本人大物医学者に発見されたパロチン

幕末の蘭学者で医師の緒方洪庵という名前を聞いたことがあると思います。この洪庵さんのお孫さんで緒方知三郎(1883年ー1973年)というお医者さんが東京大学にいました。この緒方先生は文化勲章も受賞している医学界のビッグショットです。パロチンはこの緒方先生が1944年にホルモン物質として発見抽出しました。

その後、パロチンは帝国臓器という製薬会社から製品化されて「老人病」(なんじゃ?老人病ってw)や「胃下垂症」(よく昔の人が胃下垂ってつかっていたっけなあ〜)に効果があると医学専門誌に掲載されていたのじゃ。

パロチンの広告

https://www.daekisen.org/pdf/history.pdf

しかし、昭和という時代、それも1960年代の医学界はいまから考えると豪快かつとんでもない時代ですね。

筋無力症にパロチンが著効を奏するならいまでもしっかりパロチンは処方されているでしょうし、高齢者が当時は予想もしないくらい増加している21世紀において間葉異栄養(なんじゃ???)が原因となる高血圧・動脈硬化・脳出血・剥離性動脈瘤・変形性関節炎・変形性脊髄炎に素晴らしい効果をあげるんであればめちゃくしゃ有用な薬としてバンバン処方されているはずなのに、残念ながらパロチンは現時点で販売中止ですからね。

そもそも存在さえ疑わしい唾液腺ホルモン「パロチン」

緒方先生が抽出して発見したパロチン(逆かな、発見して抽出かも)なんですが、そもそもその存在さえ疑わしいのです。

なぜならパロチンの化学式や分子量をかなりの時間をかけて調べても、化学式は空欄、分子量にいたっては0となっているのです。

What is Parotin? パロチンって何?

との結論に至ってしまうのです。存在さえ確認できないパロチンという唾液腺ホルモンなんですから、そりゃ教科書に掲載されるワケないですね。

シオノギは大丈夫か、こんな情報をながして

ゾフルーザ以降、ワクチン開発に関しても延び延びになって、医師の間で評判が右肩下がりのシオノギという製薬会社があります。

このシオノギが一般の方向けに健康医学情報を伝えているウェブサイトでパロチンを取り上げています

唾液といっしょに防御機能を高めるとも言われているパロチンというホルモンが分泌されます。このように、しっかり噛んで唾液を出すことは、防御機能アップにとても効果的なのです。

https://www.shionogi-hc.co.jp/special/0602.html

あのさあ〜、シオノギといえば市販薬も販売している製薬会社だよね、一般人向けの情報でその存在も疑問視されて、現在では有用性さえ否定されているパロチンをカラダの防衛機能をたかめるホルモンとして紹介してしまっていいものなんでしょうか?

パロチンがでてきたらその健康医学情報の信頼性は低くなってしまうことを知らないのかな・・・。

なんでパロチンで若返るんだ?

例えばこんな記事があります。

手軽な方法で増やせる!若返りのホルモン「パロチン」とはhttps://news.biglobe.ne.jp/trend/0119/ckn_200119_3721108799.html

さらにこんな記事も。

若返りホルモン!パロチンを分泌させるには!https://beauty.hotpepper.jp/kr/slnH000038080/blog/bidA018980851.html

医学のいの字も知らない素人ライターがどっかから拾い集めた情報によって拡散される「存在さえ確認されていない唾液腺ホルモン、パロチン」、これからも根拠のない話がかくさんすることを私は懸念しています。

このパロチン問題、私が白い巨塔的な医学界(そんなもん無いよ〜)から圧力を掛けられない場合のみ続編を書いちゃおっかな。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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