私は西洋医学ガチガチであるように見えて、実は「おばあちゃんの知恵」的民間療法のファンなんです。
おばあちゃんの知恵って身近にあるものを使用して、問題を解決するのですから米国海軍ネイビーシールズや特殊空挺部隊SASのサバイバルっぽくて好きなんです。精密な医療機器や看護師・検査技師などに囲まれた状態で大学病院で過ごした若い医師を当院で働いてもらうときに「聴診器がなくても血圧を計る事ができますか?」「指輪がハマりこんで取れなくなった場合、指輪を切らないで外せますか?」「気管切開をする医療機器が無い場合、どうやって直接気管に空気を送り込めますか?」なんてことを尋ねて驚かれることもあります。このような原始的ですが、身の回りにあるものを使用してある程度サバイバルができるのです。
少し話が外れましたが、私が愛して止まない「おばあちゃんの知恵」的民間療法なんですが、どうしても許せない用語が「デトックス」です。
民間療法用語であるデトックスの問題点
多分デトックスって解毒を意味するdetoxificationから派生した言葉だと予想されます、英語だとdetoxですので。確かに医学では解毒という治療法が存在します。例えばジメルカプロールという薬物は重金属の中毒の解毒に使用しますし、プラリドキシムヨウ化メチルはパム(PAM)と呼ばれ農薬で自殺を計った場合に使用されます(特殊部隊的使用としてはで、あのサリンなどの神経毒にも効果があり)。しかし、現在一般的に使用される「デトックス」は存在するのかしないのか明確ではない、なにがしらの「毒素」を食べ物、サプリ、特殊な薬物を使用する事によって体外に排出するという意味で使われています。特に水銀に代表される重金属を排泄される効果があるとされるサプリメントなどは海外でももてはやされている状況です。
重金属を対象としてデトックス効果を謳った場合、使用・服用した後に血液中の重金属が減っている事が明らかになれば効果があったと証明できるのですが、残念ながら医学的検証に裏付けられた確かなデータは存在しないのです。
海外でもデトックスは問題とされている
英国の国民の健康をサポートしているNational Health Service(NHS)は「デトックスと呼ばれる言葉自体が怪しいものであり、それを改善すると称している方法は全く無意味」と国民に警告しています。
http://www.nhs.uk/news/2009/03March/Pages/DetoxtinctureQA.aspxより
実際上問題とされる重金属って普通の生活をしている場合、健康に被害を及ぼすレベルの摂取をすることは考えられませんし(企業等によって垂れ流された廃棄物による悲惨な事件は除外します)、なかには皆さんが有り難がって飲んでいるオシャレなミネラルウォーターに含まれているミネラルを構成する栄養素でもあります。
一番笑った「足裏デトックス」のインチキな仕組み
さすがに最近はあまり見かけなくなりましたが、以前どんなドラッグストアでも置いていて通販でも盛り上がって販売されていた足の裏に貼付けると、翌日貼付したシートが真っ黒になるという「フットバスデトックス」とか「足裏樹液シート」と呼ばれたグッズです。
寝ている間に体から毒素が排出されて、足の裏に貼ったシートが黒く汚れるという方法もありますし、足を桶につけていると浸していた水が真っ黒になって「ほら、あなたの体内に溜まっていた毒素がこうやってデトックスされるんですよ」なんて経験をした方も結構いるんじゃないでしょうか?このメカニズムは単純で汗に混じり込んでいる塩分や桶の中の水に溶かし込んでいる塩や不純物である鉄分が単に化学反応を起こしているだけなんです。笑ったちゃう実験がありまして、フットバスに足を突っ込まなくて単に軽い電流を流しますと、なんと桶の水は真っ黒になりましたとさ。完璧にインチキです。
おばあちゃんの知恵を侮辱する現代の疑似科学的医療
しゃっくりの特効薬として「柿のへた」を利用する方法があります。これは『「しゃっくりを止める方法」医学的治療VS民間療法、一発で治すことができるのは?』と題して以前ブログに書きました。現在では身近に柿の木なんて植わっていませんので、いつも「柿のへた」が手に入る訳ではありません。ここで豆知識⋯昔、武士の家では必ず柿の木を庭に植えていたました。万が一戦争になった場合、家に籠って戦う場合の非常食として武士の心得とされていたそうです。対戦争非常事態向けではなく、庭に柿の木があるかたは是非、しゃっくりが出て止まらない時はお試しください。
2019年12月24日これも書きました。
下手すりゃ血液クレンジング騒動の二の舞。